裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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生活保護不正受給

まやかしは人の華(結審編)

生活保護法違反で起訴されているカーネルサンダース被告裁判の続編。
いよいよこの裁判も大詰め、検察からの被告人質問だ。

 

◇   ◇   ◇

 

しかし・・・淡々検事は

「質問はありません」

と呆気なく本人質問が終了となった。

見兼ねた裁判長、堪らずに質問を投げかける。

「手紙は書いたの?」
「はい、そして弁護士の先生に届けてもらいました」
「今回何がいけなかったの?」
「気持ちが甘かった」
「判断が甘かったと思うのですね?」
「はい」
「今後はないの?」
「はい」

結局、今一つ盛り上がりに欠けることとなったのだった。

 

こうして裁判は淡々と進み、この淡々裁判の最大の立役者である
淡々検事が論告求刑をはじめる。
「被害金額は150万円と多額であり、また継続的、常習的であり、
また全く収入がないわけでもなく、生活保護の支給額を上回る収入があったことも悪質である。
また役所に対して申告したのはあくまで本人でありクルマダニではない。
現在も高利の借金があり、被害金額の回復は難しいこと、
1年半の長い期間を不正受給していたことなどを考慮して、
懲役1年6か月に処するのが妥当と思料します」
これまた驚くくらいの早口でまくし立てたため、なかなか迫力はあったが・・・。

そしてメット弁護士からの陳述。
「罰金刑を望みます。現状は憲法25条の人間らしい尊厳の維持も難しい状況であって、
また今回の生活保護不正受給も業者にそそのかされたものである。
市に対しても不正分は分割弁済の意志もあること、
また次の職場もリサイクルショップでの雇用が決まっており、
見通しも立っていることなどを考慮して、罰金刑をお願いしたい」
なかなか強い調子であった。

最後に、カーネル被告。
「この度は多大なるご迷惑を掛けてしまいまして、申し訳ありませんでした」

予想外にも言葉数が少なめで驚いたまま閉廷となった。
◇   ◇   ◇
この裁判の判決を傍聴することはなかったが有罪判決になることは明白であろう。
ただカーネルも年を取っており、どちらかと言えば弱者に位置する人であることを
考慮すれば、メット弁護士の意見を取り入れて罰金刑を選択したくなるのが人情ではなかろうか。
(了)

まやかしは人の華(被告は語る編)

生活保護法違反で起訴されているカーネルサンダース被告裁判の続編。
いよいよこの裁判も大詰め、被告人質問の時間だ。

 

◇    ◇    ◇

 

そして、メット弁護士がぼそぼそと質問をはじめた。

「今回の犯罪は軽いと考えていますか?」
「いえ、重い罪だと思います」
「なぜそう思うのですか?」
「今回犯した事件は不正受給・・・生活保護を騙し取ったものなのでどうかと思います。
また損害金額も148万7990円にのぼり、
他に生活保護を受けなければならない人に対しても迷惑を掛けてしまいました」
「今はどう考えているの?」
「本当にやってしまったことながらお詫びをするしかありません。
これをきっかけに真面目に生活をしていきたいです」
と、どこか他人事のように話すカーネル。

「今回事件を起こした経緯は?」
「仕事を一生懸命にやっていましたが、働いた中からピンハネをされ、そして車のリース代、
そこに経費を払っていたのでとてもじゃないが生活ができなかった」
「引かれる前の金額は?」
「多い時で12万円、少なくて6万円・・・。
その時オーナーの○○さんより『生活保護を貰って働けばいいのではないか』
『もし気持ちがあるのならばよく知っている人を紹介するよ』と言われて・・・お願いをしました」

「クルマダニとはどのように知り合りました?」
「NPOの人という紹介を受けました。×××(法人名)の人です」
「クルマダニから何と言われました?」
「働きながらでももらえると。面倒な手続きなどがあればやってあげると言われました」
「その時におかしいとは思いませんでしたか?」
「少しは思いました」
「クルマダニにそのことを質問しましたか?」
「一応、聞こうという気持ちはあったのですが、とても言える状況ではなかったので・・・」
とても言える状況ではないとは、一体どんな状況なのだろうか。

「手続きは?」
「クルマダニの指示通りに進めました。役所にはクルマダニも一緒に来てくれ、
役所の職員もクルマダニと話をしていました」
「生保のために○○→△△へ移住したのですか?」
「クルマダニから『生活保護を貰うためには**へ来いと言われました。
その時はちょうどオーナーとも上手くいっていなかったので・・・」

