裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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その男、凶暴につき(後編)

その男、凶暴につき(後編)

(後編までのあらすじ)
法廷に姿を現したイカツイ感じのする大男の被告。
そして今回被告が起訴されているものは、期待を裏切らないもの、傷害に脅迫の併せ技ときた。
これまでも脅迫罪をはじめ、素行の荒さが際立つ被告にとって、今回の状況は不利な状況である。
そんな被告を救うべくノブコブ弁護士が採った方法は、お決まりの証人喚問。
しかしこの証人が残念ながら何とも言えなかった・・・。
いよいよ最後の仕上げ、被告人質問の時間だ。

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ズンチャ証人の登場だけでは、裁判官の心証を改善することができなかったノブコブ弁護人。
そして、挽回をはかるべくノブコブからの被告人質問がはじまった。

>犯行については、どう考えていますか?
「腹を立てていたとは言え、手を挙げてしまったことと、
脅迫については、自己中心的な考えで見ず知らずの人に、
怖い思いをさせてしまったことは反省しています」
・・・風貌に似合わない物腰の柔らかい話しぶりで、殊勝なセリフを慎重に話す被告。

>犯行当日は、次女の帰ってくるのがいつもより遅かったのですか?
「はい。年明けよりバイトをはじめて、段々と帰宅時間が遅くなり始めてきていた。
何もなければ10時には帰って来れるはずのに。それに16になったばかりだし心配だった」
「またこれが夜遊びに繋がるのではないかと思い、そしてこれが原因で私生活が乱れて、
それで学校に行けなくなるのではないかと思い心配でした」
と普通の親心を演じきる被告。まずまずの手応えだ。

>犯行当日は事情を聞かなかったのですか?
「これまでは事情を聞いて口で注意をしていた。ただその時は改善するが一時的なもので続かない」
>最近次女に何か変化はありましたか?
「外見が変化してきた。服が派手になり、髪も染めたりしていたので心配だった」
親心を擽る作戦か、ノブコブ。
>この日も22時に帰ってこなかったときに何かしましたか?
「心配になって電話をしました。そして本人が出たので『早く帰ってこい』と言うと、
『分かった』と返事はありましたが、結局帰ってきませんでした。
そして、また電話をしましたが今度は繋がらなくなってしまいました」
>それで被告が12時前に帰ってきたのですか?
「はい、娘が帰ってきたので玄関へ行きました。そして電話をしたのに出なかったこと、
明日は学校があるといったことが抑えきれず、手が出てしまいました」
>殴ってしまった後に被害者へ何か声を掛けましたか?
「部屋に上がるように声を掛けましたが、娘はそのまま家を出て行ってしまいました」
>その後施設へ行ったらしいですが、そのことを知っていましたか?「知りませんでした」
>今はまた戻っているのですが、その後学校からも呼び出しがあったんですよね?
「はい。学校でタバコを吸ったらしく、学校から呼び出しがあり迎えに行きましたが、
私が到着した時には本人はもう姿を消してしまっていました」
・・・娘さんの防衛本能だろうが。

>結局それからあなたが逮捕されるまで戻ってきませんでしたが、この間何かしましたか?
「自分が学校へ行き、そして姿を消してしまい、その後も家に戻ってこなかったので、
家出人の捜索願いを出しました」
>犯行時は口で言おうと考えなかったのですか?
「できませんでした」
>それはなぜですか?
「待っている間に次第に感情的になってしまいました」
>これ以外にも日ごろから暴力を振るっていましたか?
「過去にはありましたが、最近はありませんでした」
>昨年3月以降はないのですよね?「はい」
>今後はどうしていきたいですか?
「もっと何でも話し合える親子関係をつくりたいと考えています」
・・・やはり、以前から暴力をふるっていたのだ。そりゃ怖いわな。

>次は脅迫について質問をします。この日なぜ●●へ行ったのですか?
「食事をするためです」
>客引きをしている被害者に対してなぜこのような行為を取ったのですか?
「飲食店の前で被害者を見かけて、つい腹を立ててしまいました」
>被害者はあなたから近づいてきたと言っていますが?
「確かに自分から近づいたかもしれません」
>迷惑な行為だとは思いませんか?
「被害者の方に怖い思いをさせてしまい申し訳ないことをしたと思っています」
>原因は何ですか?
「腹を立てたことに対して、我慢する心が足りなかったと考えています」
・・・う~ん。
>今後はどうしますか?
「人に相談できるようにしたいと考えています。またもう少し物を
考えられるようになりたいと思っています。また酒を飲むと乱暴になるとのことなので、
今後止めようかと考えています」
・・・また酒絡みである。ただ酒を飲まなくてもこの大男に逆らう命知らずはそうざらには居ない。
>被害者へ謝罪はしましたか?
「できていません。被害者へ謝罪をしようと考えていたのですが、
店長さんへ被害者の住所を聞いても教えてもらえませんでした」
>謝罪の手紙を書いたのですか?
「はい。お詫びする機会があればお渡ししたいと考えています。
また、その時に被害弁償もお支払したいと考えています」

ノブコブ弁護士の組み立てには、無駄が目立った。
結局ノブコブが立証したかったのは、再犯防止のための就職先・身柄の担保、
粗暴行為の原因源である断酒の誓い、そしてやってしまったことの補償として、
お決まりの謝罪文と被害弁償・・・これだけだった。

この茶番に対して、業を煮やした検察からの被告人質問がはじまる。

 

その男、凶暴につき(完結編)に続く

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