裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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性犯罪

困った性癖③

(前回までのあらすじ)
検察官からの起訴状の朗読中も、顔色ひとつ変えずに自分の犯行内容を聞き、それをあっさりと認めた被告。
次にはじまる冒頭陳述で、被告の「闇」を垣間見ることとなるのだ。

先の起訴状の朗読では、予習をしっかりとしていた割には、頻繁に噛んでいた真面目な検察官。
「今度こそ」と気合いを入れ直した検察からの冒頭陳述がはじまった。

現在30歳を迎える被告は、高校を卒業後、派遣やアルバイトなど職を転々とすることとなる。
不況が影響していたのか、はたまた被告に問題があったのかまでは分からない。
その後、現在勤めているパチンコ遊技機メーカーで修理工の仕事に就くこととなり、現在の妻と結婚する。
!?
妻が居るんだ。妻が居るのになぜ今回のような犯行に及ぶこととなったのか。
被告には言うに言えないはた迷惑な性癖があったためである。
「嫌がる女性と性交したい」
そう被告は、取り調べ中に話したのだった。

その欲望を、現実に・・・いつからか被告はその欲求に対して忠実な行動へと移しはじめることとなる。
今回犯行時にゴム手袋を使用したとされるが、ゴム手袋は以前から車中に常備していたらしい。
更に被告は、今回の犯行前から夜な夜な車を走らせており、
「ひとり歩き」をしている獲物を求めていたらしい。

それではなぜ今回は実行してしまったのか。
それは、被告の中での決行条件、すなわち「深夜の一人歩き」「周囲に誰も居ない」ことが、
今回は不幸にも整ってしまったとのことだった。

被告の逮捕後に取り調べに行った警察に対して、被告の妻はこう話したという。
「以前から車中にゴム手袋があったことには気付いていたが、まさか犯行に使用するとは考えなかった」と。
当たり前である。誰がゴム手袋を犯行に使用すると考えるだろうか。

更に被告の妻はこう続ける。
「犯行当日は実家に帰省中だったので、詳しいことは分からない」
「翌日に家に戻ったが、被告はいつもと変わらなかった」とのことだった。

この日はこれ以上の審議はなかった。
というのもこのような被告である。当然余罪が考えられるためだ。
傍聴席に妻の姿を見かけなかったが、被告の親族らしき人たちは見かけることができた。
こんなどうしようもない被告でも、家族にとっては家族なのだろう。

ただ被告のご家族には申し訳ないが、
「ここほれワンワン」方式で、警察には被告の余罪を余すことなく掘り起こして貰いたいものだ。

(了)

困った性癖②

(前回までのあらすじ)
わいせつ略取、逮捕監禁、強姦、窃盗といった性犯罪フルセットで起訴された被告。
そんな被告の脇を固めるのが、何の予習もしてきていないアンコールワットを見据えるマーライオンの国選。
相対して、予習に余念のない真面目な検察官とそして謎のスキンヘッド裁判長。
さぁ、検察からの起訴状の朗読がはじまる時間だ。

H24年10月2日午前2時過ぎ。
被告は、路上で当時20歳の被害者がひとりで歩いているのを見付けてしまった。
被害者の姿を見付けるいなや、被告は周囲に誰も居ないことを確認。
すぐに強姦目的で被害者に狙いを絞り、そして行動へと移す。
ここからの行動は早かった。
被害者の進行方向を阻むように車を止めて、
すかさず被害者の左側から近づく。
そして空かさず被害者の首元にカッターを突き付けて、
「騒いだら分かっているやろうな」と脅して、自分の車に被害者を乗せる。
そのまま車を走らせ、近くにあるラブホテル
「ここほれワンワン」を見付けると迷うことなくチェックインし、
そのまま被害者を部屋へと連れ込んだ。

部屋に入ると欲望を抑えきれなくなった被告は、嫌がる被害者に口淫を要求。
そのまま姦淫することとなる。
用を足した被告は、別れ際に「くれぐれも口外しないように」と釘をさして被害者を解放した。
ここまで時間にしておよそ1時間程度。目にも止まらぬ早業である。

