裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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裁判傍聴 ブログ

ボクは的中率100%の予想屋さん(証拠調べ編)

不当競争防止法違反で起訴されている悪人面被告と社交辞令弁護士との連携が光る裁判の続編。

前回の裁判を傍聴していると明らかに被告が白を切っているように感じられたが・・・。
そして裁判は証拠調べに入っていく。ゴリ検からの冒頭陳述を聞いてみよう。

 

<身上・経歴>
被告は、高校を卒業後に職を転々とし、
H14年7月~A社へ入社。今回の事件で解雇となって現在はアルバイト勤務中である。
被告には離婚歴があり、子どもはあるが現在は単身で暮らしている。前科前歴はなし。
H14年7月よりA社に入社し、A社で稼働していたが、
新店としてB店を出店することとなり、同12月よりA社からB社に異動、
その際に被告は副主任となった。

<事件の経緯>
スロット機は絵柄を揃えるものであるが、出玉は予め店側が設定できる。
第1設定と呼ばれるものが最も出玉確率が低く、逆に第6設定が高いとされている。
各台の設定を決めるのは店長であり、集客数などと照らして管理し、
これをモードチェックシートと呼ばれる紙に書き写し、各台の出玉率を設定しているとのこと。
なおパチスロ台の設定を変更する際にはパスワードが必要であり、
同店でそのパスワードを知っているのは店長と副店長、主任、そして副主任である被告だけであった。

モードチェックシートは店長が毎日手書きで書いており、
毎日上記4名が、モードチャックシートに書かれた設定をもとしにて、手分けして各台設定する。
当然モードチェックシートの情報は洩れたら店の経営が成りたなくなる虞のある重要な情報であるため、
店長がカギを掛けて保管しており、使用後はシュレッダーをかけている。

被告は、職務上モードチェックシートの情報に触れるため、
予めこの業務に従事する前に「他のスタッフに漏らしてはいけない旨」
が記載された誓約書に署名・捺印をしている。

今回の事件で被告は、顧客を装ったAらに予め高設定の台番号をメールで知らせ、
その見返りとして、被告の口座に数万~十数万円単位で振り込ませていた。
Aをはじめ打ち子らも被告から得た情報を基にして数千~十数万円を稼いでいた。

やがて被告は主任となり、Aら打ち子に対してこのようなメールを送信している。
「前よりも濃い情報を知ることができるようになった」
そして、Aらの儲け約3割を見返りとして要求するようになったとのこと。

ただ店長も馬鹿ではなかった。
いつもAらが第6設定の台ばかりに座っていることを不審に感じはじめ、
調べたところ今回の事件が発覚したのだった。

ここまで分かっていると言い逃れはできない、と感じるのはUNICOの甘さであろう。
言い逃れをする悪人面被告を追いつめるために、ゴリ検は最善を尽くすのだった。

 

 

ボクは的中率100%の予想屋さん(追い込むゴリ検編)へ続く

ボクは的中率100%の予想屋さん(登場人物編)

何ともつかみどころがない顔をしているのが、今回事件の被告である自称「予想屋さん」である。

一体被告は何の予想屋さんなのか。なぜ予想屋さんをして裁判を受けることになったのだろうか。

 

予想屋さんが起訴されている罪名は、不正競争防止法違反だ。
不正競争防止法とは、公正な競争と国際約束の的確な実施を確保するため、
不正競争の防止を目的として設けられた法律のことであり、経済産業省が所管している。
条文上は、その第1条(目的)に「この法律は、事業者間の公正な競争及び
これに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る
損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」と規定されている。
(出典/WIKI)

そんな大層な事件を起こすような面構えには見えないが・・・どんなものだろうか。
しかもそんな大層な事件を起こした弁護士先生が、どう見ても社交辞令をモットーとしている感じなのだ。

社交辞令弁護士のどことなく緩んだ雰囲気を見ていると到底大きな事件を扱えるようには見受けられない。

まずは裁判がはじまるまで待つ必要がありそうだ。

検察には、前にも登場したことがある、ゴリ検だ。またありとあらゆる血管を浮かび上がらせることで

立証弁論に花を添えてくれるであろう。

 

そこへ裁判長がやってきた。
「小学校時代の好きなことは理科の実験です」

そう迷わずに答えてくれそうな面構えを見て少し安心をしたところで、
「不正競争防止法違反」裁判の幕が開けた。

 
ボクは的中率100%の予想屋さん(事件の概要編)へつづく

まやかしは人の華(結審編)

生活保護法違反で起訴されているカーネルサンダース被告裁判の続編。
いよいよこの裁判も大詰め、検察からの被告人質問だ。

 

