裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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偽計業務妨害罪

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/後編)

そして、梅干しオヤジ裁判の佳境、弁護人からの被告人質問だ。
これで一連の事件に終止符が打てるだろうか?

+ + +

「そこの椅子に腰を掛けてください」
と裁判長が梅干しオヤジを証言台へ呼び寄せる。
しかし、オヤジは立ったままだ。そして、
「この方がいいんじゃ!」「座っとるとしんどいんじゃ!」
と相変わらずの暴言を吐く梅干し。
それを見て仕方ないと捨て置く裁判長・・・波乱の幕開けだ。

「今回した電話は脅しの電話であるということは分かっていますか?」
「分かっとる」
「そのことについて反省はしていますか?」
「分かっとる」
そんなことはどうでもいいといった態度である。

「昨年7月に胃がんの手術を?」
「した」
「今回の罪で刑を受けてもいいですか?」
「先に病院へ1回行ってからね・・・」
「刑務所から出た時に今回の事件を?」
「あのね・・・そんなことを」
「待ってください!!あとで話す時間は十分にありますから!!」
と制するペテン弁護人。

「次に出た時は今回のようなことはもうしないですか?」
「長かないでしょ!もう時間の問題でしょ!!」
「今回事件を起こした動機は何ですか?」
この質問に対して、梅干しのやる気スイッチが入ってしまった。

「こんなこと、最初の方に○○○(地名)のパチンコ屋で遊んどったら、
警察に4時間程度取り調べを受けて、指紋と署名を書いとうよ。
それも電話を掛けた時間も違うし、82回も電話を掛ける馬鹿がいるか!?」
「それでは何回位掛けたのですか?」
「2、3回程度、▲▲▲(通信会社)とグルになって偽造しているんじゃ!!
作られた調書に違うことが書いてあった。30回、40回程度電話したことが、
300回、400回と書いてあった。
借金も1000万と書かれていたが、そんなことを言った覚えもないわ!!
だから検察に調書を見せて貰って、指紋、署名が本当に自分のものかどうかを
確認して貰いたい、それだけや!! 自分のものとは違うはずや!!」
「▲▲▲(通信会社)とつるんでいた」
倒れるのではないかという勢いである。

「電話を掛けたことは悪いことということは分かる?」
「悪いことというのは分かっとる」
「脅しを言うと検事が出てくると思っていたのですか?」
「思っていた、わしが本当にそんなことをするわけがないじゃろ!」
この言葉に偽りはない。本気でそう思っていたのであろう。

「その電話でどうなったか分かりますか?」
「・・・?」
「警察とかが必要のないところに警戒して・・・」
「なぜその前にうちの話を聞いてくれないのですか?
○○警察署に行って指紋を調べてくれと言ったが聞きよらんので、日本全国の警察へ行った、
やったことは受け止めますよ。
ただ証書、何であんなに押しよるんですか、何枚か抜いとるとですよ!!」

「今度は自分が裁判官になるとですよ! ○○中央警察庁を告訴しますよ!」
「やる時はやりますよ! 日本の国会がもめるようなことをしますよ!!」
「検事覚えとけ!!」
そう捨て台詞を吐いて、被告人質問が終わった。
+ + +
当然、検察からの被告人質問はなく、そのまま論告、求刑へと裁判は進む。
「身勝手かつ悪質であり『包丁を持って何百人も殺したったらいいねん』などと言って、
警察の通常業務を妨害し、鉄道会社には新幹線をひっくり返す、検察には何百人も殺すなどと脅し、
また今回の事件は出所後僅か6ヶ月あまりで起こしているものであり、
誰も監督者がおらず、監督もできないことを勘案すると、懲役2年6月を相当とします」

ペテン弁護人の弁論、
「事件を素直に認めていること、今回の事件で迷惑を掛けたことは反省もしていること、
健康状態が良くないこと、70歳と高齢であること、
動機も自分の認識と異なる調書が書かれたと認識したものであり、
有罪は免れないとしても、決していたずら目的でないことなどを斟酌して頂ければと思います」

そして梅干しの最終陳述
「何も言うことはないですよ・・・」
+ + +
この裁判が終わった後、何とも後味が悪かった。
誰か1人でもゆっくりと梅干しの話を聞く人が居て、
寄り添うような対応をしてくれていたら、
今回の事件は起きなかったのではないだろうか。

あと若干人格が破壊されているような言動が目立つので、
胃がんの脳への転移を考慮して、精密検査を受けてみてはどうだろうか?
そのように考えると、医療刑務所へ行けるのならば、
実刑も悪くない判断だとは思うが。
(了)

