裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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不法滞在 裁判

ニッポンに幻想を抱いて Ⅲ

(前回の続き)
SINDOと名乗る新聞販売員の謀略の下、ニッポン国籍を獲得して入国を果たした被告。
「さぁ~稼ぐぞぉー」と期待に胸を踊らせていた被告に待っていた現実とは・・・。
いよいよシリーズ最終話!!

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被告がニッポンへ到着すると、直ぐにSINDOから連絡が入った。
住むところの指定である。
むろん住処は監視のため、SINDO宅と決まっている。
そして、就職先の斡旋も受ける。働き先はお決まりのフィリピンパブである。
それでも何も分かっていない被告は健気に働き、月20数万円程度は稼いでいたらしい。

ただ稼いだ20数万円は、直ぐにSINDOが「お金の管理」という名目で全額徴収する。
そして被告に手渡された金額は、僅か月5万円。
この月5万円生活は1年程度続く。
そして、2年目を迎え、ようやく月7.5万円に昇給した。

残りのお金の行方は、SINDOから偽装結婚相手に月5万円が支払われ、
残りのすべてをSINDO夫妻が着服していた。
こうした悪行は、逮捕される3年程度続いていた。

弁護人からの被告人質問で、被告は涙ながらにこう語る。
「家族のためにニッポンで働きたかった」
「父がギャンブルに嵌り、働かなくなって自分が大学を中退せざるを得なくなったので、
下の弟や妹には最後まで勉強をさせたかった」
しかし、被告の手取りは僅か月5万円しかなかった。
それでも被告は仕送りを月3~5万円程度ねん出していた。

この3~5万円という金額は、物価がニッポンより安いとされるフィリピンでは大金になりえるのか?
(<a href=”http://philippinebusiness.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25?PHPSESSID=9235fdc97fe170c423436add83c2493e” target=”_blank”>フィリピンの物価についてのブログ参照</a>)

上記のブログから判断するに、その答えはNOである。
要は、SINDOたちに被告はカモられていただけだったのだ。
更に、被告が逮捕されたことを聞いて、偽装結婚の相手は早々に離婚をしたとのことだ。
こうして、今の被告はニッポンに滞留できる根拠すらも失ったわけである。

しかし、被告の不幸はこれだけでは終わらなかった。
続くあゆ検事からの被告人質問で、驚きの事実が浮かび上がってくる。
あなたは妊娠しているという理由で公判日時を早くしてほしいとの申出がありましたが、
その相手の父親とは連絡は取れているのですか?
「取っていません」と涙ながらに応える被告。
・・・まさかの妊娠である。
そして、あゆ検事はここで質問を止めてしまう。何とも切れが悪い。

・・・そう思っていた時、ある男が目覚めたのだった!
公判のテンポの悪さと日ごろの疲れが祟り、やや傾眠状態にあった裁判長から、
核心を突く質問が投げかけられた。
子どもの父親と連絡は取っていないのですか?
「はい、連絡先が分からない・・・」
今後はどうするつもりなのですか?
「どうしたらいいか・・・今後どうするのかについて、未だ一切考えがない・・・」
そう言いながら涙する被告。
どうやら被告の涙は、その行く末の不安で押し潰されそうになってのもののようだ。

そして、被告に対するあゆ検事からの求刑は、無情とも取れる懲役1年。
一方弁護側は情状酌量を目指し、妊娠していることを武器に執行猶予を狙う作戦だ。

いずれにしても、被告がニッポンに残る理由も資格もなくなった。
そして、ニッポンへ来たお土産として、恐らくは相手が分からない子どもを授かった。
そんな被告は、人身売買に等しきビジネスの餌食となった被害者のひとりであろう。
(了)