◇   ◇   ◇

 

しかし・・・淡々検事は

「質問はありません」

と呆気なく本人質問が終了となった。

見兼ねた裁判長、堪らずに質問を投げかける。

「手紙は書いたの?」
「はい、そして弁護士の先生に届けてもらいました」
「今回何がいけなかったの?」
「気持ちが甘かった」
「判断が甘かったと思うのですね?」
「はい」
「今後はないの?」
「はい」

結局、今一つ盛り上がりに欠けることとなったのだった。

 

こうして裁判は淡々と進み、この淡々裁判の最大の立役者である
淡々検事が論告求刑をはじめる。
「被害金額は150万円と多額であり、また継続的、常習的であり、
また全く収入がないわけでもなく、生活保護の支給額を上回る収入があったことも悪質である。
また役所に対して申告したのはあくまで本人でありクルマダニではない。
現在も高利の借金があり、被害金額の回復は難しいこと、
1年半の長い期間を不正受給していたことなどを考慮して、
懲役1年6か月に処するのが妥当と思料します」
これまた驚くくらいの早口でまくし立てたため、なかなか迫力はあったが・・・。

そしてメット弁護士からの陳述。
「罰金刑を望みます。現状は憲法25条の人間らしい尊厳の維持も難しい状況であって、
また今回の生活保護不正受給も業者にそそのかされたものである。
市に対しても不正分は分割弁済の意志もあること、
また次の職場もリサイクルショップでの雇用が決まっており、
見通しも立っていることなどを考慮して、罰金刑をお願いしたい」
なかなか強い調子であった。

最後に、カーネル被告。
「この度は多大なるご迷惑を掛けてしまいまして、申し訳ありませんでした」

予想外にも言葉数が少なめで驚いたまま閉廷となった。
◇   ◇   ◇
この裁判の判決を傍聴することはなかったが有罪判決になることは明白であろう。
ただカーネルも年を取っており、どちらかと言えば弱者に位置する人であることを
考慮すれば、メット弁護士の意見を取り入れて罰金刑を選択したくなるのが人情ではなかろうか。
(了)

まやかしは人の華(証人喚問編)

生活保護法違反で起訴されているカーネルサンダース被告裁判の続編。

メット弁護士が情状証人として召喚したのは、通称「タイルおばちゃん」だ。

 

◇   ◇   ◇
「被告との関係は?」
「内妻関係です」
恋に年齢はない。タイルおばちゃんも年の頃60歳前後だ。

「いつから(内妻関係)ですか?」
「1年半~2年ほど前で・・・古紙回収の時に知り合いました」
出会いは突然のようだ。

「この時被告は生活保護を受給していましたか?」
「確か未だだったと思います」
しかし、タイルおばちゃんのこの回答は、メット弁護士の予定に反したものであったのだろう。
この後、両者でヒソヒソと打ち合わせをし、タイルおばちゃんは証言を撤回、
「被告が生活保護を受給したのは証人と知り合う前であった」と訂正されることとなる。

「今回の事件を聞いてどうでしたか?」
「びっくりしました。そしてどうしてもっと早く気付かなかったのかを反省しました」
「もしあなたが不正受給のことを知っていたらどうしましたか?」
「自分が説得して、それで止めさせていたと思います」

「被告の普段の仕事ぶりはどうですか?」
「一生懸命する人です」
「普段の金遣いはどうですか?」
「無駄遣いをしません」

「今後は?」
「できるだけ被告と一緒に住みたい。そしてしっかりと見守っていきたいと思っています」
「社会復帰後は?」
「友人の○○氏に今の仕事を任せているので、仕事のお願いをしようとは思っています」
「今後被告が何らかの犯罪にかかわることがあったらどうしますか?」
「絶対に許しません。一緒に暮らす自分が見守っていきます。
今自分はペースメーカーを入れて、今の年金を頂くまでに生活保護を貰っていた
ことがあるので、自分は生活保護に助けられた。
だから生活保護には感謝している。だから・・・被告を見守っていきたい」
「今後犯罪を起こさせないための対処はありますか?」
「自分が被告と一緒に住んで、一緒に居ながら見守っていきます」

その後、淡々検察からはタイルおばちゃんへの質問はなかった・・・。

 
まやかしは人の華(被告は語る編)

pride(結審編)

落ちていた覚せい剤を拾って抽斗に隠し、
証拠隠滅と覚せい剤取締法違反で起訴された元警察官。
イカツイ体格にいかにも警察官といった厳格なその表情とは裏腹な
あまりにもスケールの小さい事件である。
この事件を引き起こしてしまった至った被告の言い分の続き。
◆  ◆  ◇

