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新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅣ~

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅣ~

(前回までのあらすじ)
自称会社経営の被告。自分の資産を隠匿して、生保を騙し取ろうと企み、一時は成功した。
そんな被告だったが、結局御用となり、この公判に臨んだわけだが・・・。
何というか、突っ込みどころが満載な訳で・・・。
全てのスタッフから総スカンを食らい万事休すといった感じ。
さぁ、検察からの論告求刑だ。

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チェリー検事から恒例の棒読みがはじめる。
>十分な財力がありながら、正当な理由もなく生活保護を不正受給し、
その方法も財産を隠匿するために転々と移すなど狡猾かつ悪質であり、
その動機も酌量の余地がない。
また金銭に対する執着心が強く、反省も希薄である。
懲役2年が相当と思われる。
案外軽いのではないか?
そう感じるのはUNICOだけか?

次に、はじめは国選として、そして、資産が予想以上にあることが判明してからは私選となった
スネ夫弁護人からの陳述がはじまる。
>弁済していること、過去に罰金刑以外の前科がないこと、
反省し悔悟していることなどを勘案して、執行猶予を賜りたい。
・・・恐ろしいほど呆気なく、やる気がない。まぁ、仕方がないか。

そして最後の見せ場、被告人からの最終陳述。
「本当にあの・・・言い訳のしようがないですが、
小学校の先生に『人生において階段を1つ2つ踏み外すこともある』
と言われていたが、それを60歳になって踏み外してしまい、皆様に迷惑を掛けてしまいました。
今後周囲、親戚などにどう謝っていいものか・・・。
ただ勤勉に生きていく、今後は恩返しをし、晩成を生きていく、
これからはきちっとした人生を過ごしたいと考えています、許して下さい」

・・・これには法廷内の至る所から笑いをかみ殺したような声が漏れていた。
還暦を過ぎたおっさんの口から小学校の教師に言われたお言葉を聞くことができるとは・・・。

法廷内の笑いを察したのだろう、裁判長が弁護人に、
「長過ぎるので短くまとめていもいいですか」
と遠回しに被告人の陳述に突っ込み入れて結審となった。

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後日、判決の日。
法廷には、同じ面子が揃っていた。

主文、被告人を懲役懲役2年に処する。ただその刑の執行を4年間猶予する。
また公判に掛かる費用は被告が負担するものとする。

以下、その判決理由だが、
相当の財産があるのに義弟を使い、私財を隠匿して生活保護を不正受給するといった
巧妙で悪質な手口、また計画性もあることから動機に情状酌量の余地はない。
また社会問題にもなっている生活保護を不正受給するといった行為も悪質である。
減刑酌量としては、事実を認めていること、既に96万円を納付していること、
過去に罰金刑しかないことを勘案して、自己更正に期待をして今回の量刑とした。

あくまで自分の力で立ち直って貰うための執行猶予であることを覚えていてほしい。
またその責任の重さを受け止めてほしい。
繰り返さないと思うが、執行猶予中は軽い罪でも、執行猶予が停止となるため、
特に注意をして過ごしてほしい。

判決を表情を変えずに聞き入る被告。
この判決は、弁護人が何もしていない割には、上々の結果であろう。

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何とも憎めない感じの被告ではあった。
ただ彼が本当に経営者であったならば、本当にどうしようもなくなり選択した道だったのであろう。
もし彼のもとで自分が働いていたならば・・・そう考えただけでゾッとするUNICOであった。

(了)

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