裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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誘惑の炎(中編2)

誘惑の炎(中編2)

止めていた三輪原付の後ろカゴに火をつけ、器物損壊の罪で起訴された英明似の被告。
今回の事件を起こした本当の動機は一体何だったのだろうか。
その謎を解明すべく弁護士が被告人に質問をぶつけるが、
ここまでは全く見えてこない。この弁護士には荷が重いのだろうか。
被告人質問の続き。
+  +  +
「2か所目は?」「ゴミ置き場のごみです」
「なぜ?」「自転車の前かごに火をつけた時のことを思い出して、
また火が見たいと思い、点けてしまいました」
供述は完全に矛盾している。
しかし、事件を引き起こしてしまう被告の心理とは案外このようなところなのかもしれない。

「どのように燃えたの?」
「ゆっくりと燃えていました。この日もいったんその場を離れ、戻ってきたら燃えていました」
「気持ちは?」
「もうこれは止めようと。それで白状するつもりで戻ってきました」
「それでどうしましたか?」
「まず消そうと思いました。近くにホースがあったのでそれで水が出ると思いました。
しかしこれは栓がないと出ないもので、結局消火はできませんでした」
「どういう気持ちだった?」
「自分は火を見るとスッキリすると思っていましたが、
逆に後悔にかられ、どうしたら火がおさまるだろう、どうしたらいいんだろう、と思いました」
モヤモヤする気持ちがあった。満たされないものがあった。そういうことか。

「そのあとから逮捕されるまで、この間はしていないの?」「はい」
「また火をつけたい?」「ないです」
「この事件を起こす前には火をつけたいと思ったことは?」「ないです」

「被害者に手紙を書いたその内容は?」
「自分が火をつけて被害者の方に迷惑を掛けてしまったので、
すみませんでしたという気持ちを伝えたいと思いました。
そして、あの時にできることを全部しました」
「弁償金は4万円の所持金のうちから支払ったの?」「はい」
いやいや。お金がないのは個人的な事情で、被害者には全く関係がない。

「アルコール依存の治療は?」
「過去に入院もあります、○×病院で4か月、3か月、3か月の計10か月です」
「入院から現在の通院になったのはなぜ?」
「酒を飲むことが止まったためです」
「何で酒を飲むのが止まったの?」
「フラストレーションがたまることがなくなったためです」
「現在の治療は?」
「アルコール依存専門のデイケアへ行っています。
そこで同じ人たちとふれあい、断酒を確実にしています」
「頻度は?」
「週1回から2週に1回です。他に薬は睡眠薬と安定剤を服用しています。
また精神のデイケアへ月~土は通所しています」

「精神の薬は?」「飲んでいました」
「アルコールのデイはどんな場所ですか?」「安らげる場所です」
「デイサービスは精神にも対応しているの?」「はい」
「現在精神の症状は?」「安定しています」

「お母さんに電話は掛けた?」「対立している状態なので・・・」
「お母さんとは関わりたくない?」「はい」
「相談者は?」
「居ます。自分のことをよく知っている人で入院中に知り合った人です。同じ氏名の人です」
うん!?

「仕事は?」
「早く復帰しようと思いますが、仕事をすることはストレスになり、
それでストレスが溜まることになって、また酒を飲んで止まらなくなる
可能性があるので・・・。
主治医は1~3年はお酒を断って、それで安定するようになっていたら
確実ではないかと言われています」
「まず1年程度はお酒を断って、その後に仕事に復帰したいなぁと考えているのですね?」
「はい」
この時間を施設内矯正教育に充ててみるのがいいのではないか。

「今回近隣の方にも迷惑を掛けたのは分かる?」「はい」
「近隣の方はどんな気持ちだった?」
「原付に、自転車に、ゴミ箱にと、本当に次々と火がつくことは、
近隣の方へ不安を与えてしまったことはとても反省しています」

「今後は?」
「今後は今回の事件を反省して、その心を持ってやっていきます。
またその件で今の家を追い出されたので、また家を探すことになるし、
またイチからやらねばならないので、火だけではなく、
今後人には迷惑を掛けることはなしでやっていきたいと思っています」
・・・果たして、被告はこの約束を実現することが可能だろうか。

 

誘惑の炎(後編)へ続く

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