裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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被害者は語る(前編)

被害者は語る(前編)

事件を引き起こしてしまったことについて、原状回復をすることはできない。
それは、万引きクラスの些少な事件と思しきものであっても同様である。
しかし、些少な事件であれば、近似まで原状回復することは可能である。
そういった理由もあって、
これまでは比較的軽微と呼ばれる事件の裁判傍聴を選択していたように思う。

今回UNICOが傍聴した裁判は、自動車運転過失致死、道路交通法違反。
この事件は、まるで原状回復のしようがないものである。

それが直接の原因なのか、傍聴する前から何となく気が重たかった。
それでも傍聴するために重いドアを開けてみると、
広い傍聴席には10名程の関係者がおられ、一斉にUNICOの方へと視線を向ける。
この瞬間に「しまった」とは思ったが、ここまで来ておいて今更引き返すこともできない。
突き刺さるような視線を浴びながら、空いている奥の傍聴席へと腰を掛ける。

すると裁判開始の7分前であったが、佐古似検事と他被害者の遺族4名が既に着席している。
一方弁護側も、大蔵大臣弁護士が着席しており、これからはじまる裁判に向けて資料を読み込んでいた。

裁判開始の5分前。
今回の事件を引き起こした被告、太鼓オヤジが法廷警備員3名と共に出廷する。
太鼓オヤジは見る限り、どこにでも居るオヤジであった。特に反省している様子でもない。

そして修験者裁判長が入廷し、いよいよ裁判がはじまった。
◇  ◇  ◇
ピリピリとした緊張感のなか、検察から起訴状が朗読される。
これまでに2度の訴因、起訴内容の変更が行われ、
ようやくこの日の裁判に至ったことが話される。
罪名は、自動車運転過失致死、道路交通法違反。

まずは、自動車運転過失致死について。
22時30分過ぎ、普通自動車を運転していた被告は、
信号機のない交差点に差し掛かった際に、
一時停止をして前方左右の注意注意義務があるにも関わらずこれを怠り、
一時停止をしないまま15kmの速度でそのまま交差点に進入した。

そこに散歩中で少し休憩をしていた事件の被害者(当時60歳)が直立して一服していたが、
それに気付かず、被告の運転する普通自動車の右前部と被害者とが接触、
被害者に頭蓋骨折、頭蓋内出血の重傷を負わせた後、中枢性呼吸麻痺により死亡した。

そして、被告はこのような傷害を負わせたにも関わらず、
そのまま被害者を保護、報告を怠ったことにより、
自動車運転過失致死に併せて道路交通法違反での起訴となった。

この起訴状に対して、太鼓オヤジと大蔵大臣弁護士は犯行を認め、
裁判は、検察からの冒頭陳述へと進んでいく。

 
被害者は語る(中編)へ続く

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