裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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燃える涙(後編)

燃える涙(後編)

そして、TBS佐古キャスター似の検事からの被告人質問へ進む。

「認識がないよね、しかも過去に窃盗で服役もしているのに・・・。
捕まる時にそれを考えなかったの?」
手厳しい質問だ。
「捕まる・・・ということは考えていないとも考えていたとも正確ではない。
育ってきた環境では頻繁にあったことなので、罪に対する認識が甘いというのが結論です」
千春は動揺しているのだろうか、何を言いたいのかイマイチよく分からない。

「物凄い過去とはどういったものですか?」
「自分は養護施設に居たので、万引きをして捕まっても
『施設の子なぁ・・・仕方ないなぁ』という目で見られていました。
そして後で殴られたら終わり、謝ったら終わりという感じでした」
うん!?これはどうも様子がおかしい。

「前回は窃盗、それも自動車を盗むとかやりましたね、それで服役して、
それから時間も経っていないですよね・・・出所時に犯罪を止めようとは思わなかったの?」
「これまでの環境といいますか、そのあとは自らで選んだことですが、
頻繁に行われていることもあったので・・・」
「そういったことではブレーキにはならない?」
佐古検事にも若干の苛立ちが滲む。
「ブレーキになったかならなかったのか・・・何かしたら捕まるとは思っていました」

「それで他の人の迷惑になるとは考えなかった?」
「盗んだときは考えていませんでした。そして、やってから考えました」
子どもだ。いや、言い訳のレベルは子ども以下である。

「前にも同じ店で何回かやったよね?それは迷惑が掛かる行為だよね?
そのことをやる前には思わない?」
恐怖の質問攻めだ。
「止めようと考えましたが、止められなかった」

「どうして?」
「自分が甘かったとしか言いようがないです」
甘い、本当に甘すぎる。
そして、この甘さを説教好き裁判長が諭すのだった。

「環境が普通でないことは分かりました。
40を過ぎて刑務所へ行って、これはいけないことだと何度も習っているよね」
「それなのに、どうしてまだそれが出てくるの?
あなたは未だ何かを言い訳にしようとしている。
このままじゃ、刑務所と娑婆を行ったり来たりすることになるよね・・・」
ここに来て、被告はうつむきはじめた。

「証人はあなたのことを待つと言ってくれている。
このままでは、その証言の気持ちも台なしになるよね。
10歳も年下の女性・・・本来あなたが守らなければならないのに、何ですか!!
私が彼を監督してと言わせているじゃないですか!!
あなたはそれで平気なのですか!」
と一喝する説教好き裁判長。被告は既にKO。

「これまでのことは関係ない。そのことをよく考えてから社会へもどってらっしゃい!
そして、せめて証人にだけでもいい人だったと言われるようにおなりなさい」
これで被告の実刑は必至である。
◇  ◇  ◇
そして、佐古検事から再度徹底的な矯正教育が必要と断言され、懲役1年の求刑がなされ、
大島弁護士からは、執行猶予は無理だと思いますが、寛大なものを希望すると、
希望的観測を述べられる始末・・・ここは自分で挽回せねばならない被告。
「今回自分がやった犯行で、関係者に大変迷惑を掛けてしまい、
こんな自分に対して励ましてくれる人がいることをはじめて知りました。
今後はいち社会人として更正できるようにしたいと思います」
としおらしい発言をしながらも未だ驚きの発言を繰り返す被告・・・。
その時被告の目からは、再び燃える涙があふれ出すのだった。

 

(了)

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