裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

3

出入国管理及び難民認定法違反

いざ判決の時 ~出入国管理及び難民認定法違反~

被告は、パッと見た感じ西アジア系の方かと思う風貌であったが、
国籍は、意外にも隣国の中華人民共和国とのこと。
中国も多民族国家なのだろうか。

被告はどうやら就労目的で、およそ12年前に不法入国をし、
およそ今までの期間を滞在していたらしい。
よほどうまく警察の目を掻い潜っていたのであろう。

ただ被告は、今からおよそ16年前にも同じ就労目的で不法入国をし、
この時は僅か2か月で逮捕、
懲役1年、執行猶予5年の判決が下り、
そのまま強制送還となっている。
今回も執行猶予がつくだろうか。

さぁ、いよいよ判決だ。
一瞬法廷内が静まりかえる。
+ + +
主文、被告を懲役1年8ヶ月に処する。
このうち未決拘留日数30日は刑期に算入する。
+ + +
さすがに2度目の不法入国、
10年を超える長い滞在日数を犯した被告に対しては、
同情の余地がないようだ。
裁判長も判決理由の中で、
「就労目的を理由に情状酌量を訴えていたが、
それを汲む事情にはならない」とバッサリ。

閉廷後、法廷警備員に連れて行かれる前に、被告が通訳に話し掛ける。
「裁判長、言いたいことがあります」と通訳者が告げる。
「ここで聞くことはできません。
何かありましたら弁護人と相談してください」と切り捨てる裁判長。
そして、裁判長のその言葉を聞き、
無表情でそのまま立ち去ろうとするたまご肌弁護人・・・。
こうして、被告は自分の言いたいことも告げられず、
無念のまま連行されるのだった。

ただその様子を横目で確認し、たまご肌弁護士も法廷を後にする。
恐らくこうして被告の言い分は捨て置かれるのであろう。

確か以前にもこのたまご肌弁護士を見た覚えがある。
この時も同じ不法入国を扱っていたので、
これを専門としている弁護士なのだろうか。

UNICOもそのまま退廷すると、
前には、たまご肌弁護人と通訳者とが笑顔で話しながら
エレベーターに乗り込むところだった。
その姿を見送りながら、何か割り切れないものを感じるUNICOであった。
(了)

過去の大国「ニッポン」(後編)

過去の大国「ニッポン」(後編)までのあらすじ

韓国からお金を稼ぐためにニッポンへの不法入国を果たした韓国顔の被告。
そんな被告を正すため、低音ボイスが魅力的な宝塚ボブ検事が堂々と被告の罪を読み上げる。
一方、被告の明日を庇護するため、コンパクト六法片手に駆け出しのたまご肌弁護士が、
執拗な被告人質問をはじめ、不法入国後の被告の暮らしぶりが徐々に明らかになっていく。

————————————————————————————-

>在留中は何をしましたか?
「はじめミナミの韓国クラブに5年程度、その後2年程度スナックでホステスをしました」
>売春はしましたか?
「絶対にありません」
>ホステスの後は何をしましたか?
「焼肉屋、中国料理、厨房での皿洗い、整骨院での清掃、検品などのアルバイトなど
いろいろとやりました」
>収入はいくら位になりましたか?
「検品は時給900円で9時~15時30分まで、清掃は時給850円で
16時30分~24時まで働いて、月20万円程度でした。
それでも身体の調子が悪くなり、働けない時期もあって、韓国からお金を送って貰ったこともありました」
これこそ本末転倒である。

>どこで生活をしていましたか?
「はじめは友人と3~4年暮らし、その後は一人暮らしです」
>誰名義で部屋を借りていましたか?
「はじめは友人名義で、その後はその友人の名義で借りていました」
>罪悪感はありましたか?
「どうしようもありませんでした」
>家賃の滞納はありましたか?
「ありませんでした」
>他に犯罪を犯しましたか?
「他のことはとても用心しながら過ごしてきた」
そう涙ぐみながら語る被告。確かにしんどい暮らしぶりである。
>反省はしていますか?
「とてもとても反省しています」
しかし、たまご肌は検察官にでもなったつもりなのか、ここで追及の手を緩めなかった。

>なぜ不法入国がいけないのか説明してください。
「その当時はそんなに深刻にとらえていませんでしたが、
今になって、犯罪行為に協力していたことに気付き、大変なことをしたと思っています」
>犯罪とは何ですか?
「身分証を渡して、お金は支払いませんでしたが、
もしお金を渡していたらそれも資金源になるということです」
若干論点がずれている気もするが、これもスルーパスを決め込むたまご肌。

