裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

3

裁判 膨張

ノルマと恋心の間(中編)

ネットで知り合った女性に対して、200万円のパールネックレスを
売りつけようとして、強要未遂で逮捕、起訴された男爵。

裁判は、昭和風情を感じさせる弁護人からの立証がはじまった。
昭和風情弁護士が提示した立証方法は、
被告人質問、そして情状証人、その後に被告人質問だった。

まずは、昭和風情からの被告人質問。
「反省している?」「はい」
「間違いない?」「はい」
「物品販売の従業員として働いていたようですが、売り上げのノルマがあったの?」
「いいえ、ありませんでした」
「やりすぎたのは分かる?」「はい」
「日ごろから強引なところがあることを理解している?」「はい」
「金目的以外に親しくなりたい、契約して貰い親しくなりたいと思った?」「はい」
「取り調べで素直に言えないこともあったがそれは、
過去に少年刑務所へ行った時のことを思い出し怖かったの?」「ありました」
これで被告の素直さを押し出す方法はうまくいった。

次に検察からの被告人質問。
「取り調べ中に脅迫をしていないと言っていたのは間違いないですね?」
「間違いありません」
「被害者に買ってほしかったの?」「はい」
「被害者に自分は少年院にも行ったことがあることを言っていたようですが何で?」
「自分の生い立ちのことを知ってもらいたかった」
「被害者にどう思って貰おうとしたの?」
「自分の過去を知って貰おうと思って・・・」
「怖がるよね?」
「その時はそう考えなかった」
「今後被害者には?」
「一切かかわりません」
このタイミングで昭和風情が口を挟む。
「過去を言って自分のありのままを知ってもらいたかったんやね?」「はい」
ナイスフォローだ。

そして、ミスジャポネからの質問。
「捜査の時と違うことを言っている理由は?」
「刑務所に行きたくないと思いました。最初からきちんと言えば良かったです」
「それで罪が重くなるとは考えなかった?」「はい」
「疚しさは?」「あった」
「親しくなりたいのになぜ脅迫をするの?」
「力んでしまったというか表現が違ったというか・・・」
「優しくした方がいいと思うがなぜ今回のような行動になったの?」
「宝石を売りたいという思いがあって、力が入ってしまった」
「途中で売りつけたいが勝ったの?」
「はい」

同じ事件のことについての質問だが、立場によって全く切り口が違う。
これが被告人質問の醍醐味であろう。

 

ノルマと恋心の間(後編)へ続く

ヤクザの花道(後編)

今のご時世、ヤクザ稼業はそう楽ではないようだ。
ダイアン検事からの被告人質問だ。

「今度暴走族を見付けたらどうしますか?」
「やっつけようと思います」
威勢のいい回答を口にする被告。正直な人だ。

「どんなふうにしてやっつけますか?」
「口で言って分からなければ、叩いて、殴って・・・向こうも悪いので。
近所にも迷惑を掛けているので・・・」
「その時は違法になるのでは?」
「その時は・・・今はもうないです」
検察の誘導にまんまと引っ掛る被告。

「また今度暴走族が事務所の周りに来たらどうしますか?」
「事務所の中では、誰も見回りはしていない。
個人的に自分が頭にきてやっただけなので・・・」
素晴らしい組織愛である。

「棒ですが、たまたま持っていたらしいですね?」
「いつもはあんなものを乗っけていない」
それでもこの日は積んでいたのだ。

「たまたまあって、それを手にした?」
「はい」
「ヤクザが怒るの?」
「誰でもあれは怒りますよ」
何とも挑発的な質問だ。

「今後は?」
「優しく注意します」
「ヤクザは辞めないの?」
「ヤクザは職業じゃないので辞めれない」
「暴力団ですよね?」
「暴力団とは違う。暴力団は仕事も世話をして貰えないので生活ができない。
堅気の人で仕事の世話をしてくれる、そんな人居ますか?」
「ハローワークでも行けばいいのではないですか?」
「そうですか」
ヤクザがハローワークへ行く・・・ある意味面白い題材かもしれないが。
やはり検察も公務員だと思わせる貧困な発想力をあらわにして、被告人質問を終えた。
◇  ◇  ◇
チープな発想力のダイアン検事からの求刑は懲役1年。
これに対して、イグアナ弁護士からは、
凶器を示したが、刃はないものであること、
言った言葉も「お前らどこのものや」だけであることを挙げる。
また女性は同乗者に送らせており、当然さらってもいないこと、
何より被害者が「恐怖を感じた」と言っているが、
被害者の証言の中で、「何しているんですか、そんなん持って?」
とあり、このやりとりからも怖がっていないことは明白であることを挙げる。
そして、飲酒についても挙げ罰金刑を主張するのだった。

最後に被告からの最終陳述。
「もう酒と棒を持つのは止めようと思っています」
この言葉には、ヤクザがマークされていることの実感がこもっていた。
◇  ◇  ◇
この事件は、明らかに被告が嵌められたケースと考えて相違ないであろう。
やはり国家権力を敵に回すと何かと厄介である。
それにしても、被告が「ヤクザは職業ではない」と言ったのは、
ヤクザは「職業ではなく生き方なのだ」と言いたかったのだろうか。
個人的な意見だが、この被告については罰金刑が相当なのではと感じるUNICOであった。
(了)

