裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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ニッポンの伝統と、今を生きる青年と(中編)

ニッポンの伝統と、今を生きる青年と(中編)

若手の元営業マンの接待後の酒気帯び運転による交通事故の公判。
ただこの元営業マンは、残念なことに直ぐに自分の非を認めなかった。
嘘もバレなきゃ、真実になるとでも考えたのだろうか。
そんな若手元営業マンへの弁護人からの被告人質問だ。
◇  ◇  ◇
真面目サラリーマンといった感じの弁護人は、
まず書証として示談書を提出したいが、まだ示談が済んでいないことを伝えたのち、
被告人質問を開始した。

「どこで飲んでいたのですか?」
「会社の近くです」
「会社はどこにお勤めでしたか?」
「○○工業です」
「一緒に飲んだ相手は誰ですか?」
「取引先の顧客とその彼女、上司と自分の計4名です」
接待を受ける側は、女を侍らせるものだろうか。
この時点で、かなりの癒着を感じさせる。

「かなり飲んだのですか?」
「はい」
迷いのない回答だ。

「普段から飲みますか?」
「ビール2杯程度は飲みます」
「なぜその時はそんなに飲んだのですか?」
「お客さんから飲めと言われたら嫌とは言えませんので・・・」
「その人は会社にとって重要なお客さんなのですか?」
「はい」
これは古き悪しき習慣であろう。

「これまでにその人と飲んだことはありますか?」
「2、3回程度あります」
「その人と飲む時は毎回このくらい飲むのですか?」
「いつも多めですが、ここまで飲んだのは今回がはじめてです」
「この日はなぜそんなに飲むことになったのですか?」
「彼女が居たので、男として強い所を見せたかったのではないかなぁと思いました」
この場面でまさかの推測を放り込んできた被告。

「この日車で行っていますよね。お酒を飲むことは分かっていますよね。
どうするつもりだったのですか?」
「会社の駐車場で車を停めて、そのままそこで寝て、翌朝取引先へ直行しようかと思っていました」
それなのになぜ上司を送ったのですか?
「お酒を飲んで冷静に判断ができなかったことと、上司が気分を悪そうにしていたので
これは送り届けた方がいいとおもいまして。ただ記憶は曖昧ですので・・・」
それにしても苦しい言い訳だ。
いつも多めに飲まされることが分かっているこの客と会うのに、
なぜ車でその場へ向かったのだろうか。
少し位の距離ならば大丈夫、バレないだろうといったお酒の席での無礼講思想によるものだろう。

「上司はそこまで何で来ていたのですか?」
「自転車で来ていました」
「事故を起こした日のことですが、衝突するまでの記憶はありますか?」
「・・・あまり残っていない。ただぶつかった以降は衝撃があったので覚えています」
「何で後部座席に逃げたのですか?」
「ただただ責任逃れをしようと思いました」
「覚えているのですか?」
「はい」
ということは、嘘の供述は確信犯という訳だ。

「その翌日7時位に警察へ出頭されていますね、なぜですか?」
「父と話したことと酔いがさめたことでその重大性に気付きました。
どうせバレるだろうと思いました」
「お父さんとは何を話したのですか?」
「嘘を言わんと出頭しろとひたすら言われました」
馬脚を現したな、若い元営業マン。

「その後会社はクビになっていますね?」
「9月21日に懲戒解雇となりました」
「婚約者も居たが、これも破棄になったのですか?」
「はい」
「その方とは何年くらいお付き合いをしていたのですか?」
「6年程度になっていました」
気の毒な話であるがどうも同情する気にはなれなかった。
単に被告の面構えが気に入らなかっただけのことなのかもしれないが。

「これまでに交通前歴7件、前科2件あるが、飲酒運転ははじめてですか?」
「はい、1度もありません」
やはりこれかと思った。
この被告はどこか裁判慣れしているのだ。

「示談の状況はどうなっていますか?」
「交渉は前の会社の任意保険で支払うことが決まっています。
ただ未だ折り合いがついていません」
事故を起こした相手がこの被告ならば、そんなに簡単に示談にしたくないだろう。

「今事件をふり返ってどう考えていますか?」
「被害者の方、自分の家族、勤務先に迷惑を掛けてしまったので、
謝罪をしたいと思っています。今は恥ずべき行為だったと思い、反省しています」
コイツは反省などしていない。
単に今回はアンラッキーだっただけと考えているはずだ。
そう被告の目が語っているようにUNICOは感じた。

「危ない運転をしたら死者が出るかもしれませんよね?」
「はい」

こうして被告の胡散臭さを際立たせたまま弁護人からの被告人質問が終了となる。

 

ニッポンの伝統と、今を生きる青年と(後編)へ続く

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