裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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暴行・傷害

罪を憎んで、人を憎まず!? ~いざ判決の時「傷害」~

前回のスキンヘッドと入れ替わるようにして、入廷したきたのが、
若いのか若くないのかよく分からないといった鳥の巣のような頭のした被告であった。
罪名は「傷害」。
鳥の巣でも襲ったのだろうか?
主文 被告人を懲役1年2月と処する

判決理由
いつからか知人に対してある猜疑心を持つようになった被告。
そんな猜疑心に苛まれた続けた被告は、やがてその猜疑心を苛立ち、そして怒りへと発展させることとなる。
その怒りの炎は、知人への暴力行為となった。
いきなり知人に対して、火のついたタバコを被害者の顔に投げつけ、その後左手及び臀部を数か所を殴打。
被害者は、加療2か月の軽傷を負うこととなったのだ。
被告は過去にも同じような理由から暴力沙汰を計5回起こしている。
他にも、怒りだしたら店舗の物品を破壊するなどもあったようだ。

裁判官が一番危惧していたのは、今回を含めて、これまでにも度々問題となっている粗暴性である。
また被告が、シンナーを常用しているもマイナスの判断となったようだ。
それに加えて、被害者への弁済もなく、自分の犯した罪に対する悔悟の念が感じられないこともマイナスとなった。
ただそんなシンナー漬けの被告に対して、
未だ母が見捨てていないことが唯一の減刑材料として認められ、件の量刑となったようである。

そして、恒例の裁判官からのお言葉。
「こうした悪循環は断ち切らなければ再犯となってしまう可能性が高いので、この悪循環を断ち切るために、
今度こそ心を入れ替えて、社会復帰後には人との付き合い方を勉強して、
決して繰り返さないようにしてください」
・・・確かに。

それにしても薬物がらみの事件が目立つなぁ、といった印象である。

 

(了)

人を殴っても罪に問われない!?

前回被告の責任能力について、ダラダラと記述したが、
これから登場するもっさりとした被告(46歳)の争点が、まさにこの責任能力を問う公判であった。

被告と同じマンションの上階に住む被害者(43歳)とは、同じマンションの住人であるといったこと以外は、
特に深い付き合いがあったとの報告はない。
しかし、ある日被告はある決意を胸に秘めて被害者宅をいきなり訪問する。
被害者は呼び鈴が鳴ったので、いつものように玄関のドアを開ける。
すると、いきなり圧力鍋648gで殴りつけられる。
その後顔は見たことある程度の被告に、何度もゲンコツで顔面を殴られ、
結果左全顎挫傷、左眼球挫傷など全治2週間程度のけがを負わされた。
もちろん直ぐに被告は逮捕されることとなったが。

被害者にとって、これは恐怖体験以外のなにものでもなかろう。
言い換えればホラーである。

その後の冒頭陳述で、被告の素性が明らかになる。
被告は東京都で出生し、高校卒業後はパチンコ店、新聞販売員と勤務していたが、現在は無職となっていた。
過去に1度中国人との婚姻歴もあるが、不法滞在だったのだろうか、強制送還されることとなった。
H12年頃より生活保護を受給。その後も細々と情報誌を路上で販売するなどして生計を助けていたが、
最近になって、路上販売を休みがちとなったころより、
「音が気になり」はじめ、「この音が睡眠を害する」「この音のする元を殴りたい」
「殴って静かにしたい」と考えるようになり、その音源が被害者宅であることを特定し、
殴るならば片手で持ちやすい鍋であれば殴りやすいだろうなどと考えて、鍋を持って被害者宅を訪問し、
ドアを開けるなり被害者を鍋で殴りつけるといった起訴状にある犯行に及んだとのことだ。

ここまでの話を聞いて、音の実態について法廷で言及されなかったが、
どうやらそうした事実はなかったようだ。
こうなれば、単純に傷害罪となるはずなのだが、ここから公判は迷走をはじめる。
弁護人が、起訴内容は同意するが「責任能力で異議あり」と主張。
これから主治医に被告の責任能力の有無を診断してもらうとのことだ。
また今後の審議もこの責任能力の有無で争うか、
それとも情状酌量を訴えるかのどちらの方針で進めていくかについて被告人と相談して決めるとのことだった。

う~ん、何だろう、釈然としない。
弁護側は、被告が犯行時に殴打した対象が、
「ヒト」であるか「モノ」であるかの判別がつかなかったと言いたいのだろうか?
それに、もしその判別がつかない程度に被告の症状が重いと、
今後被告は、おそらく医療的措置となる可能性が高まり、生活を制限されることとなるため、
相談するという話なのであろうが・・・。

ただ殴打した対象の弁別がつかないほど症状が悪化しているのであれば、
選択の余地はないとUNICOは考える。そうしないと被害者が堪らないはずだ。
そもそもそれほどまで症状が悪化している可能性がある者と、
今後のことを相談すること自体、あまり意味がないことのように思われるのだが・・・。

アルコールという魔物にはご用心!? -傷害-③

同居しており、被告にとって実子である下の娘を抑えて、
あえて嫁いで別居している義子の上の娘が証言するからには
国選30年には何か秘策があるに違いない。
そう期待に胸を膨らませ、上の娘の発言を待っていると、
UNICOの予想を覆す言葉が・・・。
「えっと、中村くんは・・・」
まさかの「君づけ」である。

更に上の娘は続ける。
「中村君は、普段からお酒を飲みますが、全然酔って暴れたということもありませんし・・・」
「私が見る限りは、すごく優しくて、穏やかだし・・・」
とおよそ証拠能力と呼べる発言がなく、
娘の口からは、次々と中村君に対する心証と所感が繰り出されるのだった。

