裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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置引き

時に孤独は人を饒舌にする(結審編)

窃盗を繰り返すイソクラゲ被告の裁判の続き。

続いては無骨検事からの被告人質問。

「事件を起こした理由は?」
「分からない」
「パチンコに負けた腹いせなの?」
「強いて言えば・・・」
「犯行前に周りをキョロキョロしていたようですが?」
「いやキョロキョロはあまりない・・・ないです」

「忘れ物だと思ったの?」
「大事なものかなぁ?と。足元に置いてあったので」
「腹いせとありましたが、それですっきりしたの?」
「いや何も考えずにやってしまいましたので」
「常に探していたのでは?・・・警察では金目のものを盗る目的でと話している。
ということは警察の調書にはあなたが話していない内容が書かれているということですか?」
「あなたは盗み癖があるのと違うかと言われましたので仕方ないかなぁと」

「警察がねつ造したと?」
「半々です」
「検察の話は?」
「概ね合っています」
「事件を起こした原因が分からない?」
「はい」
「またやるのでは?」
「それはない」
「何で?」
「分からないですが、今回で懲りている」
「前回はどうたったの?」
「懲りている」

「今度やらないという根拠は?」
「10年来ぶりに子どもたちと関係が持てるようになったこと、
それに電気屋の方が社会復帰を申し出てくれているので裏切れない」
そう話ながら涙を流すイソクラゲ。

「何でカプセルホテルに行ったの?」
「お金がなくなるまで最後にぱっと遊びたいと思いました。
東尋坊までの旅費は残りが2万円くらいになったら行くつもりでした」

やはり釈然としない裁判長からいくつか質問が続く。
「何で事件を起こしたの?」
「分からない、パッといってしまう。
改めて考えてもよく分からない・・・反射的に持って行ってしまう」
「今後改善していけるの?」
「今後また同じようなことをしたら死ぬような罰をお願いしたい」
「それは無理ですね」
「次は死が待っていると思ってやり直したい」

どうやらイソクラゲの決意は固いらしい・・・。
◇  ◇  ◇
そして求刑。

犯行は自分勝手なもので情状の余地はありません。
また犯行は大胆であり、被害額も軽微ではありません。
被告はこれまでに前科6犯を有していますし、
今回の犯行は出所後2年8月後の犯行である。
そして盗癖もあり再犯の可能性は高い。
相当期間強制施設への収用が必要です。
求刑ですが懲役3年6月を相当と思料します。
弁護士からの最終陳述。

被害者がリュックを置いて30秒後の犯行ではありましたが、
被告はリュックを捨てていると思った。
また犯行前は子どもとの連絡を絶っていた。
その部分は修復しており、再犯の可能性は低いと考えられますのでぜひ寛大な判決を。
そして、イソクラゲ被告の最終陳述。

「本当に迷惑をお掛けしました。
被害者の方には特に迷惑をおかけしました。
ただ今回の裁判で家の者が証言に来れなかったことは情けない限りです」
こうして、結審を迎えるのだった。

 

◇  ◇  ◇
結局、この裁判の判決は見に行けなかったが、
被告はどうなったのだろうか。
UNICOとしては、窃盗の累犯は繰り返すというジンクスと、
イソクラゲの最終陳述の家族への恨み言を考慮すると、
十分に再犯が考えられるので、やはり検察の意見を支持したい。

 

(了)

時に孤独は人を饒舌にする(被告人質問編)

窃盗を繰り返すイソクラゲ被告の裁判傍聴録の続き。

まずはキノコのこの子元気の子弁護士からの被告人質問。
「この手紙はあなたが書いたものですか?」
「はい」
「手紙はどのような気持ちで書きましたか?」
「大変申し訳ない気持ちです。
出所後にお世話になったのに・・・。
今回、分からないうちにこのような
事件を起こしてしまい・・・」
「分からないとは?」
「真っ白になってしまって・・・」

「足元にリュックが置いてあったのですね?」
「はい。自分はよその台で遊んでいて、出ている回数を見ている時に
荷物に気付いて・・・『置き忘れたのかな』と思って。
それで腹いせにやってしまったのかなぁと思います」

「盗みだとは分かっていましたか?」
「はい」
「お金を盗る目的ですか?」
「それはないです・・・負けてむしゃくしゃしていました」
「盗みだとは分かっているのですね?」
「はい、ただそうとしかない・・・未だに原因は分かりません」

「事件を起こす前、もう人生を諦めていた?」
「はい、生活保護を貰っていましたが、
もう居ても立ってもいられなくなりました・・・
孤立死になるのではないかと思い、自殺しようと思っていました」
「遺書は書いたの?」
「はい。それで東尋坊へ行って飛び降りようと思っていました。あそこならば死体もあがらないので」

「平成22年に仮出所した後、窃盗したことは?」
「ないです。生活保護を貰いながらパートにも行っていましたので」
「ずっと生きていこうと思っている?」
「孤独死がどうしても・・・死んだらリセットできるのではないかと。
孤独に堪えられませんでした・・・」

「今後は?」
「やはりなんべんも同じことを言っていますが、もう繰り返したくない。
子ども、孫にみとられて死んでいきたい」
「『重い刑にしないでください』と被害者も言って下さっていますが?」
「いや、犯した罪なのできっちりとやりたい。そして今度こそ前向きに生活したい」

それにしてもよく話す被告だ。
こうして何とも釈然としないまま弁護士からの被告人質問が終了する。

 
時に孤独は人を饒舌にする(結審編)へ続く

時に孤独は人を饒舌にする(前編)

法廷にはイソクラゲのような被告が登場した。
イソクラゲが問われている罪名は、常習累犯窃盗罪。
10年間に3回以上、窃盗や窃盗未遂にあたる行為で
懲役刑を受けた者が新たに罪を犯すと成立し、
3年以上の有期懲役に処せられるというものだ。

無骨そうな検察からの起訴状の朗読を聞いてみる。
某有名パチンコ店において、遊戯台の足元においてあった
タブレット入リュックサック、2万7632円相当を持ち出し、
個人ロッカーへ入れた後に持ち去ろうとしたところを逮捕されたというものらしい。
被告とキノコの子は元気の子弁護士ともに事件を認めている。

そして、裁判はそのまま証拠調べに進む。
◇  ◇  ◇
まずは被告の身上・経歴から。
被告は61歳。現在無職で住所不定。
住所不定となったのは家賃を払えなくなったためであるとのこと。

大学卒業後鉄工所に勤務。その後職を転々とした後、衣料品販売店を経営。
これまでに離婚歴があり、前科は6犯。
うち1件については罰金に処されている。
平成15年に窃盗で懲役1年、平成17年には窃盗で懲役2年、
平成18年には累犯窃盗で懲役2年6月に処されているが何れも執行猶予付の判決が下っている。
平成20年4月にも累犯窃盗で懲役2年6月の判決が下り、この時は実刑となった。
その後平成22年に仮出所となっている。

今回の事件の経緯。
現在は年金暮らしで慎ましやかに暮らしていたが、
ある時「派手な生活をしたい」と思うようになり、
年金から金を捻出してカプセルホテルでの寝泊まりをしていた。
その後同パチンコ店でスロットを打ったのち、
被害者が席を取っておくためにリュックサックを置いていたものを
「金になるかな」と思い、今回の犯行に及んだというもの。

既に被害者との示談は成立しており、
被害者は「厳しい処罰は止めてあげてください」と言っているとのこと。
なお前回の裁判では「もうしません」と言っていたらしい。

なかなかダークな過去を持つイソクラゲのようだ。

 

 

時に孤独は人を饒舌にする(被告人質問編)へ続く