 

ボソ検からの被告人質問。
「昨年12月に停職処分となりましたね?」
「その同日に依願退職しました」
「数日経つと検挙は難しいとありましたが、他にやり方はあったのでは。
指紋を調べるとか。そういったことを考えませんでしたか?」
「その時にはそういった考えを持っていませんでした」
「帰って来てから指紋を照合すれば、もしかして前科者リストなどから割り出せたのでは?」
「その時は思いませんでした」

「人定質問をしないと叱責をされるの?」
「過去にそういった話を聞いたことがありますので・・・」
「それが何!? それで自分の評価が下がるとでも思った?」
ボソボソ話すボソ検には珍しく強い語調だ。正義の味方・ボソ検といったところか。

「まぁ評価が下がるというよりは(厭味を)言われたくないと思いました」
「何者かが通報すると心配だったのですか?」
「それは本当です」
「わざわざそんなことがありますか?」
「一般的にはありません。××(地名)だったのでそういうところもあるかと思っていました」
いかにも公務員らしい発想である。

「同僚の方を心配しなかったの?」
「考えたこともありましたが、その時は何とか言おうかなと」
「嘘をつくとか?」
「その時に考えようと」
「口止めは?」
「していないです」
嘘と言い逃れとは違う。被告はそう主張しているのであろう。

「覚せい剤を発見するのは経験が必要なのでは?」
「はい」
「見つけたら終わりだけではなく経験でしょ?
同僚はあなたのことを素晴らしい行動力だと言っていました。
今回の事件の問題はあなただよね?」
テンションが上がったボソ検の質問はその意図が見えにくかった。
沈黙する被告に対して、マンネリ弁護士が助け舟を出す。

「覚せい剤は現認では見つけにくいのですか?」
「通常は車を被疑者の真横で止めるのですが、この時は歩道がありましたので、
それで被疑者の前方まで行って、被疑者を追い越してから職質をしましたので、
その時に捨てたのではないかと思いました」

「車の運転は被告、助手席に同僚だったの?」
「はい」
先ほどとは矛盾しているようだが。

「途中で捨てたのを見付けるのは同僚には未だ難しいと思った?
さらに当時は現認があるものはいいが、ないものはちょっと喜ばれないという感じだったのですか?」
「そうですね」
「もう1回引き返して身に行ったのはなぜ?」
「同僚が現認、自分が指導する立場でしたので、
投棄されたのを見つけて「目を離すからやで」と指導するつもりでした」
「そのあとに管轄警察署に持って行けばよかったのでは?」
「はい」
裁判を傍聴していた誰もがそう感じた瞬間であった。

ここで欺瞞裁判長が沈黙を破る。
「その職務に5年程度従事していましたがそれは長い方ですか?」
「一般の人よりは長いと思いますが、それまでは殆ど接していなかったので・・・」
「引き継ぎは、管内で見つけた際は管内にするものなのですか?」
「正式には決まっていないが周辺の署に引き継ぐこととなっています」

「人定確認をしておらず、不詳・不完全な引き継ぎでは躊躇いが出たということですか?」
「はい」
「それで個人的に傷つくと考えたのでは?」
「ひとまず自分の気持ちが弱かった。
ただ指紋は刑事課員がするので自分ではしません。
『お願いします』と引き継ぐことになります」

「それでも犯人逮捕の機会を奪ったと考えますか?」
「はい」
「隊長でしたよね?」
「はい、その誇りはありました。
そのことで人定確認すらしないのかと言われ、隊の名に傷がつくのが嫌でした」
何という目先を追っただけの誇り・・・。

「それでも結局逮捕されていますよね?」
「迷惑を掛けました。
みんなに謝っても謝り切れない・・・自分が情けないです」
「これまでに不祥事を起こしたことは?」
「ありませんでした」

「今後仕事はどうなさるおつもりですか?」
「未だ全然頑張るつもりではありますが・・・最近アルバイトをはじめましたが」

「報道で警察官の不祥事が多いですよね?」
「はい」
「今となっては自分もそうなったがどう思っていますか?」
「迷惑を掛けるばっかりで本当に申し訳ないです」
◇  ◆  ◇
論告求刑では、テンションが上がっているボソ検が勢いそのままに、
朗々と被告の悪口を並び立て、懲役1年6か月を求刑した。
一方マンネリ弁護士は、執行猶予を訴えかけて・・・。
最後に、被告人の最終陳述。
「出世のためではありません」
そうボソ検を見ながらそう力強く語る被告に、
被告の中での美学を見た。

 

(了)