裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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切ない窃盗②

切ない窃盗②

入廷した裁判官に不思議な親近感を覚えたUNICO。
その理由を探るまでに、そう時間を要さなかった。
というのもこの裁判官が、国民的アニメである「サザエさん」に出てくる
「波平さん」に似ていただけのことであった。
・・・また話が逸れました。
ここで、事件の概要を検察の起訴状の朗読よりまとめてみる。

アルミ缶回収を行っていた被告(67歳)が、飲み屋で飲んでいる時に、
「エアコンの室外機は2000円で売れる」「盗るのは簡単」と近くの人が話しているのを聞いて、
お金に困っていた被告は、民家のエアコン室外機を「たまたま拾った」グリッパで配管を切断、
そのまま手押し車で持ち去ろうとしたところを御用となった。

これまで被告は前科13犯で、そのいずれもが窃盗。
前回出所直後には、生活保護を受給したが、僅か2ヶ月で打ち切りとなる。
打ち切りの理由を日サロ検事から尋ねられると、
「簡易宿泊施設で知り合った男からお金の無心をされ、断り切れずにお金を貸していた」
ことが続き、それが嫌で宿を出ることを決意する。
その後、野宿者となった被告は、数年間アルミ缶の回収などを行い、生活費を凌いでいたが、
近年の不況の影響を受け、いよいよお金に困り、今回の犯行に及んだとのことだった。

続いての証拠調べでは、検察官から何度も「またやるんじゃないの?」
「余罪があるんじゃないの?」と質問攻めを行い、
事前の調書では、余罪が3件と言っていた被告だったが、
話しているうちに訳の分からなくなった被告は、
「4件くらい・・・」と自分の首を自分で締める始末。
それを見た老弁護士も、
「何でお金に困るの?」「何で誰かに相談しなかったの?」とコンコンと説教をしはじめるし・・・。
まぁ、老弁護士からすれば、頼まれたら断り切れない被告の「人の好さ」を強調したかったようであるが、
本当に人のいい人は、2000円が欲しくて室外機を盗むといった選択はしない。

さらに老弁護士は、「身内は居るの?」と質問を続け、
「身寄りは居るが今さら会えない、迷惑を掛けられない」と被告が切なさを訴え、
情状酌量を訴る戦法に出たのだが・・・。
これも何ていうか、白々しいというか。

その茶番を見切った波平裁判官。
「刑務所はどうなの? 刑務所に戻りたいんじゃないの?」
と被告が、刑務所に戻ることにこだわって、何度も犯行に及んだのではないかを見極める質問が続く。
また波平からしてみれば、再犯防止が必須条件であるため、
「支援センターの存在を知っているか」など地域資源活用の必要性を訴えかけてはいた。

そんな何となく脱力感が漂う中、日サロは、毅然とした棒読みで、
「再犯を繰り返していること、身寄りがないこと、これまでの教育的矯正の効果が乏しいことなどを
理由に懲役3年を求刑」し、やる気のない老弁護士は、特に何も言わず、
被告は被告で、「やはり刑務所は自由がないので、娑婆がいい」
「今度こそ真面目に就職活動をして、再犯しない」
などとどこか噛みあわないやりとりが続いていた。

・・・切なさと諦めの空気が法廷内を覆う。
「やはり3年が妥当だろうな」
と心の中でつぶやくUNICOだった。

 

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