自由を取り戻した被害者は、被告の下らない脅しにも屈せず、速攻で母親にTELする。
それを聞いた母親は、被害者を病院へ連れて行く。
結果病院を通じて警察へと通報され、まもなくお縄となったのだった。

朗読中も表情ひとつ変えずに、じっと下を見てやり過ごす被告。
裁判官から起訴状の内容に異論はないかと問われても、
顔色ひとつ変えずに「間違いありません」と応える被告。
反省しているようにも、後悔しているようにも見えなかった。

次に続く、冒頭陳述で被告の暗い闇を垣間見ることとなる。
困った性癖③へ続く

困った性癖

気付けば年の瀬である。
師も走ると言われるほど忙しい師走にも関わらず、
だらしのない下半身信徒たちは、今日も下半身を熱くしているようだ。

法廷に現れた被告は、一見するとそれはそれはおとなしそうで、
どこにでも居る普通の兄ちゃんといった感じを受けた。
この男の罪名は、あらかじめ開廷表で確認しているため、UNICOは知っている。
わいせつ略取、逮捕監禁、強姦、窃盗。
性犯罪フルラインナップといった罪名であり、
一通りの悪事をやり切ったな、といったところである。

この男が入廷するひと足先に、被告と同世代に見える
堅物を絵にかいたような検察がこれからはじまる裁判の予習を行っている。
やはり将来のことを考えている検察官という人種は総じて勤勉であるようだ。
そんな勤勉な検察とは裏腹に、開廷時間ギリギリになって駆け込んできたのが、
アンコールワットにあるライオン像を彷彿させる還暦をゆうに越しているであろう国選弁護人だ。
この弁護人は当然何の予習もしていない風で、到着するなり椅子にドカッと腰を下ろして、
何かを考えているような難しい表情で宙を仰いでいた。
恐らくこれがポーズであろうことは疑いようがない。

ほどなく3名連なって裁判官が入廷する。
2名は若手の真面目そうな男女であった。
それもそのはず、この法廷を執り仕切る裁判長がなぞのスキンヘッドであったためだ。
さすが公務員、相対的なバランスを配慮しての申し分のない配置だ。

開廷時間となったため、スキンヘッドがその旨を告げる。
そして被告への人定質問が済み、予習を済ませた検察からの起訴状の朗読がはじまる。
「被害者の名前の公表はできませんので、被害者のことは被害者と置き換えさせて頂きます」
とことわりを入れることで、法廷内に緊張感が走る。

それでも、被告はうつむいたままで表情ひとつ変化させることはなかった。
困った性癖②へ続く

「長~いお付き合い」ならぬ「長~い罪名」

ぱっと見SE風であるその男の罪名は、
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、
大阪府公害に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反。

長い。あまりにも長すぎる。
この長い罪名を噛まずに言い切ることは不可能に違いない。
そのことを知ってか知らずか、風呂敷メガネと勝手に名づけた検察官は、
「今日は代理なもので・・・」と予防線を張った後に、おずおずと起訴状の朗読を読みはじめる。

この長い罪名には3つの罪が犇めいている。
ひとつめは児童買春。
当時17歳の少女に、少女が17歳であることを知りながら1万5千円の金銭を支払い、
天王寺のホテルで性交。これは分かり易い。
そして、その性交中の様子をデジタルビデオカメラに収めるというお決まりの変態パターンで、
児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反・・・に該当し、
無事にふたつめの罪名が確定する。ここまでは至って順調、順調。

問題は最後の条例違反である。
被告は、工事現場付近に置いてあるカラーコーンを見て、
変態の神が被告に宿り、そして行動へと移すこととなる。
街路樹付近にカラーコーンを置き、そのカラーコーンの中にデジタルビデオカメラを設置。
10名程度の通行人の太ももやスカート内を撮影した。
この悪行に下校途中の勘のいい女子高生が気付いて、あえなく御用となったのだった。

