裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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引き寄せる宿命(中編2)

引き寄せる宿命(中編2)

業務の運転中に交通事故を起こし、不本意ながら人の命を奪ってしまった被告。
一方、店を任せて貰い、結婚を控え・・・と、これから人生の絶頂期を迎える、
まさにその前に命を失ってしまった被害者。
この事故は、双方がこれまでに築きあげてきたものが一瞬にしてひっくり返ってしまったのだ。

そんな自動車運転過失致死という言葉に含まれた、重い裁判の続編。
+  +  +
次に裁判は、弁護士からの被告人質問の時を迎えた。

「交差点を右折しようと走行車線から追い越し車線へ進路変更をしましたか?」
「はい」
「追い越し車線へ進路変更をする前に、追い越し車線に車は居ましたか?」
「2、3台ありました」
「それをやりすごしましたか?」
「はい」
「右後方の確認をしましたか?」
「しました」
「確認をしてから移ったの?」
「はい」
「その時、バイクには気付かなかった?」
「はい」
確認をしても気付かないことがある。それが事故だ。

「実況見分では、確認をすればバイクが90kmの速度で出てきても
気付くことが分かりましたね?」
「はい」
「その通りだと思っていますか?」
「はい、思っています」

「被害者が亡くなったと聞いてどう思いましたか?」
「助かって欲しかったですけど・・・」
「被害者の将来のことをお母様から聞きましたか?」
「はい」
「野球チームの話も聞きましたか?」
「はい」

「亡くなったと聞いて?」
「言葉では言い表せないくらい申し訳ない気持ちで・・・」
「それから車の運転ができなくなったの?」
「はい・・・、・・・怖い、怖かったです」

「その後免許取消となって仕事ではどうしているのですか?」
「助手として乗車して、運転をしたりしなかったり・・・。
殆ど助手席でゴミを収集する肉体労働をしています」
「収入は減りましたか?」
「はい、25万円だったものが、今は15~18万円くらいです」

「被害者の葬儀や通夜には行かず、9月になってからお詫びに行ったのですか?」
「はい」
「それはなぜですか?」
「自分自身ショックが大きくて・・・どうしていいか分からなくなりました。
でも遺族に申し訳ないと思って・・・行こうと思っては行かずで・・・。
・・・それで気持ちの変化があって(9月に)行きました」
「それで被害者のお母さんに会いましたね?」
「いろいろ話して貰いました。
1時間程度の時間で・・・どういう子だったとか、仕事のことなども聞きました」
「被害者が好きな言葉をコピーして貰ったの?」
「はい。それを貰って、常に見えるようにリビングに置いて、
それに手を合わせて毎日祈っています」

「急に交差点を曲がらずに違う交差点にしてもよかったのではないの?」
「次の日から運転していないが、その先の道まで収集していましたので」
「事故後、事故現場には行ったのですか?」
「はい、お花を持って行ったり、毎日通るので必ず手を合わせています」
「頻度は?」
「頻繁ではないですが、これまでに3、4回、時にはビールを置いたりしています」
「被害者に対しては?」
「当時からも本当に申し訳ない気持ちで一杯です」
「事故のことについてあなたのお母さんは何と言っていますか?」
「そのことを話した時に、自分と年も近いのでやっぱり悲しいと言っていました」

「免許取消になったのは?」
「11月6日です」
「今後同じ会社ではこの作業を続けていくのですか?」
「はい」
「車を運転したいとは?」
「正直言ってできない・・・」

「証人と再婚はするつもりですか?」
「はい」

なぜ被告は、葬儀に行かなかったのか。
遺族から「誠意に欠ける」と思われても仕方がない行為だ。

 

 

引き寄せる宿命(中編3)へ続く

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