裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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銃刀剣類所持等取締法違反

あの日に戻りたい(前編)

実兄に、右脚が不自由なことと生活保護を受給していることを馬鹿にされ、
怒りのおさまらなかった被告。
兄が経営する居酒屋へ文化包丁刃渡り15.6cm2本を持って押し入り、
「いってもうたる」などと危害を加えかねない勢いで叫び、近づいたことによるもの。

罪名及び罰条、
暴力行為等処罰に関する法律違反、銃刀剣類所持等取締法違反。
+ + +
爽やか営業マンタイプの検事が若干噛みながらも起訴状を読み上げた。
特に被告側からの反論もなく、スムーズに起訴事実が了承され、
次は証拠調べとして、先ずは検察からの冒頭陳述へと続いていく。
冒頭陳述では、被告の身上、経歴、今回の事件の内容が明らかとなる。

被告は大阪府出身の64歳。
大学中退後、職を転々とした後、現在は無職で生活保護を受給している。
これまでに離婚歴が2回あり、現在は単身で暮らしている。
被告には同種1犯を含む、前科が3犯あるとのこと。

今回は被告の母の死後、被告と実兄(今回の被害者)との間で、
母の遺産相続を巡り、家庭裁判所にも持ち込まれ、遺産分割協定となったらしい。
協定の結果は、被害者にビルの所有を、被告には同ビルの4F部分を
居住空間として、生涯無償貸与できることとなった。

ただ被告曰く「この民事調停のあとより兄弟関係は不仲になった」。
被告がそう語るのは、
「この日を境にして自分の郵便物が届かなくなった」とのこと。
それを兄の嫌がらせと考えるようになった被告。
「兄はドアを叩いたり、乱暴にドアを閉めたりする」
といった粗暴的な行動をその根拠に挙げている。
しかし、被告は「また喧嘩になるので言わずに我慢」をしていたらしい。

そして事件当日。
被告の我慢の限界を超える出来事が起こったのだった。

事件の当日は、丁度選挙の日だった。
被告は、投票に行こうとしたが、選挙通知のはがきがないことに気付く。
「はがきを持っているのは兄に違いない」
そう勝手に断定した被告は、はがきを返してもらおうと一大決心をして兄の元へ行き、
「郵便物を5年分盗ったやろう!」などと言ったらしい。
言われた方からすれば、訳のわからないことだったに違いない。
そして兄は、右脚が不自由なことと生活保護を受給しているといったことを持ち出して、
大声で被告を中傷し、追い返したのだった。

そして被告は、悔しい想いを抱えて自室に戻り、怒りの念をふつふつと募らせる。
その怒りはやがて激情へと変わり、
「包丁で脅して謝罪させよう」
と思いついた被告は今回の犯行に及んだとのことだった。

 

あの日に戻りたい(後編に続く)