被告は、こうした盗撮行為を何度も繰り返しており、近日余罪の追訴予定が決まっており、
その立証は次回以降に持ち越されることとなった。

大学卒業後に学習塾、そして会社事務と勤め、表街道を歩んでいた被告にいったい何があったのか。
数年前にも今回と同様に16歳の児童を買春して捕まり、その時は罰金刑に処され、
さらに解雇という社会的制裁を受けた40代の被告。
不惑の40歳に達し、人生を達観したのかもしれない。ほどなくして今回の事件を引き起こしている。
その覚悟の表れであろうか。
起訴状の朗読中もどこか他人事のような表情で聞いており、
時折笑いをかみしめるような不敵な表情も浮かべていた。

今回は実刑を免れないだろう。
しかし、服役後にまた繰り返すに違いない。
そうUNICOは感じずには入られなかった。

昭和の風情に浸りながら年の瀬を迎える(後編)

(前回までのあらすじ)
果物店で働く女性店員のお尻を酔った勢いで触り、そのことを指摘されると逆ギレをしてしまい、
あえなく逮捕、起訴された被告。ほとほと間抜けな話である。
そんな間抜けな被告の明日を守るため、潔い誘導質問をやってのける一昔前の老弁護人。
老弁護人の術中には決して嵌らない!と女性代表としての重責を果たすべく、
イライラ検事が論告求刑のためにいざ立ち上がる!

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被告が犯行時に酩酊状態であり、覚えていないとはいうものの、
見ず知らずの女性のお尻を触るといった行為は、
被害者の不快感、嫌悪感を考えると決して軽くはない!
これまでに同種の犯行はないが、前歴があり相当に規範意識も薄れていることなどを考慮して、
罰金30万円を相当とする、と勢いよくまくし立てるピリピリ検事。

これに負けじと「秘技・誘導質問」で老弁護士が最終陳述をはじめた。
被告が犯行を素直に認めていること、また深く恥じていること、
また包み隠さず犯行について供述していること。
犯行時には酔っぱらっており、ほろ酔い気分の千鳥足になっていたと思われる状態で、
劣情・・・モヤモヤとしてしまい犯行に及んでしまうといった
多少判断力、抑制することを欠く状態であったこと。
中学卒業後は整備工の後とび職人となり、以後は一筋で真面目に働いていること。
前科6犯、前歴1犯ではあるが、何れも居酒屋でのいさかいといったもので、
執行猶予3件、罰金刑3件のいずれもがアルコールを摂取した時によるものであり、
今後は断酒を誓っていることからも、今後はこのようなことはおこさないものと思われます。
4人兄弟で兄弟は居るが、いずれも音信不通でありますが、
実社会で一層、本当に最後の、本当に最後の、機会を与えて頂きたいと願う限りです。

・・・これまで以上に大きな、堂々とした読み方。
これほどまで情感たっぷりに訴えかける最終陳述をUNICOはお目に掛かったことはなかった。
「本当に最後の、本当に最後の」といった辺りでは、
本当に最後になるのではないか、と思わせるほどの迫力があったものなぁ。

そして、裁判長から驚きの発言が繰り出される。
「弁護人、10分程度の時間はありますか?」
「はい」
「ここで判決を出します」
「えっ!」
昭和の生き字引である弁護人は、そのスピード化の波についていけないといった様子だった。
7分ほどの沈黙後に、有言実行判決が下った。

主文、被告人を罰金30万円に処する。ただし90日の未決拘留日数を1日6,000円に換算する。

見ず知らずの女性の尻を触るという行為は好ましくなく、被害者感情もあるので罰金刑を選択した。
弁護人費用は公庫負担とする。これまでに今回と同質の犯行がなく初犯であること、
また断酒するとも言っていることから罰金刑が相当であると思料した。
今後は酒を飲まないようにし、二度と起こさないようにしてくださいと告げて閉廷となった。

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閉廷後、老弁護士が被告に近づき、判決内容を分かり易く伝えていた。
結果的に罰金刑となったが、これ以上の拘留もなく、実質金銭的な負担もせずに済むため、
願ったり叶ったりの結果であろう。
その後笑顔で老弁護士は法定を後にした。

被害者にとっては、納得のいかない結論であったかもしれない。
ただ酔ってしたことを大目に見るといった風土は、まだまだ昭和の考えであろう。
何より、老弁護人の奇跡の誘導を見ることができたことは、大きな収穫であった。
またどこかの法廷でお目にかかれることを期待して・・・。
(了)