裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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わいせつ電磁的記録記録媒体頒布

若き落日(後編)

親モアイからのぼやーっとした被告人質問が終わり、
裁判は検察官からの被告人質問となった。

「今回のDVD販売店に勤める前はボーイの仕事とありますが、
具体的に何をしていたのですか?」
「セクキャバのボーイです」
20歳のモアイ改からは、これまた刺激的な発言が飛び出してきた。

「マッチ棒の店に勤める前にもDVDの販売に携わったことがありますね?」
「やったことがあります」
被告の年齢を考えると、明らかに未成年のうちから、
こうした怪しい店ばかりで働いていたことの予測が簡単につく。

「働いてお金を稼ぐ必要があるのは分かりますが、違法なお店で働くのはなぜですか?」
「支払いがありまして、今回も丁度お金がない時にマッチ棒より連絡があり、
働かないかと誘われましたので、よく考えもせずにそれに乗っかってしまいました」
「わいせつDVD販売は儲かるのですか?」
「まぁ、そうですね」
これまでの丁寧な言葉遣いとは裏腹に、全く悪びれずに答えるモアイ改に広がる闇。

「今後は具体的にどうするつもりですか?」
「僕自身中卒なので仕事は選べませんが、工場なり現場で、
長く続けていけるように頑張っていきたいと考えています」
「収入は下がると思いますが大丈夫ですか?」
「確かに収入は下がりますが、これまでは違法なことをして得たお金だったので、
これからは自分の欲を抑えてやっていこうと考えています」
再び模範的な回答をして、心証をよくしようという作戦だろう。

「これまでお姉さんにはどこに勤めていると言っていたのですか?
「知り合いのところで働いていると言っていました」
「仕事の内容は聞かれませんでしたか?」
「聞かれませんでした」
「それではお姉さんは捕まってからはじめて仕事内容を知ったのですか?」
「はい」
姉弟との仲がいいという回答に疑念がわいてくる。

「今後また手軽に稼ぎたいという気持ちにはならないですか?」
「ないです」
「終わります」

そして、裁判長からの質問はなく、検察官からの論告求刑だ。
H24年1月より逮捕までの7か月間で105万円程度の報酬を得ていたことなどを挙げ、
懲役10か月が求刑される。

一方親モアイからは、執行猶予付きの判決を訴える。
理由には犯行を認めていること、マッチ棒に誘われた従犯であること、
母子家庭で育っていること、未だ20歳と若いこと、
少年時代に保護観察処分となったことが一度あるだけで前科がないことを述べていた。

最後に被告人の最終陳述だが、
「いや、二度としないようにします」
とあっさりしたものであり、これにて結審を迎えることとなったのだった。
+ + +
世界で有数のポルノ大国であるニッポンならではの事件であろう。
パソコンが普及し、誰でもが簡単に複製することができる時代である。
お金のために思わず手を出してしまったといったところだろうか。

ただあのマッチ棒も恐らくは従犯であろうと思われるが、
裁判でそのことが明らかになることはないと確信するUNICOであった。
(了)

若き落日(中編)

若い被告たちが検察から起訴された事実は、おおよそ以下の通りだ。
被告たちは3つのサイトを運営してエロDVDを販売していたとされるが、

①被告らが運営するAのサイトを通してエロDVDを購入した顧客から
DVD3枚を押収し再生したところ、わいせつな内容のDVDであった。

②被告らが運営するBのサイトを通してエロDVDを購入した顧客から
DVD47枚を押収し、うち3枚を無作為抽出し、
再生したところ、わいせつな内容のDVDであった。

③被告らが運営するサイトを通して注文のあった顧客に対して、
DVDを郵便局より発送したものとして、その荷受証が確認された。

④被告らが運営するCのサイトを通してエロDVDを購入した顧客から
DVD87枚を押収し、うち3枚を無作為抽出し、
再生したところ、わいせつな内容のDVDであったことが確認されたとのこと。
+ + +
起訴状の朗読が終わり、裁判長からそれぞれの被告に対して、
公訴事実を認めるか、否かを問う質問が投げかけられる。

これをあっさりと認めたのは、あごひげ店長&ミスター公務員ペアとモアイ親子の2組。
残りの主犯であるマッチ棒&乾いた弁護士ペアとGジャン店長&若手もっさりペアは、
①と④については認めるも、②は概ね認めるとし、③については確認が必要とし、
今日の公判では一部留保としたのだった。

マッチ棒、あごひげ、Gジャンとその弁護人ら6人が、
続きは次回公判以降に持ち越すこととして、早々に法廷を後にした。
そして法廷に残ったのは、早く刑を確定させたいと訴えるモアイ親子だけとなった。

