裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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詐欺

まやかしは人の華(裁判概要編)

この日傍聴した裁判は「生活保護法違反」。
言い換えれば、昨今社会問題となっている生活保護の不正受給に関するものだ。

はじめにこの裁判に登場する人物を紹介したい。

まずは被告。カーネルサンダース被告と名付ける。

次に弁護士。
まるでヘルメットみたいな髪型だったので、
メットシューマイ弁護士とする。

検察は、以前にも登場した淡々検事。

そして、この裁判を仕切るのが矢印裁判長だ。
◇  ◇  ◇
はじめに淡々検事から起訴状の朗読が淡々と行われた。

被告は、古紙回収業組合に登録をしており、
そこから毎月給与がありながらも、○○市から生活扶助費
4月~1月までの計12回、148万7,398円を
収入がないものと虚偽の申告をして、振り込ませたというもの。
塵も積もればである。なかなかの金額だ。

起訴状に対して、特に異論を述べない弁護士サイド。
こうして裁判はそのまま冒頭陳述へと進んでいく。

 
まやかしは人の華(冒頭陳述編)へ続く

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅣ~

(前回までのあらすじ)
自称会社経営の被告。自分の資産を隠匿して、生保を騙し取ろうと企み、一時は成功した。
そんな被告だったが、結局御用となり、この公判に臨んだわけだが・・・。
何というか、突っ込みどころが満載な訳で・・・。
全てのスタッフから総スカンを食らい万事休すといった感じ。
さぁ、検察からの論告求刑だ。

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チェリー検事から恒例の棒読みがはじめる。
>十分な財力がありながら、正当な理由もなく生活保護を不正受給し、
その方法も財産を隠匿するために転々と移すなど狡猾かつ悪質であり、
その動機も酌量の余地がない。
また金銭に対する執着心が強く、反省も希薄である。
懲役2年が相当と思われる。
案外軽いのではないか?
そう感じるのはUNICOだけか?

次に、はじめは国選として、そして、資産が予想以上にあることが判明してからは私選となった
スネ夫弁護人からの陳述がはじまる。
>弁済していること、過去に罰金刑以外の前科がないこと、
反省し悔悟していることなどを勘案して、執行猶予を賜りたい。
・・・恐ろしいほど呆気なく、やる気がない。まぁ、仕方がないか。

そして最後の見せ場、被告人からの最終陳述。
「本当にあの・・・言い訳のしようがないですが、
小学校の先生に『人生において階段を1つ2つ踏み外すこともある』
と言われていたが、それを60歳になって踏み外してしまい、皆様に迷惑を掛けてしまいました。
今後周囲、親戚などにどう謝っていいものか・・・。
ただ勤勉に生きていく、今後は恩返しをし、晩成を生きていく、
これからはきちっとした人生を過ごしたいと考えています、許して下さい」

・・・これには法廷内の至る所から笑いをかみ殺したような声が漏れていた。
還暦を過ぎたおっさんの口から小学校の教師に言われたお言葉を聞くことができるとは・・・。

法廷内の笑いを察したのだろう、裁判長が弁護人に、
「長過ぎるので短くまとめていもいいですか」
と遠回しに被告人の陳述に突っ込み入れて結審となった。

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後日、判決の日。
法廷には、同じ面子が揃っていた。

主文、被告人を懲役懲役2年に処する。ただその刑の執行を4年間猶予する。
また公判に掛かる費用は被告が負担するものとする。

以下、その判決理由だが、
相当の財産があるのに義弟を使い、私財を隠匿して生活保護を不正受給するといった
巧妙で悪質な手口、また計画性もあることから動機に情状酌量の余地はない。
また社会問題にもなっている生活保護を不正受給するといった行為も悪質である。
減刑酌量としては、事実を認めていること、既に96万円を納付していること、
過去に罰金刑しかないことを勘案して、自己更正に期待をして今回の量刑とした。

あくまで自分の力で立ち直って貰うための執行猶予であることを覚えていてほしい。
またその責任の重さを受け止めてほしい。
繰り返さないと思うが、執行猶予中は軽い罪でも、執行猶予が停止となるため、
特に注意をして過ごしてほしい。

判決を表情を変えずに聞き入る被告。
この判決は、弁護人が何もしていない割には、上々の結果であろう。

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何とも憎めない感じの被告ではあった。
ただ彼が本当に経営者であったならば、本当にどうしようもなくなり選択した道だったのであろう。
もし彼のもとで自分が働いていたならば・・・そう考えただけでゾッとするUNICOであった。

(了)

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅢ~

(前回までのあらすじ)
生保をだまし取ろうと企てた会社経営をやっている被告。
ただこの社長さん、弁護人からの被告人質問でも言い訳が多く、
なんて言うか往生際が悪いんだな・・・。だからどんどん突っ込まれている。
そんな自分で自分の首を絞めている社長。続く検察からの被告人質問に、
果たして堪えることができるのか?

