傍聴席へ行くと、スキンヘッドで目つきの鋭い男性が着席していた。
どうやらこのゴリモンが検察官であるらしい。
ついつい頭の方に目を向けてみると公務員である検察官には珍しく、
丁寧に剃りあげられたスキンヘッドである。
物珍しさも手伝って、スキンヘッドに目を向けてみると、
頭皮には小さな赤い斑点が至る所にあった。
ひげ剃り負けならぬカミソリ負けといったところであろうか。
一方の弁護士は、若く一見淡泊そうな印象を受ける人物であったが、
残念なことにこの淡泊弁護士は、ひげ剃り負けをしていた。
ひげ剃り負け VS カミソリ負け。
何が何やら訳の分からないことになってきた。
そんな下らない観察をしているうちに、傍聴席には怪しげな4人衆が入ってきた。
被告の関係者らしいが、その内訳は、水商売風の派手な女性が2人と
ホストらしき男性1名、そして、作業員風男性1名であった。
オーソドックスな風景である。
そして着席するや否や若い方の水商売女性が、スマホを片手に操作をはじめながら、
隣に座るホストの男性に話しかけている。
このありふれた夜の光景は、これから裁判がはじまるといった緊張感を忘れさせるひと時だ。
しかし、法廷内の風紀の乱れを許さない書記官が空かさず登場、
水商売が持つスマホの電源は即刻消されることとなった。
そこへ学級委員長といった裁判官が法廷に入ってきた。
それに遅れること1分程度、満を持してジャージめがねの被告が入廷、
いよいよ盗品等有償譲受の審議がはじまった。
+ + +
まずは、被告が証言台へと呼ばれ本人確認がはじまる。
証言台へ向かう途中に、被告はホストに何やら目配せをしていた。
このホストが証人となるのだろうか。
本人確認の中で生年月日が告げられ、このジャージめがねの年齢は35歳とのことだった。
ということはこの緊張感のない傍聴人たちは、
揃って同世代なのだろうかと思うと複雑な気持ちになった。
本人に間違いないことが分かったので、
次にスキンヘッドからの起訴状の朗読がはじまる。
共犯者と共謀のうえ、カーナビ12台を窃取したものと知りながら、
1台約6万円で譲り受け、これらを72万円で売却したことによるもの。
盗品等有償譲受、刑法256条第2項。
要は、窃盗犯が盗んだものを安く買い取り、
それを盗品とは言わずに他者へ売り捌くという
自分の手を直接的に汚さない愚劣な犯行である。
その愚劣さを反映してだろうか、
この法廷刑も無償譲受罪が3年以下の懲役、
運搬罪・保管罪・有償譲受罪・有償処分あっせん罪が
10年以下の懲役及び50万円以下の罰金と単純窃盗罪のそれよりも重くなっている(WIKI)。
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起訴状の内容をあっさりと認めたジャージめがねの被告。
傍聴席から見た感じはあまり反省しているといった様子は窺えなかったが、
これも作戦のひとつなのだろうか。
時には見た目で損をする(中編)へ続く