それを見かねたラッキョ検事はすかさず
「あなたは、どれ位の頻度で家に行かれますか?」
と当然の質問で彼女を揺さぶる。
「1カ月に1回くらいですかね」
「それでも私が行ったときは、(被害者とも)和気あいあいとしていて、
そんな行動を取るとは到底考えられません」
と飄々と言ってのける彼女の強心臓ぶりにはただただ頭が下がるのみである。

このやりとりで手ごたえを感じたラッキョ検事は短期決着の勝負に出た。
「この事件を起こす前にも、被告は何回か被害者に酒を飲んで暴力を奮っていたことがあるそうですが、
あなたは、それを知っていましたか?」
致命傷である。これでもはやノックアウト。
のはずであるが、それでも「強心臓」の娘は、
「まさか!! 中村君は普段はすごく穏やかですし、これまでも暴力を奮ったことは見たことがないし・・・」
と所感を述べ続ける始末。

勝負ありである。
残念ながら、因縁の「この道30年対決」は、ラッキョ検事に軍配である。
国選一筋30年という看板は、やはりだてではなかったようだ。

ラッキョは次回公判に被害者を証人として喚問していることを告げて閉廷となったのである。

 

アルコールという魔物にはご用心!? -傷害-②

そこそこの緊張感の中で、いよいよ裁判官が入廷した。
顔を見るとこかで見たことがあるような・・・。
よく顔を見てみると、それは「名探偵コナン」である。
裁判官が「コナン」となると、これはいい裁きが期待できるのではないか!?
と勝手に妄想を膨らませるUNICO。

そして開廷。
恒例である宣誓などもスムースに済ませ、
いよいよ検察の起訴状の朗読。
無口そうな職人気質の被告が、一体どんな経緯があって暴挙に出てしまったのか?

起訴状によると、被告は60才男性で、現在は無職。
被告と被害者(被告と同年代の男性)とは近所に住んでおり、以前より「家族ぐるみ」の付き合いをしていた。
いつしか被害者が被告の母親の介護を担うようになっていったとのこと。
そして、普段はおとなしい被告だったが、事件当日は違った。
お酒が入っていたことと被害者から介護について、いろいろと言われたことに、
「カッ」となって殴ってしまい、全治2ヶ月の負傷を負わせたとのことだった。
ここまで聞いて、謎が深まったのはUNICOだけか?

その後の証拠調べで、徐々に複雑な家庭環境が明らかにされていく。
上記の事実に加え、現在家には、被告と寝たきりの被告の母と娘が暮らしている。
そのほかには、上の娘が嫁いでおり、車で1時間圏内のところで暮らしている。
この上の娘と現在同居している下の娘とは異父姉妹。
被告の妻は、恐らく離婚か死別かは不明であるが、現在家には居ない。
下の娘は、未だ学生であり、被告の母の面倒を日常的に見ていたのは、被告であったらしい。
被告の主張も「母の介護は自分がしないといけないので、自分は働きに行けない」とのことだった。
それならば、なぜ被害者が介護をしていたのかといった謎が深まる。

更に証拠調べでは、ラッキョ検事から、被告は以前から酒癖が悪く、被害者が暴行を受けたのは
今回だけではないということをちらつかせてくる。
すかさず国選30年が、「今回は酔ったいきおいで」などと弁明をしているが、
ここまでは明らかにラッキョ検事が優勢。
おいおい国選30年、大丈夫か?

そして国選30年が請求した証人喚問へと進む。
証人として登場したのは、これまた不思議なことに、被告のことをよく知る下の娘ではなく、
嫁いだ上の娘の方だった。
傍聴席には下の娘がいたが、学生という身分ではあったが、証拠能力に乏しい未成年ではない。
更に国選30年、被告が普段穏やかな人柄であり、今回が衝動的だったといった心証づくりのための
質問を、被告の日常を知らない上の娘に投げかけるのである。

UNICOには国選30年の策が見えてこない。
しかし、この証拠人として登場した上の娘は、なかなかの飛び道具を持っていたのである。

「アルコールという魔物にはご用心!? -傷害-③」へ続く

アルコールという魔物にはご用心!? -傷害-

前回ここでご紹介した裁判は、すべての演者がどこか投げやりであったため、どこか消化不良気味であった。
「裁判とはこんなものではないだろう」と信じて次に向かった先は、
定番とも言える「傷害モノ」であった。

開廷前の10分ほど前に到着したが、小法廷とはいえまずまずの盛況ぶりであった。
これは関係者が公判に足を運んでいるということで、
「投げやり」な公判にはなりにくいことを裏付けるものである。
少しは期待が持てそうだ。

われわれが法廷内に入った時には、すでに検察官と弁護士、よくよく見ると被告もすでに着席している。
被告は保釈金を支払っているようだ。
これはお金持ちなのかな?

それぞれの演者の様子を見てみる。
被告はどこからどう見ても真面目で善良そうな顔をしており、
また口数も少なそうな「職人気質」なタイプである。
「職人を守る」弁護士は、これまた「国選一筋30年」のオーラを全身から放つといった
なかなかの離れ業を持つ人物であった。

一方職人を敵視する検察官はというと明らかに「ラッキョウ顔」で
誰が何と言おうと「検察一筋30年」といった印象を持つ猛者であった。

「その道一筋30年対決」
これは弁護側と検察側との威信をかけた代理戦争に相違ない。
開始前から、なかなかの緊迫感が漂っているように感じているのは、
UNICOだけか!?

「アルコールという魔物にはご用心!? -傷害-②」へ続く