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>検察の方に軽々しく話したとありますがそれはどういう意味ですか?
「その時は、礼儀正しくなかったことです」
>その検察の方(●●さん)にも嘘をつきましたね?
「そうなんですよ、申し訳ありません!!」
この回答で少し傍聴席から笑いがこぼれる。
>義弟名義ならばれないと思いましたか?
「はい、申し訳ありません!」
>H23年に義弟に預けたのはやはり不正受給するつもりだったのですか?
「前後左右しますが、そういう気持ちもありました」
話は前後しても左右にはいかないだろう。。。
>義弟には税金逃れと言っていましたがそういうつもりだったのですか?
「はい、申し訳ありません、ただ●●検事に『まっとうに生きよ!』と言われまして、
これで目が覚めまして、心を入れ替えまして・・・正しく申告をしました」
>しかし、そのあとに過少申告していますが?
「過少申告はしていません・・・」
>えっ、していますよね?
「あれ!?そうですかね・・・(生保を)切られると思って・・・あれ!?」
>終わります。

そして、裁判長からの質問が続く。
>一体何のためにお金がほしかったのですか?
「何か、その時の心境と言うのは・・・何でしょうかねぇ、魔が差したというか・・・」
>あなたは金が好きなんですか?
「何か・・・う~ん」と言葉に詰まりはじめる。
>生保問題を知っていますか?
「はい!はい!」となぜか威勢よく返事をする。
>その説明をして下さい。
「労働者が汗水を垂らして働いた税金から出ているもので・・・五体満足の自分が貰うものではなく、
本当にかわいそうな食うや食わずの人たちが国からもらうものですよね」
この回答を聞き、判事はややイラッとしたのかもしれない。語勢が強くなる。
>TVでも問題になっているでしょ!
「野球選手が貰っていたりとか・・・それでもよく分かっていなかったというか・・・」
的外れな回答だ。これで完全に判事の怒りをかった。
>社会問題になっているのに分からなかったじゃないでしょ!
「はい!」と直立不動になる被告。更に判事は続ける。
>欲が強い?
「安易、自己管理、倫理的・・・社会的常識が外れていました。
釈放されてからは頭をさげてばっかりでした・・・今後は常識を身に付けるためにまっとうにいきます」
>20代ならともかく60歳にもなって未だこれから常識を付けないといけないの?
「申し訳ありません!」
ここまで来ると、傍聴席ではとどまらず、裁判長や検察・・・
だけでなく味方であるはずの弁護人までも失笑を浮かべている。

ここまでくれば大したものだ。
新春詐欺シリーズⅣ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きる~

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅡ~

(前回までのあらすじ)

詐欺罪で起訴されている、どこにでも居る会社員風の被告。
しかし、蓋を開ければ会社を経営しているという。
そんな被告の詐欺の手口は、生活保護を貰うために資産を隠すといったセコイものであった。
更にその資産を義弟に預けるといった卑劣な内容である。

ただ生保の不正受給額でも、塵も積もれば山となる。
逮捕までの7か月程度で、総額80万円程度にまで膨らんだ。
そんなセコイ被告が、被告人質問でその個性を遺憾なく発揮することとなる。

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検察からの起訴状の朗読が終わり、被告と弁護人は同意はする。
しかし裁判長より「この件で処罰を受けても仕方ない、何か言いたいことはありますか」と言われて、
激しく動揺をはじめる被告。
「魔が差してしまったというか・・・あの時は何ていうか・・・
本当に申し訳ないことをしたと思っています、お許しください」
とその片鱗をみせはじめる。

