裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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暴力行為等処罰に関する法律違反

ヤクザの花道(後編)

今のご時世、ヤクザ稼業はそう楽ではないようだ。
ダイアン検事からの被告人質問だ。

「今度暴走族を見付けたらどうしますか?」
「やっつけようと思います」
威勢のいい回答を口にする被告。正直な人だ。

「どんなふうにしてやっつけますか?」
「口で言って分からなければ、叩いて、殴って・・・向こうも悪いので。
近所にも迷惑を掛けているので・・・」
「その時は違法になるのでは?」
「その時は・・・今はもうないです」
検察の誘導にまんまと引っ掛る被告。

「また今度暴走族が事務所の周りに来たらどうしますか?」
「事務所の中では、誰も見回りはしていない。
個人的に自分が頭にきてやっただけなので・・・」
素晴らしい組織愛である。

「棒ですが、たまたま持っていたらしいですね?」
「いつもはあんなものを乗っけていない」
それでもこの日は積んでいたのだ。

「たまたまあって、それを手にした?」
「はい」
「ヤクザが怒るの?」
「誰でもあれは怒りますよ」
何とも挑発的な質問だ。

「今後は?」
「優しく注意します」
「ヤクザは辞めないの?」
「ヤクザは職業じゃないので辞めれない」
「暴力団ですよね?」
「暴力団とは違う。暴力団は仕事も世話をして貰えないので生活ができない。
堅気の人で仕事の世話をしてくれる、そんな人居ますか?」
「ハローワークでも行けばいいのではないですか?」
「そうですか」
ヤクザがハローワークへ行く・・・ある意味面白い題材かもしれないが。
やはり検察も公務員だと思わせる貧困な発想力をあらわにして、被告人質問を終えた。
◇  ◇  ◇
チープな発想力のダイアン検事からの求刑は懲役1年。
これに対して、イグアナ弁護士からは、
凶器を示したが、刃はないものであること、
言った言葉も「お前らどこのものや」だけであることを挙げる。
また女性は同乗者に送らせており、当然さらってもいないこと、
何より被害者が「恐怖を感じた」と言っているが、
被害者の証言の中で、「何しているんですか、そんなん持って?」
とあり、このやりとりからも怖がっていないことは明白であることを挙げる。
そして、飲酒についても挙げ罰金刑を主張するのだった。

最後に被告からの最終陳述。
「もう酒と棒を持つのは止めようと思っています」
この言葉には、ヤクザがマークされていることの実感がこもっていた。
◇  ◇  ◇
この事件は、明らかに被告が嵌められたケースと考えて相違ないであろう。
やはり国家権力を敵に回すと何かと厄介である。
それにしても、被告が「ヤクザは職業ではない」と言ったのは、
ヤクザは「職業ではなく生き方なのだ」と言いたかったのだろうか。
個人的な意見だが、この被告については罰金刑が相当なのではと感じるUNICOであった。
(了)

ヤクザの花道(中編)

暴力行為等処罰に関する法律違反で逮捕、起訴された被告。
ダイアン検事が読み上げた起訴状を聞く限り、
大した罪には問われないと思ったが・・・注目の被告人質問、まずはイグアナ弁護士から。

イグアナ弁護士は、この日の裁判に備えて書証を準備、
被告人直筆の反省文2通と内妻からの嘆願書である。
そのことを告げた後、被告人へ質問をぶつけていく。
+  +  +
「調書の内容は大凡そんなところですか?」
「大凡そうなっています」
「少し前に同じ場所でもめたの?」「はい」
「それはなぜ?」「自分が酒を飲んで絡んだだけです」
「今回事件を起こしたのは暴走族を追い散らそうとしただけ?」「はい」
「1週間くらい前から見回りをしていたの?」「違う、酒を飲んで、それで・・・」
冒頭陳述の内容とは話が食い違う。

「被害者に対しては?」
「道の真ん中を歩いていたので、クラクションを鳴らした」
「最後は避けたがあなたは車から降りたの?」
「はい、そして木の棒を持った」
「何に使うの?」
「グランドをならすトンボの先の折れたもの」
「何のために?」
「積んであったので、それで」
そんなものを普段から積むことはないだろうが。

「用途は?」
「掛かってこられたら叩くためです」
非常に潔い、やる気満々の回答である。

「被害者にはどのような言葉を掛けたのですか?」
「どこの奴や」と聞いたら「○○です」と答えたので「じゃぁ、いいよ」と言いました」
「それだけ・・・何でこうなったのか経緯を教えてください」
「男2人に声をかけたら女も居て、暗くて分からなかったが、
女を見ると知り合い・・・自分が行くカラオケ店の店員だった」
「その女性に対しては?」
「普通に話して、帽子が脱げそうになっていたのでかぶせてやって「送ろうか」と言いました」
「何で?」
「雨が降ってきたので、それで送りました」
「そうしたら被害者の男2人はあなたにさらわれたと思って、
110番通報をしたのですが・・・それだけですよね?」
「はい」
女性は嫌がっていたのだろうか、それとも怖がっていたのだろうか。

「警察で一連のことを話しましたか?」
「話しました」
「今回のことをどう思っている?」
「いろいろな人に対して迷惑を掛けたので・・・この時も酒を飲んでいたので今後は止めようと」
「被害者に手紙を書きましたか?」
「今後一切何もしませんと書きました」

「内妻に子どもが生まれましたね?」
「去年の7月に生まれました」
「どんな風に考えているの?」
「▲▲へ行ったりしながら支えていきたいと考えております」
「内妻から手紙は?」
「来ている」
「内妻に生活費は?」
「月に10万円程度送っている」
「今はどうしていますか?」
「送れていない」

