裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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人は見かけによらぬもの!?(後編)

人は見かけによらぬもの!?(後編)

(前回のあらすじ)
22歳の真面目そうな被告。
とても犯罪に走るようなタイプには見えなかったが意外や意外。
住居侵入罪、窃盗罪となかなかのことをやらかしていた。
しかもこれがはじめてではないときている。
更にそれだけでは飽き足らず、被告の生業は風俗店。
それも稼いだお金は水商売(ホスト)に落とすといった暗い闇までも持っていた。
・・・本当に人は見かけによらないものである。

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そんな一見すると真面目そうな被告の略歴紹介が終わり、いよいよ事件の動機などがクリボーより話される。

逮捕後に犯行時の事情を本人に確認したところ、
「その日は腕が痛いと思いながら眠ってしまい、気が付くと知らない被害者の所に居た」と供述したとのこと。
なかなかシュールな回答である。
「被害者が目を覚ますと被告が手提げ金庫を持って玄関先にいたため、
被害者の手で緊急逮捕したが、その後に被告人が喉を渇いたというので、水を入れてあげると
『これ歯を磨くときに使うコップと違うの?』と言って怒り出した」らしい。
これまたシュールなキレ方である。
逮捕後に警察が被告の様子について、店の同僚やホストなどに聞いても
「全く変わった様子はなかった」とのこと。
まぁ、被告曰く「無意識状態」の犯行であったため、悪びれた様子がなくて当たり前なのかもしれないが・・・。

更にクリボーは続ける。
前回も同様の犯行をして東京で逮捕されるも不起訴となっている。
それでも、そんな被告を心配して、家族は実家に連れ戻した。
しかし、実家暮らしは長く続かず、次に新天地として選んだ場所が大阪だった。
そして、今回の犯行である。
今回は実刑を言い渡される可能性はかなり高まっているように思われるが。

その時、世話焼き弁護人より、これまたシュールな申出がなされる。
「今回の犯行は被告も認めている。そして弁護人の方針としては、情状酌量で訴えていくつもりです」。
ここまでは非常に手堅い意見だ。しかし、ここからだった。
「ただ被告は、今回の事件の記憶はないと主張しているので公文書開示請求をしたいと考えています」。
再び場が凍りつく。何を言っているのだ、おばちゃん弁護士!
何よりも一番驚いていたのは、声の高いポンタン分けをした裁判長であった。
「まぁ~してもいいですが・・・時間が掛かりますよね~」
「まぁ~いいですが、どうなんですかねぇ・・・私はこれまでに経験がないので、どうなんでしょうねぇ~」
と言いながらクリボーに視線を向ける裁判長。
「まぁ~経験はありますが、意味があるのかどうか・・・」
とさすがのクリボーも困り顔だ。
「まぁ~それをして貰って・・・次回はいつにしましょうか・・・役所のすることなので、
年内に出るのはどうでしょうかねぇ・・・やはりその結果が出たあとの方が被告人質問はいいんでしょうねぇ」
「そうなると・・・来年でしょうかねぇ・・・」
ここまで来ると、もうグダグダである。
「その時に、証人として被告の母親に来て貰うつもりをしています、40分程度のお時間をお願いします」
とおばちゃん弁護士が裁判長に申し出る。
「いやいや、最近は新件が多いので40分はちょっと・・・証人には情状酌量だけですよね!?」
ポンタン裁判長がはじめて威厳を見せる。
「そうですが、それでもいろいろと話を聞くのでそれなりの時間は必要になるかと・・・」
「じゃぁ・・・30分くらいにしましょうか」
「・・・分かりました、ただ医者も被告の病状について、発作後のパニック状態を知らないので、
また今回の拘禁中にもパニック発作が起きましたし・・・」とおばちゃん弁護人は食い下がる。
「拘禁中はそういった発作を起こすことはよくあることですよね」
とクリボーがサクッと釘を刺す。
「えーっと、被告に入院歴があれば、ねぇ」とお茶を濁すポンタン裁判長。
「入院歴はあります」と空かさず返すおばちゃん弁護人。
「ひとまず次回と言うことで・・・」

そして、グダグダのまま閉廷となった。
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弁護側は、犯行時に被告の責任能力がなかったことを立証したいのだろう。
それには、今検察の手元にある医者の診断書の責任能力があるという記載は邪魔以外の何ものでもなかろう。
しかし、もし仮に弁護側が主張するように、パニック発作が起きたとして、
寝ている間に他人の家に入り込み、お金だけを持ち出そうとするものだろうか!?

それがもし真実であるならば、それはそれで精神疾患を研究する方々にとっては、
新たな研究材料となるに違いないだろうが・・・。
(了)

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