「なぜ△△なのですか?」
「よく知らない・・・移る気はなかったのですが・・・」
「理由は?」
「生活保護は△△じゃないと出ないと言われたもので」
「なぜ?」
「あまり聞ける状態ではなかったので・・・」
カーネルは脅されたのか。そんなことはないはずだ。

「クルマダニは△△への申請時、同行しましたか?」
「はい。同行して、クルマダニの指示通りにしました」
「役所へ嘘の説明はあなたがしたのですか?」
「クルマダニの指示に従ってやりました」
「所得の申告は?」
「それも含めてクルマダニのすべて指示通りにやりました」
どうやらカーネルはすべての責任をクルマダニに転嫁する気のようだ。

「その時、クルマダニのことをどう考えましたか?」
「よくやってくれて・・・神様みたいな人だと思いました」
「見返りは?」
「はじめはボランティアの形だったが、生活保護を貰うようになってから、
4万円/月の手間賃を要求されるようになりました」
「それを支払ったのですか?」
「はい」
「今クルマダニのことをどう思っているのですか?」
「警察の方にも言われたのですが、騙されたのだなぁと思っています」

神様のような人・・・そんな人は居ない。
そして、カーネルは現実の問題として、そして今、こうして現実のこととして、
裁判を受けることとなっているのだ。

 
まやかしは人の華(結審編)へ続く

まやかしは人の華(証人喚問編)

生活保護法違反で起訴されているカーネルサンダース被告裁判の続編。

メット弁護士が情状証人として召喚したのは、通称「タイルおばちゃん」だ。

 

◇   ◇   ◇
「被告との関係は?」
「内妻関係です」
恋に年齢はない。タイルおばちゃんも年の頃60歳前後だ。

「いつから(内妻関係)ですか?」
「1年半~2年ほど前で・・・古紙回収の時に知り合いました」
出会いは突然のようだ。

「この時被告は生活保護を受給していましたか?」
「確か未だだったと思います」
しかし、タイルおばちゃんのこの回答は、メット弁護士の予定に反したものであったのだろう。
この後、両者でヒソヒソと打ち合わせをし、タイルおばちゃんは証言を撤回、
「被告が生活保護を受給したのは証人と知り合う前であった」と訂正されることとなる。

「今回の事件を聞いてどうでしたか?」
「びっくりしました。そしてどうしてもっと早く気付かなかったのかを反省しました」
「もしあなたが不正受給のことを知っていたらどうしましたか?」
「自分が説得して、それで止めさせていたと思います」

「被告の普段の仕事ぶりはどうですか?」
「一生懸命する人です」
「普段の金遣いはどうですか?」
「無駄遣いをしません」

「今後は?」
「できるだけ被告と一緒に住みたい。そしてしっかりと見守っていきたいと思っています」
「社会復帰後は?」
「友人の○○氏に今の仕事を任せているので、仕事のお願いをしようとは思っています」
「今後被告が何らかの犯罪にかかわることがあったらどうしますか?」
「絶対に許しません。一緒に暮らす自分が見守っていきます。
今自分はペースメーカーを入れて、今の年金を頂くまでに生活保護を貰っていた
ことがあるので、自分は生活保護に助けられた。
だから生活保護には感謝している。だから・・・被告を見守っていきたい」
「今後犯罪を起こさせないための対処はありますか?」
「自分が被告と一緒に住んで、一緒に居ながら見守っていきます」

その後、淡々検察からはタイルおばちゃんへの質問はなかった・・・。

 
まやかしは人の華(被告は語る編)

まやかしは人の華(裁判概要編)

この日傍聴した裁判は「生活保護法違反」。
言い換えれば、昨今社会問題となっている生活保護の不正受給に関するものだ。

はじめにこの裁判に登場する人物を紹介したい。

まずは被告。カーネルサンダース被告と名付ける。

次に弁護士。
まるでヘルメットみたいな髪型だったので、
メットシューマイ弁護士とする。

検察は、以前にも登場した淡々検事。

そして、この裁判を仕切るのが矢印裁判長だ。
◇  ◇  ◇
はじめに淡々検事から起訴状の朗読が淡々と行われた。

被告は、古紙回収業組合に登録をしており、
そこから毎月給与がありながらも、○○市から生活扶助費
4月~1月までの計12回、148万7,398円を
収入がないものと虚偽の申告をして、振り込ませたというもの。
塵も積もればである。なかなかの金額だ。

起訴状に対して、特に異論を述べない弁護士サイド。
こうして裁判はそのまま冒頭陳述へと進んでいく。

 
まやかしは人の華(冒頭陳述編)へ続く