裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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空手家の信条(前編)

空手家の信条(前編)

某レンタルビデオ店を訪れた被告。
新作プロモーションのため、等身大のスパイダーマンを2階の階段踊り場にディスプレイしていた。
スパイダーマンの口元にはマスクをしていたが、
被告は「前からそこにあることを知っていた」と逮捕後の供述で話している。
マスクを手に入れたいと考える被告にとって、最大のチャンスが到来した。
周囲に誰も居ない。
今がチャンスとばかりにマスクを上着のポケットに入れたその時――、
若い店員(20歳)が気付き、被告に声を掛けた。
その声掛けに対して被告は、
「俺のことを疑っているのか」と逆ギレしたのだ。
そして、店員の肩を小突いた後、
右脚大腿部を一発蹴り、拳骨で額を殴ってしまったのだ。
その犯行の一部始終は防犯カメラできっちりと撮られており万事休す。
程なく、被告は逮捕されることとなったのだった。
罪名は、刑法366条の窃盗と刑法208条の暴行罪。
いずれも親告罪だ。
◇  ◇  ◇
法廷にあらわれた被告は、タイマツのような髪型をした貧相なタイプであった。
このタイマツの年齢は28歳。見た感じもっと年上だと思った。

タイマツは中学卒業後、飲食店など職を転々とし現在は無職。
意外にも離婚歴があり、現在は母と妹と同居している。
今回の事件の前にも平成13年に窃盗(万引き)と道交法違反があったが、
不起訴処分となっており前歴は残っていない。

早々に起訴事実を認めた被告をはじめとする幾三弁護士。
段取りよく情状証人を召集していた。
◇  ◇  ◇
証言台にあらわれた職場の上司と名乗る40代位の女性の証人は、
裁判を傍聴しているもののすべてが「お水」と予想したであろう、
そう思わせる派手な出で立ちであった。
そして、幾三弁護士が証人への質問を開始した。

「被告との関係は?」
「今後被告が働く会社の経営と管理を主人と一緒にしています」
「仕事内容は?」
「造園、外装を予定しています。開始は2014年1月からです」

「事件を起こす前から被告を雇い入れるつもりでしたか?」
「はい、被告とは7、8年前に2年程度、主人と一緒に働いていたことがあったので
よく知っていますから」
「被告の勤務態度はどうですか?」
「遅刻もなく真面目でしたので」

「被告とはいつから知り合いですか?」
「12年前より知っています」
「きっかけは?」
「夫婦で引っ越した先のアパートに彼が住んでいまして。上の階と下の階といった感じで」
「被告はどんな人ですか?」
「子どもの面倒を見てくれて、優しい人です」

「悪いことをしたりは?」
「これまでに一度もないです」
「今回の事件を聞いてどう思いますか?」
「信じられない、びっくりしました」
「普段はどんな感じですか?」
「逆だと。どちらかと言うと真面目で優しい感じなので」

「習い事をしているんですね?」
「空手をしていると思います、主人も一緒ですから」
「ご主人は空手の大会で優勝をされた?」
「はい」
「今後は?」
「とにかく一所懸命に仕事をさせて、自分たちの子どものように管理、
指導をしていくことを誓います」

 

空手家の信条(中編)へ続く

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