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空いた時間にフラッとプチ傍聴

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訴訟能力って何?~高齢大国ニッポンが抱える闇~

訴訟能力って何?~高齢大国ニッポンが抱える闇~

全身をエメラルドグリーンのオウム服に身を纏い、
法廷警備員2名に車いすを押して貰いながら入廷を果たした被告。
被告の眉毛は、今はなき社会党をはじめとする連立政権で与党となり、

見事首相となった村山富市氏を彷彿する立派なものであった。

被告の年齢は74歳。
裁判長から「名前は?」と問われても、苗字すら言えず、名前を自分で名乗ることはできなかった。
また「本籍地は?」と問われるも、「○○」とその地名しか答えられなかった。

それでも、裁判長は辛抱強く質問を続け、
やっとの思いで法廷は、365日不機嫌宣言をしている検事からの起訴状の朗読まで辿り着いた。

被告が起訴されているのは窃盗。
某スーパーへ行き、洋菓子等計4点832円を盗んだとのことで捕まったらしい。
金額の多寡ではないが、832円で起訴されるのである。
なかなか世知辛い世の中になったものだ。

この起訴状の内容を裁判長が被告人に確認する。
>事実に間違いはありませんか?
「えっ!?」
諦めた裁判長、内容を分解することを思い立つ。
>スーパーには行ったことはありますか?
「えつ!?」
(もう一度繰り返す)
「はい」
>スーパーで洋菓子4点832円相当を盗みましたか?
「えつ!?」
(もう一度繰り返す)
「よく覚えていない」

その後、裁判長からなぜか2人掛かりで出廷している弁護人へ質問をする。
>弁護人の意見をお聞かせください。
「被告人は認知症を患っておりまして、を問うために精神鑑定を請求します」
これには、365日不機嫌やってます宣言をしている検察も
「初めて聞きました」と動揺を隠せない様子だ。

それはそうだ。今は裁判のスピード化が求められている時代。
このスピード化を実現するため、開廷前に検察と弁護側とは予め打ち合わせを済ませている。
それなのに「勤勉兄弟」といった感じの弁護サイドがこれをなぜか怠っていたか、
単に忘れていただけかもしれないが、何れにしても伝わってはなかった。
さすがに寛容な即決裁判長も苛立ちを隠せない。

しかし、結局この日はこれで終了となった。
後日精神鑑定の結果を以て、改めて開廷されることとなる。
もし被告の訴訟能力がないという診断が下れば、審理は中止となってしまうらしい・・・。

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あらゆる質問に対して、基本的には「はい」としか返事ができなかった被告。
それでも「洋菓子を盗ったか?」の質問に対しては、「はい」とは言わなかった。
これが人間の持つ防衛本能だとUNICOは感じた。

ただあの状態で、どうやってスーパーに行けたのかが疑問だった。
というのも誰か付添いが居れば、犯行を容易に防ぐことはできたと思われるためだ。
そう考えると被告は単独でスーパーに行ったのだろうが・・・。

被告に訴訟能力がないことは、鑑定をしなくても少し見ただけで察しがつく。
それでも、然るべく措置がないと恐らくまた無意識で繰り返すだろう。
しかし、傍聴席には被告を庇護すべき家族らしき姿は見当たらなかった。
だからと言って刑務所は酷であろう。

打開策の全く見えてこない社会問題であろう。
(了)

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