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中後編)

暫く押し問答が続いたが、どうにか冒頭陳述が再開となる。
ここから今回の事件の犯行の手口がクッキングパパから述べられることとなった。
+ + +
以下はいずれも電話での犯行によるもの。
①某鉄道会社へ「新幹線をひっくり返す、女の人質をとった」
②検察へ「新幹線をひっくり返す、何十人も人を殺す」
「検事を出せ、人質を取った」など。
検察はとりあわなかったが、結果的に警察はこの電話を受けて35名を緊急配備し、
警戒態勢に入らせ、車両も止まったのだ。
③大阪府警府民対応応接センターには3回電話し、
「刑事を出せ、指紋は勝手に取られたものだ、自分のものではない」
「人質を取った。以前自分を取り調べた検事、警察を出せ。
新幹線をなんぼでもひっくり返すぞ」
「検事を出せ、新幹線をひっくり返すぞ」
これを受けて、新大阪駅は普段よりも警察を増員して警戒に当たらせた。
④10月には府警1Fのロビーに封筒を所持して現れ、
「調書をねつ造された。自分を取り調べた検事を出せ!許せない!!」
などと言い、内容物にも同様のことを記載されていた。

そして平成18年には、14件電話をし、検察にも複数回電話をしている・・・
その時再び梅干しが沈黙を破った。
「同じことばかり言わないでください、検事が悪いんぞ!!」
「今は発言の機会ではありません、法廷の規則に従わなければ退廷を命じますよ!」
「退廷でも何でもさせればいい、何十回でも出て来るぞ」
「ワシの見覚えのない指紋、署名が勝手につくられて腸の煮えくり返る思いじゃ!!」
「調書に書かれた電話帳の記録も何であんなことに・・・」
梅干しの言い分も聞きたいが、今は少し黙って欲しいと傍聴席の誰もが感じた。
それを汲んだか、裁判長はクッキングパパに、細かく調書を読むように伝える。
+ + +
梅干しは前々回の釈放後に弁護士会館へ行った。
しかし、弁護士会の誰もが対応しなかったことでいよいよ怒りが収まらず、
そのまま警察へ電話をすることとなった。
その後知り合いの倉庫に寝泊まりして、
検察にあてて計400回程度電話を掛けて、
結局威力妨害罪として懲役2年、執行猶予4年となった。

その後も全く納得していない梅干し。
「怒りの抑えきれない」梅干しの目の前で証明した証拠のいずれもを
「ねつ造された」と思い込み、
そして「主張を聞かせるには脅しをかけるしかない」と思い込み、
今回の事件に及んだとのことだった。

話がややこしいが、要は話を誰も聞いてくれなかったことに対して怒っているらしい。
ここまで来るのに裁判の予定時間数分前である。

それでも裁判は進行する。
そして、いよいよ待望の梅干しの話す時間である。

 

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/後編)へ続く

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中編)

起訴状の朗読中にも裁判長から何度も制止される
威勢の良い梅干しオヤジ。
そんな梅干しオヤジを弁護するペテン師のような顔をした弁護人も
早くもあきれ顔だ。
それでも裁判は若干の中断をはさみながらも冒頭陳述まで進むことができた。

そして梅干しオヤジの身上が読み上げられる。
中学卒業後、農業、漁業と職を転々としたあと、
下水道処理の仕事に従事していたが現在は無職。

離婚歴があり、これまでに同種の犯罪があり前科3犯。
うち2犯は威力業務妨害罪に問われ、昨年7月にその刑期を終えているとのこと。
ただどうもこの梅干しには、納得のできないことが今回の事件前にあったらしく、
今回事件を引き起こしたのも、どうも過去の経緯が原因のようだ。
+ + +
話は平成20年に遡る。
どうやら被告は、あることがきっかけで、某鉄道会社に対して恨みを持った。
そして、「新幹線をひっくり返すぞ」と脅しの電話を掛けたことにより有罪判決を受けた。
ここが今回の事件のそもそもの発端のようだ。
その時の取り調べの際に「調書をねつ造された」と思い込んでしまった梅干しオヤジ、
強い怒りを覚えてしまった。結果その時に調書を作成した○○検事に敵意を持つこととなる。

釈放後、もう1度自分の主張を聞いてもらおうとして、
「○○検事を出せ」と言って、何度も検察へ脅迫の電話を入れるようになった。
当然捕まる。この時は○○刑務所へ投獄されることとなった。
更に敵意が膨らむ梅干し。
そして平成24年4月に出所し、今回の事件を引き起こしたようだ。