続く、弁護人からの被告人質問。
>仕事をしているのになぜやったのですか?
「やはり●●(住んでいる地域)の雰囲気と言いますか、みんな貰っていて・・・
金銭的に良くないことですが、ついついという気持ちになってしまいました」
>簡単にもらえると?「申し訳ございません」
>返還金が22万多いですが何ですか?「医療補助の分です」
>所持金がはじめよりも増えていますが?
「おそらく仕事をボチボチとしていてその分かと・・・建築の修繕料や清掃をしていた稼ぎですかね」
>働いた分の申告は?「していないですね、申し訳ございません」
>義弟名義のものを引きだすように指示したのはなぜ?
「警察が動きはじめて、これは生活保護のことが原因だと直感しまして・・・」
>罪を逃れたいと考えた?
「弟に迷惑を掛けたくないといった・・・まぁ人間の心理、本能ですかね」
・・・禁断の「みんながやっているから」という申し開きを展開した挙句に、
人間の心理を持ち出す被告。

そこで堪らくなったのだろうか、ここで裁判長から異例の質問が入る。
>何で小切手にしたの?「普通口座の方がいいとR銀行の人に言われましたが・・・
隠ぺいしたいと思いまして」
>過去に自動車事故過失傷2件ありますね?「はい」
>過去に偽造通貨行使罪があって、これは釈放となっていますがこれは?
「自分の使った1万円札が偽札というのを最後まで知りませんでした」
>今回の逮捕、拘留されたことは?
「友人にも会えず、後々のことを考えたり・・・閉鎖された所で過ごすので反省をします。
よりきちっと過ごさないとと思いました」
>身も心も堪えましたか?「はいっ!!」
>はじめは弁護人を国選で依頼していましたが、途中より私選となっていますが?
「前に国選でお願いしていた方から忙しいと言われましたので・・・」

この答弁に対して、今度は弁護人が口を挟む。
>はじめはお金がないと言って国選を請求したんですよね?「申し訳ありません!!」
>資産申告書も虚偽の申告をしましたよね?「お金のあることがハッキリしたので・・・」
>なぜ弟を巻き込んだのですか?
「迷惑を掛けるな、面倒を見ろというのが親の遺言だった。
それなのに反対のことをして、迷惑を掛けてしまい、情けない限りです。
気持ちを新たにして、義妹を助けたいと今は考えています」

またしても、裁判長からの質問となる。
>そういう時の心境は?「人間の本能というか」
これを聞いた裁判長、
>あなたは犯行を否認することが本能なのですかっ!!と一喝。すると、
「申し訳ありません!! その後聞きもしないのに延々と身の上話を展開し、
最後には今後は同じ過ちを犯しません、次は新しい仕事をきちんとしていく」
と締める被告。

ここまで来ると、一同あきれ顔だ。
新春詐欺シリーズⅢ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きる~へ続く

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅠ~

傍聴人に紛れ、そのまま柵の向こう側に入っていくスーツ姿の被告。
一見するに、どこにでも居る会社員といった感じである。

そんな被告の罪名は詐欺罪。
詐欺について、前々から考えていたことがある。
詐欺を働く人間とはどんな人間なのかと。
確かに見るからに胡散臭い感じを受ける人ならば誰も騙されることはないだろう。
そう考えてみると被告のようなどこにでもある顔立ちならば案外詐欺を働き易いのかもしれない。

被告がやらかした手口をチェリー検事が起訴状の朗読でボソボソと読み上げる。
>生活保護をだまし取ろうと企て、資産700万円程度の預貯金があったにもかかわらず、
某区役所に出向いて、虚偽の資産申告書を提出し、さらに「手持ちが3,000円だ」と装い、
7回に亘り、生活保護給付金を不正に受給したとのことだった。
被告が不正受給した金額の合計は746,203円に及ぶ。

起訴を受けて、被告と弁護人は特に異議を申し立てず、そのまま検察による冒頭陳述がはじまった。
>高校卒業後、数社の勤務経験を経て、現在はナイトー商事を経営している。
業務内容は、建築請負を謳っているが、実態はスーパー玉出の清掃業務を請け負っていたようだ。
前科として、業務上過失傷害2件、偽造通貨1件あり。

H24年2月、義弟に「税金が何万円もくるからお前の口座を貸して欲しい」
「収入を分からなくしたい」といった相談を持ち掛け、
その後義弟に現金を預け、義弟名義で口座を作らせる。
その足で、地域の区役所へ行き「日雇いをしていたが仕事がなくて収入がない、
次の仕事も決まっておらず、今3,000円しかない」と申し出て、受給に至る。
のちに警察の動きを察知した被告は、義弟に同口座を解約させ、
現金836万8,000円余りを小切手にするよう指示し、
それを自分で所持していたときに検挙されたとのことだった。
新春詐欺シリーズⅡ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きる~へ続く