>持病があるのですか?
「心臓が良くない、少し不安になると心臓がバクバクします。
それでも、ビザがなく病院には行けないので、いつも薬局で買った救心を飲んでいます」
・・・救心!?
>前に2度とやらないと言っていたのになぜやってしまったのですか?
「私が本当に悪かった、弁解の余地はありません」
>お金のために不法入国をしてもいいですか?
「だめです、もう2度としない、もう2度としません」
再び涙ぐむ被告。それでも未だ追及の手を緩めないたまご肌。
>自首はなぜしなかったのですか?
「何度も思いました・・・特にこの2年ほど前から何度も自首しようと思っていました」
>それでもなぜ自首をしなかったのですか?
「刑務所に行くのが怖かった・・・この10年間ずっと不安でした」
>なぜ2年前に自首を考えたのですか?
「身体の調子が悪くなり、病院に行くこともできなかったためです」
>今後はどうしますか?
「韓国に帰れるならば何でもやるつもりです。韓国ならばビザもありますし怯えて暮らすこともありません」
>韓国に帰ったあとに家はどうしますか?
「アメリカに居る姉が準備してくれることになっています。それまでは親戚の家に行くつもりです」
>お母さんはどうしましたか?
「今年の4月末に亡くなりました」
>遺産はありますか?
「あります」
>日本の方が魅力的ではないのですか?
「いいえ、ビザがないので短い時間しか働けませんし、
50歳を過ぎたので働くところもありません。韓国の方がマシです」
>またホステスに戻るつもりはありますか?
「年を取ってしまったのでもう誰も使ってくれません」
・・・ようやく終わった。

ようやくヅカ検事の出番だ。
>はじめは観光目的ですか?
「はい」
相変わらずの良い声である。
>決められていた滞在期間は?
「覚えていません」
>確か短い期間でしたね?
「3カ月・・・だったかと思います」
>悪いことをしているという意志はありましたか?
「ありました」
>それでどうしてしたのですか?
「今考えたら後悔でいっぱいです、浅い考えだったのだと思います」
>どんな考えですか?
「少しお金を稼いで韓国に帰らなきゃといったものです」
>強制送還前には拘束されましたか?
「はい、3日ほどの期間を確か入管だったと思います」
>3日はどうでしたか?
「当時もたくさん反省しましたが・・・」
>1か月後にはまた日本に来た?
「はい」
>他人のパスポートを使って?
「はい」
>反省の効果は1か月だけですか?
「言い訳のしようがありません」
>また日本に来たいですか?
「いいえ、本当にしんどかったです」

さすがヅカ検事、シンプルかつ的確な追い込みである。

————————————————————————————-

法廷はヅカ検事が懲役2年6か月を求刑し、
駆け出し弁護士が執行猶予を狙って、情状酌量を訴えるといったパタンで結審を迎えるのだった。

結局、判決までは見届けなかったが、
数十年前の韓国とニッポンとの経済格差であれば、当時のニッポンが被告にとって、
魅力的に映ったことは理解できる。
ただ現在の衰退しきった斜陽国であるニッポンで暮らすことには魅力を感じないでろう。
また被告の年齢も年齢であり、確かに水商売はできないであろう。
執行猶予をつけて、さっさと帰国して貰うのが得策であろう。節税にもなるしね・・・。

(了)

過去の大国「ニッポン」(中編)

(中編までのあらすじ)

韓国からお金を稼ぐためにニッポンへの不法入国を果たした韓国顔の被告。
そんな被告を正すため、低音ボイスが魅力的な宝塚ボブ検事が堂々と被告の罪を読み上げる。
一方、被告の明日を庇護するため、コンパクト六法片手に駆け出しのたまご肌弁護士が、
執拗な被告人質問をはじめるのだった。

————————————————————————————-

>起訴されている事実は認めますか?
「はい」
>はじめに日本へ来たのはいつですか?
「1990年です」
>来日した目的は何ですか?
「日本人と結婚するためです」
被告は韓国人で日本語があまり話せないということで、今回も通訳者付きだ。

