裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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自動車運転過失致死

引き寄せる宿命(前編)

業務の運転中に交通事故を起こし、不本意ながら人の命を奪ってしまった被告。
一方、店を任せて貰い、結婚を控え・・・と、これから人生の絶頂期を迎える、
まさにその前に命を失ってしまった被害者。
この事故は、双方がこれまでに築きあげてきたものが一瞬にしてひっくり返ってしまったのだ。

そんな自動車運転過失致死という言葉に含まれた、重い裁判の続編。
+  +  +
検察の冒頭陳述が終わり、続いて、弁護士が情状証人として呼んだ
被告の妻への証人質問。

「被告とは平成10年に結婚したの?」
「はい」
「それでいつ離婚をしたのですか?」
「3年ほど前です」

「現在被告と一緒に住んでいますか?」
「はい、子どもと一緒です。中3の長男と小3の次男と一緒です」
「今後はどうするつもりなのですか?」
「子どものことを考えて、両親が揃った家庭がいいかなぁと思っています・・・
それで籍を入れる予定だったのですが・・・事故があって先延ばしにしています」
ここにも事故で人生が狂った者がいる。

「あなたは何か仕事をしていますか?」
「塗装会社で、パートに指示を出して会社を動かしています」
「収入は?」
「月に18万円程度です」
「今日裁判所に来るために会社はどうしましたか?」
「今日は一時的に抜けてきていますので、また後で戻ります」
これで被告、子どもの収入は最低限度確保されていることの立証になった。

「被告の性格はどういった感じですか?」
「仕事に対してはずっと真面目、常に仕事を考えてばかりいます。それでも家のことはしてくれます」
「家庭でも仕事のことを考えているのですか?」
「はい」

「早朝に事故を起こしてから連絡はありましたか?」
「自宅に連絡がありました」
「それを聞いてあなたはどう考えましたか?」
「すごくびっくりはしました」
「それで被告が帰ってきた、その時の様子は?」
「すごく落ち込んでいる様子で、どう声を掛けたらいいか分かりませんでした」

「それから半年程度経過しましたが、被告の様子はどうですか?」
「以前に比べると言葉数も少なく・・・」
「事故のことは子どもは知っていますか?」
「上の子は知っています。ただ下の子には耳に入らないようにしています」

「被告の勤務時間が22時~3時の勤務ですが、家庭で問題になりませんか?」
「被告は自分が行く時間帯には帰ってきますので、子どもは常に大人が居るのでいいかと思っています」

「被告は事故後に車の運転はしていますか?」
「殆どしていない」

「被告は運転手を止めると収入が減るのでは?」
「月に10万円程度減りました」
「被告が今後このような事故を犯さないようにあなたは何か努力をしていますか?」
「いつも気を付けるように言葉掛けをしています」

辛い事実である。誰も何も得をしていない。

 
引き寄せる宿命(中編)へ続く