裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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盗品等有償譲受

時には見た目で損をする(後編)

カーナビ12台を窃取したものと知りながら、
1台約6万円で譲り受け、これらを72万円で売却したことにより、
盗品等有償譲受といった小難しい罪名で起訴されているジャージめがね。
これまでに共犯者と共に3000万円程度の荒稼ぎをするといった驚きの事実も分かった。
そんな裁判もいよいよ大詰め、被告人質問の時間だ。
◇  ◇  ◇
まずはひげ剃り負け弁護士からの質問。
「今回は何のためにやってのですか?」
「お金のためというか・・・」
「お金ですか、その使い道は?」
「生活費に充てたり、ギャンブルにも使ったりしています」
3000万円の折半、1500万円・・・生活費にそれだけの金額を使う人は数少ないはずだ。

「ほかに仕事は?」
「していません」
「今裁判を受けていますが、事件のことをどう思っていますか?」
「まぁ・・・反省しています」
まぁって。

「反省とは?」
「被害者に損害を与えたことについては反省しています」
「犯行をやっている時は?」
「なかったです」
そんなものだろう。やっている時は金しか見えない。

「前回もやって同じように裁判を受けたと思いますが、
前回の時に悪いとかは思わなかったですか?」
「そんなに考えてなかったです。確かに前の裁判の時にも同じことを聞かれたかと思いますが、
そんなに思わなかった・・・気持ちの甘さで・・・犯罪も軽々しく考えていました。大変申し訳ないです」
捕まったのは運が悪かっただけ・・・バレなきゃいいやといったところか。

「今後は?」
「やらない」
「今回やってしまった考えられる理由は何ですか?」
「周りの環境と気持ちの弱さです」
1番の原因として周りの環境を挙げていることについては潔くないと思う。

「それはどういうことですか?」
「流されやすいので・・・」
「なぜ流されやすいのですか?」
「他の人からよくして貰えたらその人に応えようと思います」
ほう!?

「そういった思いが強くなるのですか?」
「はい」
「昔からですか?」
「・・・そうですね」
ほうほう。

「何かそうなってしまうような出来事がありましたか?」
「家ばかりが原因ではないと思いますが、子ども時代にあまり愛情を受けていないと言いますか、
母の愛とかあまり受けていないので・・・そういうのもあると思います。
子どもの時には母の身勝手で捨てられましたので・・・」
「人の期待にこたえるということは悪いことではないと思いますが、
何でもかんでもいいとは言えないですよね?」
「はい、犯罪はダメだと思います」

「今後はもうないと言うわけですね、前回と今回とではどこか違いますか?」
「違います。今回は環境を変えてイチからやり直します。自分が甘かったです」
「服役後は?」
「●●・・・母の下で、母と自営の手伝いをしたいと思っています」
「そのことについてお母さんと話せていますか?」
「いいえ、また証人を介して・・・」
「更正できますか?」
「はい」
被告の発言を聞いてUNICOは違和感を覚えた。
確かに恵まれない幼少期を過ごした被告のことを考えると同情する余地がないではない。
ただ・・・被告の主張には説得力が何もない。
◇  ◇  ◇
そんな違和感を残したまま、次はカミソリ負け検事からの質問。
「前回も同じ罪を犯して捕まっていますよね、
それで今回執行猶予期間中の犯行、執行猶予の意味は分かっていますか?」
「はい」
「一時別の所に住んでいて、また同じところに戻っていますが?」
「釈放後に▲▲へ行きましたが・・・」
「戻ったのは共犯者に誘われて?」
「・・・そうですね」
「また共犯者から話が出た時に執行猶予中であることを考えませんでしたか?」
「考えてなかったです。軽く考えていました。自分の認識の足りなさです」
「前回の出所後、誰かに仕事の相談はしましたか?」
「その時はなかったです」

「お母さんが会社経営しておられるとのことですが、
前回は相談をしましたか?
「いいえ、元々連絡がなく交流もありませんので」
「お母さんの会社は何をされていますか」
「建設関係です、でもそれ以上のことは何も・・・」
「規模は?」
「知らないです」
子と親の確執が明確になった。

