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新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅡ~

新春詐欺シリーズⅠ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きるⅡ~

(前回までのあらすじ)

詐欺罪で起訴されている、どこにでも居る会社員風の被告。
しかし、蓋を開ければ会社を経営しているという。
そんな被告の詐欺の手口は、生活保護を貰うために資産を隠すといったセコイものであった。
更にその資産を義弟に預けるといった卑劣な内容である。

ただ生保の不正受給額でも、塵も積もれば山となる。
逮捕までの7か月程度で、総額80万円程度にまで膨らんだ。
そんなセコイ被告が、被告人質問でその個性を遺憾なく発揮することとなる。

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検察からの起訴状の朗読が終わり、被告と弁護人は同意はする。
しかし裁判長より「この件で処罰を受けても仕方ない、何か言いたいことはありますか」と言われて、
激しく動揺をはじめる被告。
「魔が差してしまったというか・・・あの時は何ていうか・・・
本当に申し訳ないことをしたと思っています、お許しください」
とその片鱗をみせはじめる。

続く、弁護人からの被告人質問。
>仕事をしているのになぜやったのですか?
「やはり●●(住んでいる地域)の雰囲気と言いますか、みんな貰っていて・・・
金銭的に良くないことですが、ついついという気持ちになってしまいました」
>簡単にもらえると?「申し訳ございません」
>返還金が22万多いですが何ですか?「医療補助の分です」
>所持金がはじめよりも増えていますが?
「おそらく仕事をボチボチとしていてその分かと・・・建築の修繕料や清掃をしていた稼ぎですかね」
>働いた分の申告は?「していないですね、申し訳ございません」
>義弟名義のものを引きだすように指示したのはなぜ?
「警察が動きはじめて、これは生活保護のことが原因だと直感しまして・・・」
>罪を逃れたいと考えた?
「弟に迷惑を掛けたくないといった・・・まぁ人間の心理、本能ですかね」
・・・禁断の「みんながやっているから」という申し開きを展開した挙句に、
人間の心理を持ち出す被告。

そこで堪らくなったのだろうか、ここで裁判長から異例の質問が入る。
>何で小切手にしたの?「普通口座の方がいいとR銀行の人に言われましたが・・・
隠ぺいしたいと思いまして」
>過去に自動車事故過失傷2件ありますね?「はい」
>過去に偽造通貨行使罪があって、これは釈放となっていますがこれは?
「自分の使った1万円札が偽札というのを最後まで知りませんでした」
>今回の逮捕、拘留されたことは?
「友人にも会えず、後々のことを考えたり・・・閉鎖された所で過ごすので反省をします。
よりきちっと過ごさないとと思いました」
>身も心も堪えましたか?「はいっ!!」
>はじめは弁護人を国選で依頼していましたが、途中より私選となっていますが?
「前に国選でお願いしていた方から忙しいと言われましたので・・・」

この答弁に対して、今度は弁護人が口を挟む。
>はじめはお金がないと言って国選を請求したんですよね?「申し訳ありません!!」
>資産申告書も虚偽の申告をしましたよね?「お金のあることがハッキリしたので・・・」
>なぜ弟を巻き込んだのですか?
「迷惑を掛けるな、面倒を見ろというのが親の遺言だった。
それなのに反対のことをして、迷惑を掛けてしまい、情けない限りです。
気持ちを新たにして、義妹を助けたいと今は考えています」

またしても、裁判長からの質問となる。
>そういう時の心境は?「人間の本能というか」
これを聞いた裁判長、
>あなたは犯行を否認することが本能なのですかっ!!と一喝。すると、
「申し訳ありません!! その後聞きもしないのに延々と身の上話を展開し、
最後には今後は同じ過ちを犯しません、次は新しい仕事をきちんとしていく」
と締める被告。

ここまで来ると、一同あきれ顔だ。
新春詐欺シリーズⅢ ~還暦を迎え、晩生をまっとうに生きる~へ続く

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