裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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裁判 膨張

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中編)

40歳の被告が24歳の時からはじめ、
これまでに2度も覚せい剤取締法違反で裁判を受け、何れも有罪判決となっても
なお同じ罪を犯し、今回裁判を受けることになっている状況の中で、
被告が述べた「今後もう2度とやりません」という言葉。

被告の言葉が今度の今度こそ真実であることを立証するため、
モンチーパンチ弁護士が採った手段――。
それは被告が書いた反省文、被告の母親を情状証人として招へいすることだった。
◇  ◇  ◇
証言台に立つ被告の母親は、若干若作りをしているが、
もう70歳は過ぎているだろうか。
母親にしてみれば、この年になってもなお娘の情状証人として、
出廷することになるとはと思っているに違いない。

そこを踏まえてモンチーパンチは、先ず被告が書いた反省文を抜粋して朗読した。
「覚せい剤をしてすべてなくしてしまいました。
また母にも迷惑を掛けてしまいました。
婚姻相手と籍を入れたことだし、今後夫と一緒に親孝行をしたい。
これで最初の最後にしたい、今後二度としないと誓います」
と微妙な内容ではあったが、
迷惑を掛けられた母親への質問の前には、有効な方法なのだろうか。
モンチーパンチは質問をはじめた。

「同居をしていましたか?」
「はい」
「被告との仲は?」
「悪くない」

「娘さんが逮捕されたと聞いてどうでしたか?」
「えー、もう・・・私の力で真面目にしてやれないことは残念です」
「これまでに面会には行かれましたか?」
「6回程度警察署へ行き、4回拘置所にも行きました」
「被告を見てどうでしたか?」
「娘が拘置所の中に居るのが辛くて・・・」
と言いながら涙する母。

「被告から手紙は来ましたか?」
「7通くらい来ました」
「今後娘さんと同居は考えていますか?」
「同居させます」
「裏切られましたが娘さんのことを監督はしますか?」
「します」
「母として、しておけば良かったことは何かありますか?」
「よそに勤めに行かさず、自分の店に置いておけば良かったなぁと思っています」

「こうして証言として法廷で話すのは何回目ですか?」
「3回目です」
「3回目も裏切られていますが、それでも今後監督をするのですか?」
「・・・はい。これを最後にしてほしい・・・そして罪をきちんと償って真面目にやってほしいです」

シンプルな内容であったが、
随所に「母の存在感」を散りばめたことは有効であったかもしれない。

 

 

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中後編)へ続く

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中後編)

暫く押し問答が続いたが、どうにか冒頭陳述が再開となる。
ここから今回の事件の犯行の手口がクッキングパパから述べられることとなった。
+ + +
以下はいずれも電話での犯行によるもの。
①某鉄道会社へ「新幹線をひっくり返す、女の人質をとった」
②検察へ「新幹線をひっくり返す、何十人も人を殺す」
「検事を出せ、人質を取った」など。
検察はとりあわなかったが、結果的に警察はこの電話を受けて35名を緊急配備し、
警戒態勢に入らせ、車両も止まったのだ。
③大阪府警府民対応応接センターには3回電話し、
「刑事を出せ、指紋は勝手に取られたものだ、自分のものではない」
「人質を取った。以前自分を取り調べた検事、警察を出せ。
新幹線をなんぼでもひっくり返すぞ」
「検事を出せ、新幹線をひっくり返すぞ」
これを受けて、新大阪駅は普段よりも警察を増員して警戒に当たらせた。
④10月には府警1Fのロビーに封筒を所持して現れ、
「調書をねつ造された。自分を取り調べた検事を出せ!許せない!!」
などと言い、内容物にも同様のことを記載されていた。

そして平成18年には、14件電話をし、検察にも複数回電話をしている・・・
その時再び梅干しが沈黙を破った。
「同じことばかり言わないでください、検事が悪いんぞ!!」
「今は発言の機会ではありません、法廷の規則に従わなければ退廷を命じますよ!」
「退廷でも何でもさせればいい、何十回でも出て来るぞ」
「ワシの見覚えのない指紋、署名が勝手につくられて腸の煮えくり返る思いじゃ!!」
「調書に書かれた電話帳の記録も何であんなことに・・・」
梅干しの言い分も聞きたいが、今は少し黙って欲しいと傍聴席の誰もが感じた。
それを汲んだか、裁判長はクッキングパパに、細かく調書を読むように伝える。
+ + +
梅干しは前々回の釈放後に弁護士会館へ行った。
しかし、弁護士会の誰もが対応しなかったことでいよいよ怒りが収まらず、
そのまま警察へ電話をすることとなった。
その後知り合いの倉庫に寝泊まりして、
検察にあてて計400回程度電話を掛けて、
結局威力妨害罪として懲役2年、執行猶予4年となった。