>どこで知り合ったの?といきなりため口になるたまご肌。
「韓国で知り合いましたが、結婚生活に適応できず、
1年程度で離婚をし、その後韓国に居る母と一緒に暮らしていました」
>韓国では何の仕事をしていたの?
「子供服を売る商売をしていました」
>次に日本へ来たのは?
「1998年です」
>目的は何ですか?
「はじめは観光目的でした」
>来日した時は何をしましたか?
「友だちの家に居て、観光をしました。その後ホステスの仕事をやるようになりました」
>なぜですか?
「友だちがホステスをしていましたので、一緒にはじめました」
>ホステスをしている時は心配ではありませんでしたか?
「心配でした。アルバイトをしてそれを生活費に使っていたましたが、
いつ捕まるかとずっと怯えていました」
>そのあと、いつまでホステスをしていましたか?
「ずっとです。2002年4月にクラブへ警察か入国管理官かが来て、
そのまま強制送還となるまで続けていました」
・・・この時点で4年が経過している。
日本の治安がいいという安全神話はもろくも崩れ落ちる。

>次に来たのは?
「その3~4週間後です」
>何のために来たのですか?
「お金を稼ぐためです」
>何で稼ごうと考えていたのですか?
「その前もクラブで働いていたので、安易にホステスと考えていました」
>楽に稼げるの?
「私がダメでした、知り合いが日本に居なかったので恥ずかしくありませんでした」
>その時に入国した方法はどういったものですか?
「他の人のパスポートで入国しました」
>どうやってそのパスポートを取得しましたか?
「2002年2月に韓国の居酒屋で酒を飲んでいる時に、大声で強制送還されたことを言ったあとに、
知らない男が「また日本へ行きたいか」と話しかけてきました。
それで『また行きたい』と返答したら、
『2~3週間後に行けるようにしてあげる』と言われました」
>偽造パスポートはどこで受け取ったのですか?
「インチャン空港で受け取りました」
>その時にいくら支払いましたか?
「20万円を支払う約束となっていました。
そして使えなくなっていた自分のパスポートと交換して、自分は新しいパスポートを手に入れました」
>その後男性とは連絡を取りましたか?
「関空に着いた時にその男も居ました。
しかしパスポートとチケットを返すからと言ったまま、その後男とは連絡が取れなくなってしまいました。
結局20万円は支払いませんでした」

・・・韓国では、こんなにも簡単に偽装パスポートが手に入るものだろうか。

 

過去の大国「ニッポン」(後編)に続く

過去の大国「ニッポン」(前編)

目を閉じたまま椅子の背もたれにゆったりと凭れ、
一見眠っているかのように見えるボブカットの検事。
しかしよく見ると眉間には、くっきりとした皺が寄っている。
まもなく控える開廷に向けて考えごとをしているようだ。

一方、無駄にたまご肌を見せつける10代の駆け出し弁護士はというと、
ポータブル六法全書を片手にこちらも公判の予習をするなど余念がないようだ。

そうこうしているうちに被告が法廷に入ってきた。
明らかに大韓民国籍といったその顔からは既に涙が光っている。
<a href=”http://unicowns2.jugem.jp/?cid=10″ target=”_blank”>この前に書いた</a>フィリピン人の時もそうだったが、
どいやら不法入国組は、入廷時に涙ぐむことが決まりとなっているようだ。
そんな白けた思いに耽っている間に、ボブ検事からの起訴状の朗読がはじまった。

被告は韓国籍を持っている。現在50歳。
日本には上陸手続なしで不法に在留したことにより、逮捕・起訴されている。
捕まる直前までは洋品の検品などをして生計を立てていたそうだ。
被告は平成2年に日本人男性と婚姻するために入国したが、その1年後にあえなく離婚。
過去に1度強制退去させられている。
しかし、韓国に戻った直後に日本で働いた方が金になると考えて、
ブローカーより他人名義のパスポートを入手し、入国したとのことだ。
よって、今回は出入国管理及び難民認定法違反という罪に問われている。

それにしても、ボブ検事の朗読には迫力があった。
というのも、まるで宝塚の男役であるかような低音で、また堂々としたものであった。
その顔も注意して観察すると非常に端正であり、
もしかすると宝塚音楽学校の卒業生ではなかろうか。
そうすると可能性として、公判中もミュージカルみたいになる・・・わけはないよね。

公判は、被告とたまご肌弁護士が、宝塚検察による起訴事実をすんなりと認め、
そのまま証拠調べに進むこととなった。
証拠調べでは、予習に余念のないたまご肌からの被告人質問が控えている。

 

過去の大国「ニッポン」(中編)へ続く