裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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<現代版>青年よ、大志を抱け!(中編3)

<現代版>青年よ、大志を抱け!(中編3)

「10万円を資金するので口座を作ってそのキャッシュカードを譲ってほしい」
「作った通帳は被告が使用していい」とある人から言われ、
言われるままに、フラフラとゆうちょ銀行へ行き、口座を作った教員志望の被告。
こんなゆるい被告を守るため、仏壇弁護士は母を証人として喚問するもあえなく撃沈した。
しかし、被告人質問ではなかなかの構成・演出力を見せつけて、
若干傍聴人たちの心をつかみ、裁判を有利に運ぶことに成功した。
ただそうはさせまいと、「切れモノ」吹石似検事が被告人の前に立ち憚る!!
☆  ☆  ☆
「事件の経緯ですが、口座開設の依頼主より電話があったのですか?」
「はい」
「口座開設の依頼をして来た人物のことをまったく知らないのに口座を作って、
それをその人物に渡したということですね、本当は心当たりがあったのではないですか?」
「ないです」
「本当に全く心当たりはないのですか?」
「ないです」
少しずつ事件の内容が明らかになっていく。
ここまで聞いているだけでも恐ろしい話だ。

「パチンコのサクラのアルバイトとはどういったことをするのですか?」
「パチンコのサクラをやるにしても先ず軍資金が要るのでこちらから10万円を渡す。
それでその作った通帳にバイトの報酬が入ってくるという話でした」
・・・うん!?

「口座開設の依頼人はあなたにどうやって10万円を渡すと言っていましたか?」
「先ずは自分名義の口座を作り、そのキャッシュカードを口座開設の依頼人へ送り、
そこに口座開設の依頼人が10万円を振り込むので、自分は通帳で引きだすといった感じです」
一瞬、被告は一体何を言っているのかと一瞬耳を疑った。
そのあと、被告に口座振替という文明の利器があることを
傍聴席より伝えてあげたい気持ちで一杯になった。

「それであなたはどうやって口座開設の依頼人にキャッシュカードを渡したのですか?」
「携帯で指示された通り、ゆうパックを使って指定した住所へ送るといったものでした」
ここまで来るとこの被告はホンマモンの人であるか、
嘘を吐いているかのどちらかしかないことになる。

「おかしいとは思わない?
いきなり知らない人から電話が掛かって来て『キャッシュカードを送れ』って。
何か犯罪に使用されるとか思わなかった?」
言いたいことをきっちり言ってくれる、吹石似はそんな検事だ。

「そのときはパチンコのサクラのバイトだと思っていたので考え付きませんでした」
「それで今、考えたらどうですか?」
「何かの犯罪に使われる可能性は否定できないと思います」
つくづくトホホな回答である。
これで仏壇弁護士の秋元康張りの奇跡の演出は完全に台無しである。

「振り込め詐欺って知っていますか?」
「はい」
「今回のことであなたは犯罪を手伝ったという自覚はありますか?」
「はい」
「それではなぜ当時はそう思わなかったのですか?」
「まず経済状況が逼迫していましたので・・・」
余りにも芸のない回答だ。
それとも、お金がないことを言えば許して貰えるとでも考えているのだろうか。

「生活費は家族ですよね、それなのにどうしてそんなに逼迫するのですか?」
「会社を辞めて、病気になって・・・。
会社は急に辞めたので、お金が貯まらないうちだったので・・・。
その状態で学費や携帯代を親に甘えたくないと思い、自分で支払っていましたので・・・。
収入がない状態だったのでかなり逼迫してしまいました」
ハハハ、親に甘えたくないときましたか。だから社会に甘えるわけですね、この教員志望は!

「今はどう思っていますか?」
「あまり詳しく分からないですが、振り込め詐欺の被害者が居て、
それで騙されて、お金を盗られた人が居る、その方に対して申し訳ない気持ちで一杯です」
心にもないことを話している。これほどまでに分かり易いサンプルを見たことがない。

「郵便局を騙した自覚はありますか?」
「はい」
「郵便局がこうしたことのための措置を講じている。
そのことに対して費用が多く掛かっていることを知っていますか?」
「はい」
晴れ舞台を物の見事にぶち壊された仏壇弁護士が、見兼ねて被告へ質問をする。
「口座開設依頼人より10万円を受け取ったの?」
「受け取っていません」

まさに焼け石に水。
教員志望の被告は、もはや真っ黒である。

 
<現代版>青年よ、大志を抱け!(後編)へ続く

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