裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

3

脅迫

その男、凶暴につき(完結編)

(完結編までのあらすじ)

素行の荒い被告を守るべく、平成ノブシコブシの吉村似の弁護人が、
お決まりのパターンである証人喚問までを使って、被告人質問までを無事に終えた。
一方無駄な時間を付き合わされて、不愉快な表情で被告人質問をはじめる検察官。
ノブコブとの違いに注目だ。

—————————————————————————

>過去にも娘さんに暴力をふるったことはあるの?
といきなりのため口で質問をぶつける検察、強気の攻めである。
「一度決めたルールを守れなかった時に、叱ってそのまま暴力を振るったことはありました」
と検察からの挑発に対して無難な回答をして迎え撃つ被告。練習の成果が出ているようだ。

>今回も傷害罪を犯していますが、口だけでなく何で暴力をふるうの?
「その日はいつも以上に腹を立てたのだと思います」
>なぜその日は腹が立ったの?
「帰宅時間が遅くなることがはじめてではなかったし、
電話を掛けても繋がらなかったことがその理由だと思います」
>上の娘さんが被告はこの日も酒を飲んでいたと思うと言っていたが実際に飲んでいたの?
「飲んでいたと思います」
>あなたは頭部を平手で殴ったあと、うずくまっていた娘さんに対して何で蹴りを入れるの?
「しつけではないですが・・・いやしつけでもいけないことだとは分かっていたのですが、つい・・・」
>娘さんは16歳、それも女の子ですよね。体格差がありますよね?
こうなることくらい想像はできなかった?
「はい、この時は・・・」と予想外に攻め込まれ、セリフが完全に飛んでしまった被告。
>しかも玄関という場所はいろいろあるよね?
何かにぶつかけてけがをすることくらいは想像できなかった?
「こんなにひどいけがをするとは思わなかったので・・・」
>右腕の傷は、加療2週間以上の傷が残ったよね?
それに出血までしていたよね?
何度も「やめて」と言っていましたよね?
「はい」
>なのになぜ止められなかったの?
「・・・その声が自分には届いていなかったのだと思います」
一気にまくし立てる検察、これはすごい。

>次に脅迫の件ですが、客引きの人があなたに何かしたの?
「いや、普通に客引きをしていました」
>何て声を掛けられたの?言ってみてください。
「・・・お兄さん、マッサージいかがですか」
>何でそれに腹が立つの?
「・・・自分は客引きをされるのが嫌いだからです」
>嫌いだからと言って、何でいきなり中国に帰れと言うの?
「・・・・いや」
ここまで来るとKO寸前だ。
>なぜ文言を消す必要があるの?
「・・・・」
>必要ないよね?
以前にもあなたは酒を飲んで、家の近くの工事現場の音に腹を立て、
クレーン車をめがけて鉄アレイを投げたことがあったが、その時も酒を飲んでいたよね?
「はい」
>その時と今回と同じじゃないの?
「・・・前回とは別の腹の立ち方です」
>何が違うの?
「・・・・・」
>なぜ前で酒を止められなかったの?
「・・・・自分の欲を抑えることができませんでした」
>前回と今回とで何が違うの?
「・・・・・・何も変わらないですが、今度こそこんな事件を二度と起こさないようにと思っています」
>終わります、と告げる検察の顔からは「完全勝利」の文字を読み取ることができた。
それにしても検察の攻めは厳しかった。
よほど「文言を消せ」という要求に腹が立ったのだろう。

結局検察からの求刑は、懲役1年6か月。
対する弁護人からの情状は執行猶予ねらいだった。
結果は、火を見るよりも明らかだろう・・・。

—————————————————————————

経験値の差が出たとしか言いようのないやりとりであった。
ノブコブは若かったため、攻め方に幅がない。
一方検察も若い人物であったが、文言の削除要求があって、
折角仕上がっていた書類をまた訂正しなければならなくなったことに対する苛立ちが、
最後の被告人質問に出ていたあたりは人間味があって見ごたえがあったように思う。

UNICO裁判官の勝手な判決は、検察の求刑を採用して、
懲役1年6か月、執行猶予なし、としたい。
(結)

その男、凶暴につき(前編)

UNICOの目の前にいる大男である被告は、
高校卒業後に建設、建築業を転々とし、現在勤める建設会社にたどり着く。
被告には離婚歴があり、現在娘2人と同居している。

被告には前科があり、計5犯。
うち今回起訴されている脅迫と同種の犯行が2件ある。
前刑は、家の近くで工事をしていた音がうるさいことに腹を立てて、
工事車両であるクレーン車をめがけて2Fから鉄アレイを投げたらしい。
そして今回、脅迫に傷害を引っ提げて、再び法廷へと舞い戻ってきたわけである。

一体この度は、どんな凶暴な行為をふるったのだろうか。

2つの罪に問われているので、まずは傷害罪より。
高校生になる次女がアルバイトへ行くようになり、その帰宅時間が遅くなっていた。
そして事件の当日は、次女の帰宅時間が頗る遅くなっていた。
そこで次女が帰宅するや否や、業を煮やした被告が、
いきなり玄関において、次女を手の平で頭部を数回殴打する。
先ほど書いたが、この被告は大男である。
男であるUNICOでも、被告に殴られたら間違いなくうずくまるであろう。
しかし、この被告の怒りはこれではおさまらない。
うずくまっている次女に対して、更に顔や腕を数回蹴り飛ばしたところ、
次女がその勢いで玄関ドアに左ひじをうち、出血した。
診察の結果は、加療1週間。ただ事件から1か月以上経過した
今も未だ完治はしていないとのことだ。
そして、殴打された次女はそのまま家を出て行ってしまい、
そのまま帰宅することがなかったとのことだ。

次女の気持ちが痛いほど理解できる。
恐らくは、危機管理能力が働いたのだと思われる。
あの大男の被告が怒っているのならば、生命の危機を感じたとしても、
決して過言ではなかろう。

次に脅迫罪はというと、
被告が何か食べようとして路上を歩いていたところ、
客引きをしている中国人の被害者(37歳)から声を掛けられる。
よくある話だ。
しかし、被告は声を掛けられるや否や、
いきなり「中国に帰れ!」などと言いながら、
ワイヤー錠を振り上げながら被害者を追い回し、
危害を加えかねない様な行為を取ったというもの。

のちに被告の供述には、
「連日の中国に対する報道を見て、悪い感情を持っていたのに加えて、
家庭内のうさも重なっていたため、イライラしていたためにやった」
とのことだった。

被告に丸腰で目の前に立たれただけでも十分迫力のある被告が、
武器を携えて、追っかけてくる絵を想像しただけで十分にホラーである。
その男、凶暴につき(中編)に続く