ヤクザの花道(中編)

暴力行為等処罰に関する法律違反で逮捕、起訴された被告。
ダイアン検事が読み上げた起訴状を聞く限り、
大した罪には問われないと思ったが・・・注目の被告人質問、まずはイグアナ弁護士から。

イグアナ弁護士は、この日の裁判に備えて書証を準備、
被告人直筆の反省文2通と内妻からの嘆願書である。
そのことを告げた後、被告人へ質問をぶつけていく。
+  +  +
「調書の内容は大凡そんなところですか?」
「大凡そうなっています」
「少し前に同じ場所でもめたの?」「はい」
「それはなぜ?」「自分が酒を飲んで絡んだだけです」
「今回事件を起こしたのは暴走族を追い散らそうとしただけ?」「はい」
「1週間くらい前から見回りをしていたの?」「違う、酒を飲んで、それで・・・」
冒頭陳述の内容とは話が食い違う。

「被害者に対しては?」
「道の真ん中を歩いていたので、クラクションを鳴らした」
「最後は避けたがあなたは車から降りたの?」
「はい、そして木の棒を持った」
「何に使うの?」
「グランドをならすトンボの先の折れたもの」
「何のために?」
「積んであったので、それで」
そんなものを普段から積むことはないだろうが。

「用途は?」
「掛かってこられたら叩くためです」
非常に潔い、やる気満々の回答である。

「被害者にはどのような言葉を掛けたのですか?」
「どこの奴や」と聞いたら「○○です」と答えたので「じゃぁ、いいよ」と言いました」
「それだけ・・・何でこうなったのか経緯を教えてください」
「男2人に声をかけたら女も居て、暗くて分からなかったが、
女を見ると知り合い・・・自分が行くカラオケ店の店員だった」
「その女性に対しては?」
「普通に話して、帽子が脱げそうになっていたのでかぶせてやって「送ろうか」と言いました」
「何で?」
「雨が降ってきたので、それで送りました」
「そうしたら被害者の男2人はあなたにさらわれたと思って、
110番通報をしたのですが・・・それだけですよね?」
「はい」
女性は嫌がっていたのだろうか、それとも怖がっていたのだろうか。

「警察で一連のことを話しましたか?」
「話しました」
「今回のことをどう思っている?」
「いろいろな人に対して迷惑を掛けたので・・・この時も酒を飲んでいたので今後は止めようと」
「被害者に手紙を書きましたか?」
「今後一切何もしませんと書きました」

「内妻に子どもが生まれましたね?」
「去年の7月に生まれました」
「どんな風に考えているの?」
「▲▲へ行ったりしながら支えていきたいと考えております」
「内妻から手紙は?」
「来ている」
「内妻に生活費は?」
「月に10万円程度送っている」
「今はどうしていますか?」
「送れていない」

「内妻が大変なことは分かっているよね?」
「はい」
「気持ちは分かっているよね?」
「はい」
「今後は?」
「何でもして・・・」
「仕事はどうするの?暴力団なら自由にできないよね・・・どんな風に考えている?」
「暴力団をやっているから雇ってくれるところもあるので」
「どんなところ?」
「どかたでも何でも」
「それで収入を得て仕送りをするの?」
「はい、約束します」
「確か前にも一度酒を止めると言っているが?」
「はい、今度こそ迷惑を掛けたのできっぱりとやめます」
「なかなか信用できないが?」
「できます」
+  +  +
こうしてイグアナ弁護士は質問を終えた。
今回のような明確に結果が残らない事件では判断が難しい。
決してヤクザの肩を持つ訳ではないが、
被告のようなヤクザをやっている人にとってこのようなザル法は、
状況証拠の積み重ねだけで、逮捕されることとなる。
恐ろしい・・・。

 

ヤクザの花道(後編)へ続く

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(結び編)

過去に2度の覚せい剤使用で裁判を受けている被告。
今回もまた同じ覚せい剤取締法違反で裁判を受けることとなった
追い込まれた状況にある被告の決意から出た言葉――もう2度とやりません。
本当にもう2度とやらないのか。
その言葉を信じていない軽石検事からの被告人質問がはじまった。
+  +  +
「覚せい剤を使う時にお母さんの顔は浮かばなかったの?」
「使った後には浮かびました」
「覚せい剤を使う時に自分が執行猶予中であることは分かっていたの?」
「はい」
「どうなるか分かってる?」
「前の年数と今回の年数を足した年数を刑務所の中に居ることになる」
「それを分かってて使ったのですか?」
「はい」
そこまで分かっていても止められない覚せい剤――。
それが覚せい剤なのであろう。

「どうしたら覚せい剤を止められると思いますか?」
「本当にもう母も年だし・・・。
これまでに親孝行ができていなかったので今後がそれをやっていきたいと思います。
次またやってしまうということは、母を殺すことと同じなので・・・」
この質問で勝負が決まった。
直前の質問では「母の顔は覚せい剤を使用する前には思い浮かばず、使用後に浮かんだ」と
自分の口で言ったばかり。
被告は覚せい剤を前にすると頭の中には大事にしている母の顔すら浮かばないのだ。
これは言い換えると、覚せい剤を目の前にすると、
もはや精神論ではストッパーにはならないことを裏付けているためだ。

