そして、女性裁判長からの怒りの被告人質問がはじまった。
「あなたは今回の事件を起こしたのは、かわいかったからだと、
そして性的欲求でもないと言いましたが、それでは何のためにやったのですか?」
「・・・・・・」
下を向き回答に困る被告・・・当然だろう。
「かわいかったからこういうことをするものですか?」
「・・・そうでもありません」
「どうして(理由を)自分の口で言えないの?」
「・・・・・・」
静まり返る法廷、被告にとっては長い時間であろう。
「今回の事件は性的虐待と認識していましたか?」
「虐待とは認識していませんでした」
「暴力や無視と一緒のことをしているとどうして認識できかったのですか?」
「自分のエゴだと思います」
「エゴならやってもいいの?」
「そうしたところが自分の考えの欠点だと思います」
「欠点とは?」
「何でも浅はかに考えて行動するところです」
「被害者が喜んでいるとでも思ったの?」
「思っておりません」
「虐待とは思っていなかったの?」
「恐ろしいことをしました」
「リストカットは虐待の結果です!!!」
「・・・・・・はい」
◇ ◇ ◇
厳しい叱責の時間が終わり、白を切りとおす被告にとって、いよいよ運命の時を迎える。
検察からの求刑だ。
「卑劣かつ大胆で悪質な犯行で情状の余地はありません。また常習性も認められます。
被害者は11歳ということで母を悲しませたくないとの思いから何も言えず、
また被告に対する恐怖心もあった。
また被告には自制心も欠如しており、犯情にも酌量の余地はありません。
求刑ですが、懲役5年を相当と思料します」
片や苦しい状況に追い込まれたゴルフドライバー弁護士。
「魔が差したでは済まないが、可愛さあまってのことで、
被告は被害者が嫌がっていると認識していなかった。
今回のことで猛省を通じ、また事件の深刻さも理解している。
また生涯を通じ謝罪をしていくも言っている。また何があっても接近しないとも誓っている」
「被告には前歴がなく遵法精神はある。
被害者に支払った50万円は慰謝の措置で、今後については書面化する。
証人たちも真っ当になることを期待ているし、被告は死んでお詫びしたいと言いながら、
いちからやり直す気持ちである。
内省していることから、自力で更正できることを切望します。
金銭補償もその方が早くできるとも思料します」
最後に被告からの最終陳述。
「何もありません」
裁判長が「本当にいいのですか」と確認するも、
何も言わない被告。
こうして結審を迎えるのだった。
本能のダンス(完結編)へ続く
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