その後も全く納得していない梅干し。
「怒りの抑えきれない」梅干しの目の前で証明した証拠のいずれもを
「ねつ造された」と思い込み、
そして「主張を聞かせるには脅しをかけるしかない」と思い込み、
今回の事件に及んだとのことだった。

話がややこしいが、要は話を誰も聞いてくれなかったことに対して怒っているらしい。
ここまで来るのに裁判の予定時間数分前である。

それでも裁判は進行する。
そして、いよいよ待望の梅干しの話す時間である。

 

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/後編)へ続く

遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中編)

起訴状の朗読中にも裁判長から何度も制止される
威勢の良い梅干しオヤジ。
そんな梅干しオヤジを弁護するペテン師のような顔をした弁護人も
早くもあきれ顔だ。
それでも裁判は若干の中断をはさみながらも冒頭陳述まで進むことができた。

そして梅干しオヤジの身上が読み上げられる。
中学卒業後、農業、漁業と職を転々としたあと、
下水道処理の仕事に従事していたが現在は無職。

離婚歴があり、これまでに同種の犯罪があり前科3犯。
うち2犯は威力業務妨害罪に問われ、昨年7月にその刑期を終えているとのこと。
ただどうもこの梅干しには、納得のできないことが今回の事件前にあったらしく、
今回事件を引き起こしたのも、どうも過去の経緯が原因のようだ。
+ + +
話は平成20年に遡る。
どうやら被告は、あることがきっかけで、某鉄道会社に対して恨みを持った。
そして、「新幹線をひっくり返すぞ」と脅しの電話を掛けたことにより有罪判決を受けた。
ここが今回の事件のそもそもの発端のようだ。
その時の取り調べの際に「調書をねつ造された」と思い込んでしまった梅干しオヤジ、
強い怒りを覚えてしまった。結果その時に調書を作成した○○検事に敵意を持つこととなる。

釈放後、もう1度自分の主張を聞いてもらおうとして、
「○○検事を出せ」と言って、何度も検察へ脅迫の電話を入れるようになった。
当然捕まる。この時は○○刑務所へ投獄されることとなった。
更に敵意が膨らむ梅干し。
そして平成24年4月に出所し、今回の事件を引き起こしたようだ。

とここまで検察が読み上げたところで、梅干しオヤジの我慢の限界が来たようだ。
「はい、裁判官!! ワシの言うことを聞け!」
「あなたにはのちほど話す時間がありますので今は聞いていて下さい」
「検事の言うことばかりを聞いて!! ワシにも言いたいことがある!!」
「勝手に発言しないでください、退廷を言いますよ!」
「そんなもん構わんわ!ワシの言いたいことも言えんようなもんいつでも出て行ったるわ!!」

仕方ないと思った裁判長、ペテン弁護人に助け舟を求めた。
「現在私は国選ですが、本人は私選をつけると言っているので、
現段階での私の意見ということになりますが・・・」
ときっちり前置きを述べるペテン。
「構いません、お願いします!」
ひとまず梅干しを黙らせて欲しい裁判長。
「後で話す時間がありますので、もう少し待って下さい!」と諭すペテン。
「そやかてワシの言うことを一切聞きよらん!!検察の味方ばっかししよって!!
今度ワシが裁判を起こしたら、お前らが今度は被告じゃからな!!」
と切れる梅干し。堂々巡りの様相だ。

 
遠隔操作ではなく、男は黙って実行あるのみ!!(偽計業務妨害罪/中後編)へ続く

燃える涙(中後編)

コンビニで発泡酒1本を盗み、逮捕、起訴されるにはそれなりの理由があるはず。
40を過ぎた松山千春似の被告に一体何があるのだろうか。

次は森三中の大島似の弁護人からの被告人質問だ。

「今回の事件についてどう思っていますか?」
「万引きの行為について、いろいろと原因はありますが、
まず認識が甘くて、謝ったら済むといった考えが自分にはあり、
軽率な考えの下から起こった事件だと思います」
どうやら被告は見かけによらず理屈っぽいタイプのようだ。

「今、証人の話を聞いてどう思いましたか?」
「自分がやっていることは、一番彼女に対して気持ちを踏みにじる行為だし、
それに証言までして貰って、自分のためにやってくれる気持ちが嬉しくて・・・
自分のことを最低だと思って・・・。
これまで何回もあったが、今回が一番自分にとって考えを変えていく、
更正する最後のチャンスだと思うし・・・。
今後は悪い方向へいかず、まず2人のための生活をしていき、
それをやっていかなければと強く思いました。
やったことも悪く、罪に軽い重いは関係ないと思う」
とこれまでとは違うことをアピールする被告。

「被害店舗へあなたは何か申出をされましたか?」
「謝罪文と被害額相当の弁償を申出ましたが、断れました。
店の人から『裁判慣れしている、そんな形式的なものは要らない』と言われました」
「誰に反省文を出したのですか?」
「(コンビニ店)の店長です」
「それをオーナーにも見て貰い、何て言われたのですか?」
「この方は犯罪をやるものは治らないといった考え方をされていました。
人には色んな考え方があり、これまでは確かにそういう生活をしていた
自分がありますので、理解はできます」