早速証拠調べとして、弁護人の立証説明が行われるも、
親モアイはやる気がないため、大した備えがない。
早々に被告人質問となった。

「犯行のすべてを認めますか」
顔に似合わず柔和な語りかけだ。
「はい」
「どうです、悪いことをしたと思ってる、うん。
大したことはしてないとか思っていない?」
「いいえ」
どうやら親モアイの特技は誘導のようだ。
「今の気持ちはこの反省文に書いている通りだね、これは自分で書いたの?」
「はい」
「まぁ反省していると・・・。
問題は今後どうするかだねぇ、DVDは高く売れるのでまたそっちにいかない、うん?」
「身内は姉だけなのですが、今は一緒に住んでいて、姉に迷惑を掛けていますので、
今後はちゃんとした職業についてコツコツと頑張っていきたいと考えています」
素晴らしく模範的な回答だ。
「具体的にはどうやって探すの?」
「新聞広告やハローワークへ行って、きちんと就職活動をしたいと思っています」
「20歳とまだ若いし将来がある訳だしそれがいいねぇ」
「はい、ずっと悪いことばかりもできないので」
「現在は姉と一緒に生活しているとのことですが、お母さんは?」
「およそ1年前に亡くなりました」
「そう、お姉さんの職業は何をやっているの、うん?」
「派遣の仕事です」
「具体的にはどんな仕事?」
「化粧品を作る工場で働いています」
「炊事はどうしてるの?」
「早く帰ってきた方がやることになっていますが、大体は姉がやってくれています」
「今後収入は減ると思いますが生活費はどうするの?」
「家賃は元々折半しています。全て込みで1人3万円程度ですので何とかなると思います」
「お姉さんとの仲はいいの?」
「いいです」
「姉に情状証人をお願いしたのですが、なしのつぶてだった・・・。
勾留中に面会には来てくれたの?」
「手紙を自分から出さなかったので・・・迷惑を掛けたくなかったので」
「終わります」

親モアイの被告人質問での立証趣旨は一体何だったのだろうか。
う~ん、よく分からない。

 

若き落日(後編)へ続く。

若き落日(前編)

開廷時間を過ぎていたため慌てて法廷に入り着席する。
ただ何となく異様な光景が広がっていた。
というのも、被告は男ばかりの4人に、
それぞれ弁護人が付いているのでこれまた4人の男ががん首を揃えている。
対する検察は1人。
そこに裁判長と裁判所書記官の1名ずつが揃い踏みし、
狭い枠の中に併せて10人の人間が犇めいていたのだ。

一方、広い傍聴席を見渡すと、傍聴人はカップル1組と男性1名とUNICOとの4人のみ。
どうやら人気のない裁判のようである。
+ + +
罪名及び罰条は、
わいせつ電磁的記録記録媒体頒布、わいせつ電磁的記録有償目的頒布目的所持。
平たく言えば、違法エロDVD販売業者が摘発されたケースがこれに当たるらしい。

先に話が少しややこしいので被告団の整理をしてみる。
店舗のオーナーで本件の主犯格であるマッチ棒、
店舗責任者として、あごひげとGジャンとの2名。
そして販売員のモアイ改の計4名だ。

それにしても、被告団の被告たちは全員若い。
U-25といったところであろうか。

メンバーのキャプテンはオーナーのマッチ棒。
高校卒業後、一時工務店に勤務していたがほどなく離職。
3、4年前に同種事件に関与、この時は不起訴処分となった。
婚姻歴はなく前歴もないとのこと。
この弁護には乾いた感じの弁護人が付いている。

次にあごひげ店長。
高校卒業後、パチンコ店など職を転々としたのち、
マッチ棒と共に3、4年前に同種事件に関与。
この時は不起訴処分となった。
婚姻歴はなく前歴もなし。
弁護には、ミスター公務員が控えている。

そしてもう一人の店長であるGジャン。
大学卒業後、同じくパチンコ店に勤務。
平成23年よりマッチ棒の経営する製造販売店に勤務するようになる。
婚姻歴はないものの現在交際相手と同居しているとのこと。
Gジャンには、若手のもっさり弁護士。

最後にモアイ改。
中学卒業後、キャバクラ店に勤務するなど職を転々とし、
その後マッチ棒の経営する店に勤めるようになる。
婚姻歴はなく、前歴1犯あり。
モアイ改にはお父さんモアイが弁護を引き受けている。
+ + +
店舗オーナーのマッチ棒は、店舗をはじめるに当たり、
あごひげ店長とGジャン店長を雇い、エロDVDの複製をして、
3つのサイトを通したエロDVDの販売を指示していたらしい。
少なくとも3回のネット販売実績が確認されており、
店内にエロDVDは23万枚以上の在庫があったらしい。
売上は、2年程度で6000万円程度を荒稼ぎしていたとのこと。
これではなかなか止められないであろう。

ただU-25たちの絆は、
検察からの起訴状の朗読直後に空中分解することとなる。

 
若き落日(中編)に続く