とここまで検察が読み上げたところで、梅干しオヤジの我慢の限界が来たようだ。
「はい、裁判官!! ワシの言うことを聞け!」
「あなたにはのちほど話す時間がありますので今は聞いていて下さい」
「検事の言うことばかりを聞いて!! ワシにも言いたいことがある!!」
「勝手に発言しないでください、退廷を言いますよ!」
「そんなもん構わんわ!ワシの言いたいことも言えんようなもんいつでも出て行ったるわ!!」

仕方ないと思った裁判長、ペテン弁護人に助け舟を求めた。
「現在私は国選ですが、本人は私選をつけると言っているので、
現段階での私の意見ということになりますが・・・」
ときっちり前置きを述べるペテン。
「構いません、お願いします!」
ひとまず梅干しを黙らせて欲しい裁判長。
「後で話す時間がありますので、もう少し待って下さい!」と諭すペテン。
「そやかてワシの言うことを一切聞きよらん!!検察の味方ばっかししよって!!
今度ワシが裁判を起こしたら、お前らが今度は被告じゃからな!!」
と切れる梅干し。堂々巡りの様相だ。

 
遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中後編)へ続く

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/前編)

昨今、メディアで話題のPC遠隔操作問題。
先日被告が立件されたが、その罪名が偽計業務妨害罪だった。
偽計業務妨害罪というのは、刑法でいうところの
信用毀損罪・業務妨害罪(しんようきそんざい・ぎょうむぼうがいざい)に分類され、
刑法第2編第35章「信用及び業務に対する罪」(第233条 – 第234条)に
規定される犯罪のことであるとのこと(WIKI)。
平たく言えば、他人に嘘をついて、本来の業務遂行を損なわせる行為だ。
その法廷刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と振り幅が広い。
◇  ◇  ◇
UNICOの勝手なイメージであるが、偽計という単語に知的な犯罪を連想していたが、
偽計業務妨害罪に問われている法廷に現れた被告は、
ジャージ姿の梅干しオヤジ、御年70歳であった。
しかも何やらご立腹のようであり、憮然とした表情を浮かべている。
何やら不穏な予感である。

そうこうしているうちに、おばさん裁判長が入廷し、裁判がはじまる。
と思うや否や、縄を解かれた被告がスーッと証言台の前へ行き、
「昨日はどうも失礼なことを言いました」と裁判長へ向かって謝罪しているではないか。
空かさず、裁判長からストップが掛かるもそのまま被告は証言台へ。
裁判長から氏名を聞かれると、
「はいはい、そうですよ」と粗暴な態度を見せ、いきなりの豹変である。
傍聴しているUNICOには訳が分からなかった。

するといきなり被告は、
「ワシは言いたいことがあるんじゃ!!」
とわめきはじめた。
「後で話を聞く時間がありますから」
と制止するおばさん裁判長。
それでも、未だブツブツわめく梅干しオヤジを流して、
クッキングパパ検事からの起訴状の朗読がはじまる。
横にはモグラ検事も控えていた。

被告は、府庁警察本部応接センターに電話し、
「○○検事に会わせろ、●●を連れてこい、そうしないと何百人も殺してやる」
「○○検事を連れてこい、こっちは4年間も▲▲刑務所に入っていたんじゃ!
新幹線をひっくり返すぞ」などと脅迫のTELを入れたことにより、
約2時間にわたって、新大阪駅付近を普段の業務があるにも関わらず35人の機動隊を出動させ、
警戒態勢に入らせ、業務を妨害したことによるものとのことだった。

それを聞いて被告は、
「こちらが言うたことは間違いないが、自分は2つ3つ言いたいことがある。
なぜこのようなことをしたかと言うと・・・」
すると、裁判長から2回目のストップが掛かる。
「ワシの言うことを全く聞かんのはおかしいじゃろ!!」
とわめきはじめた。
「あなたには後で話す時間がありますので、それまで待っていて下さい」
「どうせ何十年も入ってもいいからワシは言いたいことがあるんじゃ!!」
と制止する裁判長を振り切る梅干しオヤジ。
オヤジは興奮して、顔が真っ赤である。
「あなたには後で話す時間がありますので、それまで待ちなさい!!
退廷を命じますよ!!」

一瞬の静寂・・・。
「起訴状にあったことは間違いないですか?」
「間違いねーよ」
とすねて答える梅干し。

こうして混とんとした裁判がはじまった。

 
遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中編)へ続く