裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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言葉にできない(後編)

言葉にできない(後編)

このようにどこかパッとしないまま裁判は淡々と進んでいき、
次は、検察からの被告人質問だ。

+ + +

「暴力をふるうのは今回がはじめてではないですよね?」
「2回目です」
「前回は尺八で被害者の頭を殴ったそうですが、
その時もインターフェロンの注射をしていたのですか?」
「はい」
「その時は何で殴ったのですか?」
「尺八の稽古をしていた時、妻が丁度夕飯の準備をしていまして、
自分はその横で稽古をしていたのですが、
その時妻に『サルが稽古して』と言われまして、それで頭に来て・・・」
確かに被告の顔は、見ようによってはサルにも見えなくはない。

「その時被害者はケガをしましたか?」
「2針程度縫いました」
「調書に『妻から挑発されたのでやった』とありますが、
自分自身でもそうなると抑えが利かなくなるといった自覚はあるのですか?」
「このままやっとったらえらいことになると思っておりまして、
そのことを妻にも言っていたのですが・・・。
自分の態度がおかしかったら言ってくれと伝えていました」
インターフェロンの副作用がそれ程キツイものなのだろうか。

「インターフェロンを投与すると調子が悪くなる、短気になってしまうということですか?」
「自分は嘘を吐かれるのがダメで、自分は嘘を吐かないので、それをされるとどうしても許せない」
「そのことは殴った理由になりますか?」
「ならない」
「それでも殴っている、それもコーヒーの瓶で殴っていますよね?」
「はい」
まさに言葉にできない、といったところだろうか。

「勾留中に誰か来ましたか?」
「いいえ、来ていない」
「終わります」
この質問で被告の凶暴性がより一層顕著となった。

そして、コナン裁判長からの質問。
「奥さんから連絡はありましたか?」
「ないです」
「今後あなたと一緒に関係を続けられないと言っていますが、離婚も了承しますか?」
「はい、妻がそう言うのならばしつこくはしません」
「今後人との関わりあいで腹の立つこともあると思いますが、その時はどうしたらいいと思いますか?」
「自分に対しては辛抱、友達づきあいは殆どないので。
ただ自分の周りにいる知り合いも嘘を吐くことはなかったので」
「今後カッとなる時は?」
「辛抱です」
この回答は再犯の不安が残る内容だ。
+ + +
以上で証拠調べが終わり、検察、弁護人からの最終陳述だ。
「顔面や頭部を拳骨やコーヒーの空き瓶で殴ったり、足蹴にするといった行動に加え、
『妻の態度が生意気だった』という女性を自分に従わせようとするところがあることは
非常に身勝手である。またケガも5針を縫い、また尾てい骨を骨折する、
被害者は現在施設で過ごしているなど不自由な生活を強いられているなど結果は重大である。
求刑は懲役2年が相当と思料します」
なかなか厳しい内容だ。

一方弁護人の主張は、
「インターフェロンの影響があること、結果が加療2か月とやりすぎではあるが、
激情的で計画性がないこと、直ぐに救護をしていること。
妻は現在DVシェルターに居るが、被告が離婚には応じると言っていること、
監督は居ないが同種の前歴がないこと、前回昭和56年に仮出所して以来犯行がないこと、
被害者弁済を考えていること、
被告の病状が悪化しており、医療刑務所へ入るなど無用の費用がかさむことなどを考慮し、
やはり執行猶予つきを望みます」
とこれまた温いことを言っている。

そして、被告。
「謝っても謝り切れないですが、えらいすみませんでしたと妻に言いたい」
+ + +
他人と摩擦を起こさない手段が「自分が我慢すること」といった被告の回答から、
被告の対人面での拙さを窺い知ることができた。
こうした考え方しかできない被告と同じ時間を過ごす人は、
楽しくないし、何より一緒に居て幸せに思えないであろう。
そのことを矯正施設で教育を施すのか、それとも社会内で勉強をするのかの問題である。

ただ被告の希薄な人間関係を考慮すれば、前者が相当であろうとUNICOは考える。
被告の年齢を考えれば、懲役2年でどうにかなるものでもないように思われるが、
やはり懲役2年が妥当であろう。
(了)

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