「オーナーは他にも何かされていますよね、その立場は何か知っていますか?」
「青少年に犯罪防止運動をしておられる人です」
「それについてあなたが思うところは?」
「いろんな活動をされている方で、自分のやったことは社会悪、
オーナーの言い分はすべて正論ですので自分が違うとは言えません」
ということは、本音ではオーナーの言い分には了承致しかねるといったところなのだろう。

「それで再度謝罪文を出されたのですね?」
「1回目は自分の気持ちというより、これからや今の気持ちを省いたものを書きました。
次に2回目はそれを入れて書きました」

「窃盗は累犯ですので恐らくは刑務所へ行くことになると思いますが、
今後のことはどう考えていますか?」
「復帰後は彼女と力を合わせて、ささやかでもいいので、仕事を選ばず、
きちっと当たり前の社会人として、自分は常識がずれているので・・・。
彼女の言うことなら聞けるし、2度と同じ過ちを繰り返さずやっていきたいと思っています」
◇  ◇  ◇
被告は窃盗の常習犯・・・それも前科7犯。
内訳は覚せい剤使用に窃盗と、オーソドックスな犯罪パターンである。
それに前回起こした犯行は1年5か月前であるとのこと。
これでは、実刑は免れないであろう。

続く、検察からの被告人質問でこの男のこころの闇が明らかになっていく。

 

燃える涙(後編)へ続く

燃える涙(中編)

被告人の交際相手に対する証人質問の続き)

「金銭管理は誰がしていますか?」
「付き合いはじめから昨年12月、1月くらいまでは彼が自己管理していましたが、
昨年11月に2人で生活していく上で、彼のお金の使い方などを見ているうちに、
私が管理した方がいいと思い、相談の上そのように決定しました」
一般的に、金銭管理は生活観念のしっかりとしている女性の方がいいとよく耳にする。

「今回万引き、盗みをしていたことに気が付きました?」
「気付きませんでした」
「今回はじめて知りましたか?」
「はい、はじめて知りました」
「知ったきっかけは?」
「警察から連絡があったので」
「その時どんな気持ちでしたか?」
「その時は驚いてどういったことで捕まったのかが分からなかったので、
いったい何があったのかと思いました」
それはそうだ。

「内容は誰から聞きましたか?」
「具体的な内容は面会で本人から聞きました」
「それを聞いてあなたはどう思いましたか?」
「『なぜ』とそう思いました」
まさに裏切られたと思っただろう。

「あなたがローソンへ行ったんですか?」
「直ぐに謝罪に行きました」
この交際相手は優しすぎるところがあるように思われる。

「店の対応はどうでしたか?」
「本人の万引きの態度にお怒りでした」
「あなたが店の人へ何て言ったのですか?」
「酒を飲むと周りが見えなくなるところがあること、甘い考えがあることを伝えました」
「謝罪はしましたか?」
「こんなことになって申し訳ありませんでしたと謝罪しました」
「店の人の反応は?」
「私の気持ちは分かると言って頂けました」
ここまで来ると、彼女ではなく母親である。

「そのあとは?」
「被告が書いた謝罪文を渡したり、いろいろと話して、そして2回目の謝罪文を渡して、
かなり反省している気持ちが伝わりましたと言って下さいました」
「あなたからの嘆願書は?」
「私と彼と生活していくことを考えて、彼は立ち直ろうとしています。
裁判所の方には彼が今後更正していくように努力をしていくつもりですので、ご考慮頂きたく思います」

「今後はどう考えていますか?」
「一緒に生活をして、一緒に働いて、一般的な温かい家庭を作っていきたいと思います」
◇  ◇  ◇
そんな母性たっぷりの交際相手に、次は検察からの証人質問が続く。
「いつから付き合っているのですか?」
「一昨年12月半ば、18日です」
さすが記念日を大事にしたいという女性ならではの習性だ。

「彼が派遣で働きだしたのはいつからですか?」
「12月6日からです」
いや、彼女は少しタイプが違う・・・。

「それまでは何をしていたのですか?」
「いろいろな仕事をしていたと思います」
途端に雑な回答になった。何か隠しているのではないか。

「昨年11月より、あなたが金銭管理をするようになったとありましたが、
それまでの彼のお金の使い方はどんなんだったのですか?」
なかなか鋭い質問だ。

「家賃など支払うべきものは外しますが、残りは小遣いとしてつかい、
月末になるとお金が足りなくなることがあったので、交友費のやりくりが下手だと思いました」
それは金銭管理をされても仕方がない。

これで、検察からの質問が終了となり、
やや呆気なく思ったが、何度のくどくどと質問をするタイプよりはずっといい。

 

燃える涙(中後編)へ続く