「婚姻していますよね、その同居生活中、昨年に逮捕されていますよね?」「はい」
「何で?」「はい」
「覚せい剤?」「はい」
「今後はどうするの?」
「母の所で旦那と一緒に過ごします」
それを聞いた母親はどう思っただろうか。

「過去に覚せい剤を使っている人と付き合ったことはありますか?」「あります」
「その影響は?」「ないです」
そんなことはないはずだが・・・。

「強い覚悟がいるとは思いますが?」
「旦那も母を二度と裏切れないと言っておりますし、
また一緒に親孝行をしようと言ってくれているので・・・」

ここまででほぼゲームオーバーの被告に対して、
裁判長が更に追い込みを掛けるのだった。
「旦那も服役しているの?」
「ちょっと分からない・・・手紙でやりとりをしているだけなので・・・
未だ裁判をしていないような・・・」
「何れにしろ、もう一生覚せい剤を止めて旦那と一緒に暮らしたいというわけやね?」
「はい」
「娘が覚せい剤を使う親の気持ちはどんなんでしょうね――、
さっき今度やる時は母を殺すのも同じことだって言っていましたね?
甘えているのではないかな・・・甘え過ぎていると思いません?
「・・・・・・」
「せっかくそれなりに仕事にも就いていて・・・、
それが原因でやったというのは通らないでしょうが。
人間関係もきつかったようだけど、他の方法はなかったの?」
「そこまでは・・・」
「誰かに相談とかは?」
「いつもしていた人が居なくなってしまったので・・・」
「それでも覚せい剤に逃げたらだめだよね・・・。
仕事は2、3年は続けていた訳だし、簡単に覚せい剤に走ってしまったことを
今後よく考えて、出所後はもうしないようにね」
「・・・・・はい」
こうして実刑は確定したのである。
+  +  +
その後裁判は、軽石検事から「刑務所に入って専門教育を受ける必要性」が論じられ、
懲役2年6か月の求刑がなされた。
モンチーパンチからは「寛大な措置を希望します」だけに止まり、万時休す。
それでも被告からは「本当にこれで最後にしたいと思っています」
と述べられて、裁判は結審を迎えるのだった。
+  +  +
この裁判を傍聴して、つくづく覚せい剤は、
一度やってしまうと自分の意志では到底止められないことを痛感させられた。
それでも、やってしまったことは今更戻れない。
だからこそ、現状での善処は「施設内での更正」しかないのだろう。
しかし出所後、再び娑婆に戻った時、同じ覚せい剤を使用していた旦那の顔を見て、
それが止める救いとなるのだろうか。非常に危ういものだと感じるUNICOであった。
(了)

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中後編)

過去にも2度覚せい剤を使用して、覚せい剤取締法違反で裁判を
受けてきた40歳の被告。
それでもこれまでの2回はどうにか執行猶予付の判決を勝ち得て、
実刑を免れてきたが、今回は被告にとっては不利な戦いが予想される状況である。

そこで、被告の弁護を務めるモンチーパンチ弁護人は、
過去2回の裁判にも情状証人として証言をした被告の母を今回も証人として迎え、
今後も被告を見捨てずに支えていくといった
『母の無償の愛』の証言を見事引きだすことに成功した。

それでも、覚せい剤を止めさせるには『母の愛』だけでは難しいことを立証するべく、
軽石検事が母親に質問をぶつけるのだった。
― ◇ ― ◇ ― ◇ ―
「今回で3回目の覚せい剤の使用となりますが、
今後の監督は具体的にどうされるおつもりですか?」
「私がカラオケ店をしているので、自分と一緒に娘を店に置いておきたいと考えています」
「今回覚せい剤を自宅でやっていますが、再犯はないですか?」
「今回は全然分からなかったので・・・娘と自分の部屋が2Fと3Fと別だったもので・・・。
今55年の執行猶予があったでしょ、だから病院で治療をしていて、
次は絶対にないと信じていたので残念です」
「裏切られたという感じですか?」
「はい」

この質問に対して、若干物足りなさを覚えたサンドイッチマン富澤似の
裁判長からも質問が飛んだ。

「娘さんは何でお母さんを裏切るのでしょうね?」
「薬のドラマを見ただけで詳しいことは分からないですが、
依存性が高いですからね・・・それ以外は優しい、いい子なのですが・・・」
「甘えているのですかね?」
「子どもの時は病弱だったので、多少甘やかしてしまったのかもしれません」
そう力なく答える母。
「厳しさも必要だと思いますよ、つくづく・・・」
「・・・はい」
こうして歯切れの悪いまま母の証言が終了となった。
判決を下す裁判長の心証は、
今度という今度は、被告の言葉を信じきれないといった態度だ。
それでもモンチーパンチ弁護士は、一縷の望みを繋いで、
被告人質問に全精力を傾けることなる。

 
決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(後編)へ続く