「内妻が大変なことは分かっているよね?」
「はい」
「気持ちは分かっているよね?」
「はい」
「今後は?」
「何でもして・・・」
「仕事はどうするの?暴力団なら自由にできないよね・・・どんな風に考えている?」
「暴力団をやっているから雇ってくれるところもあるので」
「どんなところ?」
「どかたでも何でも」
「それで収入を得て仕送りをするの?」
「はい、約束します」
「確か前にも一度酒を止めると言っているが?」
「はい、今度こそ迷惑を掛けたのできっぱりとやめます」
「なかなか信用できないが?」
「できます」
+  +  +
こうしてイグアナ弁護士は質問を終えた。
今回のような明確に結果が残らない事件では判断が難しい。
決してヤクザの肩を持つ訳ではないが、
被告のようなヤクザをやっている人にとってこのようなザル法は、
状況証拠の積み重ねだけで、逮捕されることとなる。
恐ろしい・・・。

 

ヤクザの花道(後編)へ続く

ヤクザの花道(前編)

これから傍聴しようとする裁判の罪名は、暴力行為等処罰に関する法律違反。
あまり耳慣れない法律であるが、団体または多衆による集団的な暴行、脅迫、
器物損壊、面会強請、強談威迫などを特に重く処罰する日本の法律であり、
1926年の施行と案外古い。
この法律は、一般刑法ではなく特別刑法に位置するもので、
暴力団による強要・脅迫行為を取り締まる為の法律である(WIKI)。
◇  ◇  ◇
法廷の前にある長椅子には、いかにもその筋らしき方が大きな声で話している。
もちろん誰も咎めない。
「外に居っても暴れてばっかりやから丁度いいんちゃうかぁ。
これで少しはおとなしくなるやろうかぁ・・・無理やなぁ、
中の者が参ってしまうんとちゃうか、ハッハッハッハッ」

小市民であるUNICOが、この裁判の傍聴を躊躇したことは言うまでもない。
それでも・・・と勇気を振り絞り法廷に入ってみる。
・・・予想はしていたが、傍聴席には誰も居ない。
思わず引き返そうとしたときに、先ほど廊下で話していたその筋の方が傍聴席へ。
そのうち若い衆らしき人も数名入廷・・・もう後には引けない。

するとそこへいかにも・・・といった被告が入廷する。
黒のスウェットの上下には、UNICOの期待を裏切らない大きなドクロ柄が施されている。
◇  ◇  ◇
まずは、検察からの起訴状の朗読。
検察官は、このピリッとした雰囲気には似つかわしくない人物、
お笑い芸人のダイアン西澤氏に似ているときた。
おかげで笑いを堪えなければいけないといった
余計な作業が追加されることとなったのだ。

被告は、指定暴力団▲▲組系●●組構成員。
昨年の12月、バイクで暴走する若者に対して、
制裁を加えようと見回りに出かけていた時に、
22歳と23歳の青年に対して、木製木刀を持って、
「お前らどこの奴や~!!」と凶器を使用し、
今にも危害を加えかねない勢いで脅したことによるもの。

被告とイグアナ弁護士はすんなりと事件を認めたため、
そのまま検察からの冒頭陳述へと進む。
被告は住所不定の無職。現在32歳。
10代の時に一時建築業に所属するも、17歳で▲▲組系●●組の構成員となる。
これまでに暴行、傷害など計前科4犯。
前回は懲役1年の刑期を終えて昨年出所している。

今回事件をおこしたのは、組事務所の前をエンジン音、
音楽の騒音を鳴らして走行するバイクに対して、
殴る等の制裁を加えようと軽トラに木刀を積み込んでいた。
その見回りの際に、道端で立ち話をしていた被害者たちを見かけ、
「暴走族の仲間に違いない」と思い、上記の犯行に及んだとのこと。

(被害者たちの供述)
被害者たちは3人で居た(うち女性1人)。

①白色の軽トラが走ってきたので、それをよけたら自分たちの前で止まり、
クラクションを鳴らした後に、木刀を肩に担いだ被告が現れて、
「お前どこのもんや」と低い声で言われ、
「■■です」と答えると「■■か」と答え、
その後は何もなく、被害者のうちの1人が被告に対して、
「何をしてるんですか?」と聞くと「悪者退治や」と答えたとのこと。
大変怖い思いをした、そのことで仕返しをしないように厳しい処罰をお願いします、
と言っているらしい。

②①と同じ内容。

③内容は①と同じ。
ただこの被害者の女性と被告とは面識があり、
被告は被害者が勤めるカラオケ店の常連で、
被害者はすぐに「バイト先の常連のやくざであることが分かった」と話していたらしい。

(同行していた組員の供述)
平成22年より、被告と一緒に暴走族の仲間を探していた。
その際、「見付けたらボコボコにして正す」と言って、
その頃より木製棒を持って見回りをするようになったとのこと。
また被告は、「ここ最近、わざと音楽やエンジン音を鳴らして、
ヤクザのことをなめている奴がいる。こいつらをボコボコにしてけじめをつける」
と言っていたらしい。

被告は、このことが原因で別の人ともトラブルを起こしている。
更にこの件以後、暴走族の騒音が増えることとなったらしい。
だから、被告は今回の若者たちを暴走族だと思ったとのこと。
30歳を過ぎても、なかなか血気盛んな被告のようだ。

 

ヤクザの花道(中編)へ続く