(前回までのあらすじ)
検察官からの起訴状の朗読中も、顔色ひとつ変えずに自分の犯行内容を聞き、それをあっさりと認めた被告。
次にはじまる冒頭陳述で、被告の「闇」を垣間見ることとなるのだ。
先の起訴状の朗読では、予習をしっかりとしていた割には、頻繁に噛んでいた真面目な検察官。
「今度こそ」と気合いを入れ直した検察からの冒頭陳述がはじまった。
現在30歳を迎える被告は、高校を卒業後、派遣やアルバイトなど職を転々とすることとなる。
不況が影響していたのか、はたまた被告に問題があったのかまでは分からない。
その後、現在勤めているパチンコ遊技機メーカーで修理工の仕事に就くこととなり、現在の妻と結婚する。
!?
妻が居るんだ。妻が居るのになぜ今回のような犯行に及ぶこととなったのか。
被告には言うに言えないはた迷惑な性癖があったためである。
「嫌がる女性と性交したい」
そう被告は、取り調べ中に話したのだった。
その欲望を、現実に・・・いつからか被告はその欲求に対して忠実な行動へと移しはじめることとなる。
今回犯行時にゴム手袋を使用したとされるが、ゴム手袋は以前から車中に常備していたらしい。
更に被告は、今回の犯行前から夜な夜な車を走らせており、
「ひとり歩き」をしている獲物を求めていたらしい。
それではなぜ今回は実行してしまったのか。
それは、被告の中での決行条件、すなわち「深夜の一人歩き」「周囲に誰も居ない」ことが、
今回は不幸にも整ってしまったとのことだった。
被告の逮捕後に取り調べに行った警察に対して、被告の妻はこう話したという。
「以前から車中にゴム手袋があったことには気付いていたが、まさか犯行に使用するとは考えなかった」と。
当たり前である。誰がゴム手袋を犯行に使用すると考えるだろうか。
更に被告の妻はこう続ける。
「犯行当日は実家に帰省中だったので、詳しいことは分からない」
「翌日に家に戻ったが、被告はいつもと変わらなかった」とのことだった。
この日はこれ以上の審議はなかった。
というのもこのような被告である。当然余罪が考えられるためだ。
傍聴席に妻の姿を見かけなかったが、被告の親族らしき人たちは見かけることができた。
こんなどうしようもない被告でも、家族にとっては家族なのだろう。
ただ被告のご家族には申し訳ないが、
「ここほれワンワン」方式で、警察には被告の余罪を余すことなく掘り起こして貰いたいものだ。
(了)