裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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傷害致死 控訴審

暴力の再生産

第1回控訴審。
控訴は弁護側から申し立てられたもののようである。
検察は理由なしとしており、よって何の準備もしていない。
よって、弁護側が新たに何らかの証拠を立証しなければこの請求は棄却されることとなる。

そして、いなかっぺ大将のような雰囲気を醸し出す弁護人が裁判所に求めたのは、
生憎の被告人質問であった。弁護人に何か秘策はあるのだろうか。

坊主頭にしている被告は34歳。決して若いとは言えない年齢である。
被告は、暴行・監禁罪に問われており、
他の共犯者の4名は何れも刑が確定している。
うち1名が懲役10年、2名は懲役4年、もう1名は懲役5~9年未満。
被告の刑は、この法廷では明かされなかった。

被告は、道路・建築作業などを請け負う組織で管理的な立場にあった。
しかしこの組織は、日常的に構成員同士の些細なトラブルがあったらしく、
それを管理する立場にあった被告は、若い者に対して言って聞かない時には、
「顔や上半身をゲンコツで殴る」ことを自らが手本となって示していたらしい・・・。
前近代的な指導法である。

やがて、こうした企業風土は構成員にも浸透していく。
はじめは顔や上半身をゲンコツで1~2発殴っていたものが4~5発になり、
殴っていただけのものに蹴る行為が修飾される。
次第にはヘルメットを被っているとはいえ、鉄の鋼材で殴ること、なぜか全裸で走らせること、
鍋のお湯を掛けることに、軽自動車で足を轢くまでに発展していく。
結果は1名が命を落とすといった惨事が起こってしまったのだった。

「ケガをするとは思いませんでしたか」と行われた暴力行為について、
毎回質問を投げかける弁護人に対して、
「軽く叩いていたので大丈夫だと思いました」
「そこまで(ケガに)なるとは思わなかった」
「やけどをするとは思わなかった」
「軽自動車は自分も持ち上げたことがあり、軽いのでケガをするとは思わなかった」
といった具合に、顔色ひとつ変えず応答する被告。
ただ責任を逃れたい一心で言っているのか、はたまた本当にそのように思っているのかは定かではない。
「自分の暴力はよくなかった、またしっかりと監督するべきだった」
そう語る被告の言葉からは、自らの行為を悔やみ、被害者に対して申し訳ない気持ちで一杯といった
反省の色を微塵も感じることができなかった。

確かに日本は三審制であり、控訴をすることは認められる。
しかし、なぜ被告は控訴をしたのだろうか。
その真意をはかりかねる控訴審であった。

これでもし罪に問われないといった事態が起これば、
被告はその誤った信念を変えるきっかけを失い、再び違った形となって表出するだろう。
被告には閉鎖的な空間で、長い時間を過ごして頂きたい。
そして、自分の犯した罪を大いに反省し、今後の生き方について大いに悩んでほしい。
そう願う同世代のUNICOであった。
(了)