裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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あの日に戻りたい(結び編)

あの日に戻りたい(結び編)

こうして公判は、どこか釈然としないものを残したまま
裁判長からの被告人質問を迎える。

+ + +

「郵便物のトラブルですが、郵便受けはどういう感じなのですか」
「隙間に入れてもらうように言っていまして、
そこは外部の人が入ってこないようになっています」
「お兄さんと一緒のポストを使っているのですか」
「兄と自分のものは一緒になっています」
「形状がよく分からないのですが」
「隙間にまとめて兄のものと自分のものが一緒に入っていて、
それをまとめて兄が持って行くので・・・」
「いつから郵便物が届かなくなったのですか」
「5年前から来なくなりました」
ここまでは何となく分かった。ただ先ほどと違うことを言っている気がするが・・・。
そんなことはどうでもいい、肝心のことを聞いてくれ、裁判長!!

「これまでに郵便のトラブルについては言えなかった?」
「3分割協議のことをバーッと言われると思って、ずっと飲み込んでいました。
5年で2、3回くらい道端で兄の嫁に会った時にそのことを伝えたのですが、
『よーゆわん』と言われて、そのままです」
遺産は3分割したということか・・・なるほど。
兄としては、他の兄弟より多くもらえると踏んでいたのだろう。
しかし、見事に3分割されたというわけか。

「私書箱の助言を受けたのは最近ですか」
「はい」

「中傷を受けたからと言って、包丁を突き付けられた相手はどうですか」
「相手は危険だと思いビックリすると思います」
「普通はそう思うでしょ!?」
「はい」
「これからも自分が謝ったからといって相手が自分の望むような対応をするか
どうかは分からないですよ。また中傷を受けるかもしれないですよ」
「分かっています、だから低姿勢でいきます。またそうした時には兄の息子、
嫁にも仲に入ってもらいますので・・・大丈夫かと思います」
「謝罪するときに一緒に入って貰うわけですか」
「いや、トラブルが起こった時に・・・先に一人で」
どことなく不穏な感じがするが。

「かなり昔ですが、傷害と暴行がありますね」
「はい、ただ何れも酒がありましたので」
「今回も酒の影響がありましたか」
「それも多少あります」
どうも酒を盾にして言い逃れをしているように映ったのはUNICOだけか。
+ + +
そして、検察からの求刑。
被告は被害者が嫌がらせをしていると思い込み、危険を認知しながらも
今回の犯行に及んだことは悪質である。また被害者も厳罰を希望している。
またこれまでに同種の前科前歴もあることから粗暴性も確認できる。
また同じビルに居住するといったことで再犯の可能性も否定できない。
求刑ですが、懲役1年、事件に使用した包丁は押収することを思料します。

弁護人からは、寛大な判決を希望するとのことで、
その理由を中傷されたこと、遺産分割で日常的な嫌がらせを受けていたこと、
被害者にも多少なり落ち度があること、
そして計画性がなかったこと、家族の支えが期待できること、
被告の粗暴性は古い話なので再犯の可能性はないことを挙げていた。

最後の見せ場被告人最終陳述。
「別段ございません」
あっさりとした幕引きで、結審を迎えるのだった。
★ ★ ★
遺産相続のもつれに端を発した今回の事件。
どこかのドラマに出てきそうな話である。
その嫌がらせとして郵便物を盗るといったスケールの小さな話。
ただこの嫌がらせを受けた被告にとっては、こうした些細なことの
積み重ねはじわじわと追い込まれるのだろう。

それにしても、金が絡むと人間の嫌な部分を見てしまう。
今回の事件、UNICOは事情も事情だし、懲役1年、執行猶予3年としたい。

次回判決2/12(月)9時40分~予定。
(了)

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