「カーナビ以外にバーを経営していたとありましたが、それはいつですか?」
「はっきりした年は・・・平成23年の秋くらいですかね」
「資金は?」
「カーナビを元手にして・・・」
「バーは後輩に任せて持ち逃げされたと?」
「はい」
「カーナビはうまみが大きいと思いますが、今後やらなければ思うような
収入が得られない思いますが、今後やらないといった何か理由はありますか?」
「周りの環境です。自分を信じてくれる人たちが居て、
それにこたえられる人でありたいと思っているので大丈夫です」
これを聞いて、UNICOの違和感が払拭された。
その後検察からの論告求刑で、懲役3年と罰金50万円が求刑され、
ひげ剃り負け弁護士は、適正な処罰をとの主張がなされた。
そして被告人最終陳述。
「もう今回のことで皆様に多大な迷惑を掛けました。申し訳ありませんでした」
とありきたりな陳述をして、結審を迎えたのだった。
◇  ◇  ◇
結局判決までは追わなかったが、執行猶予期間中の犯行、
さらに前回と同じ犯行ということで、実刑は免れない。
ただ出所後が問題である。
確執を残したまま母親が経営する会社で、
問題を周囲のせいにする被告が、汗して働く姿を想像することができなかった。
それだけではない。
内容は勿論、その話し方や態度、何より面構えに必死さが傍聴席には全く伝わってこなかった。
これらを勘案すると再犯の可能性は高い・・・と思わざるを得なかった。
(了)

時には見た目で損をする(中後編)

カーナビ12台を窃取したものと知りながら、
1台約6万円で譲り受け、これらを72万円で売却したことにより、
盗品等有償譲受といった小難しい罪名で起訴されているジャージめがね。
これまでに共犯者と共に3000万円程度の荒稼ぎをするといった驚きの事実も分かった。
そんな被告を救うため、ひげ剃り負け弁護士が証人を喚問した。
☆  ☆  ☆
まずは、ひげ剃り負け弁護士からの証人質問。
証人として被告の知人という50代くらいの女性が出廷。

「被告とはどんな関係ですか?」
「娘の友人として、被告が18歳の時から家に出入りしていました」
「今でも交流がありますか?」
「はい」
「家に来る頻度はどれ位ですか?」
「その年によって違いますが、年に1、2回程度で、あとは電話などで連絡を取っています」
「被告はどんな存在ですか?」
「血は繋がっていませんが息子のような存在です」
と証言する寛大な女性。なかなか他人を息子のようには思えない。

「被告に前があることは知っていますか?」
「知っています」
「事件後に被告と会いましたか?」
「はい、だから今回の事件については大体知っています」
「前に盗品等を販売していたことは?」
「知っています」
「今回の事件の内容は?」
「前と同じことをしたということを知っています」

「何のために犯行を犯したのでしょうか?」
「詳しくは知りませんが、被告は意志の弱いところがあるので、そうなったのかなと思っています」
質問に対する回答のようで、回答になっていない。

「事件についてあなたはどう思っていますか?」
「良くないと思いますが、被告を18のころから知っていて・・・、
育った環境かなぁ・・・と。根はやさしいので・・・」
これも同様、回答になっていない。

「今回のことは悪いことをしたと思いますか?」
「はい」
「どう悪いですか?」
「今月のはじめに私も車上荒らしにあって、その時、金品を盗られた
ことよりも荒らされたことの方がショックでした。
被害にあった人のことを考えるとよくないことだと思う・・・」
ただ被告は意志が弱く、安易な所もあるため、被害者が目の前にいないことから、
ズルズルとやってしまったのではないかと思います」
この証言は、被告が悪いことをしたとは核の部分では思っていないと感じた。

「あなたは面会には行きましたか?」
「4回行きました。また手紙は20通程度やりとりをしました」
「どんなやりとりをしましたか?」
「健康のこととか、今後のことなどを話しました」
「執行猶予中の犯行なので、服役は免れないと思いますが、社会復帰後はどうなってほしいですか?」
「やっぱり、ちゃんとした仕事に就いてほしいと考えています。
だかた被告のお母さんと連絡を取り合って、社会復帰をさせたいと考えています」
「今後監督はしますか?」
「するつもりです」
「具体的には?」
「お母さんと連絡を取り合って、きちっとした仕事に就いてもらうようにサポートします」
模範的な回答である。
☆  ☆  ☆
続いて、検察からの証人質問。

「地元は××ですか?」
「はい」
「今日はわざわざ××からこの裁判に出廷しましたか?」
「はい、主人が▲▲に来ていますので、今日は▲▲からですが」
「同じような事件を前にも起こしていますが知っていますか?」
「はい」
「前の事件を起こしたあと以後、会って話をされましたか?」
「はい、当時は主人が大阪に居て、その時に一緒にご飯を食べたりしました。
時には車で送ったこともありました」
「その時被告はどういう生活をしていますか?」
「スナックをやると言っていたので、それをやっていると思っていました。
そしてそれで生計を立てていると思っていました」

「事件当時はスナックをやめたていたことは?」
「知らなかったです」
「スナックは人に任せて、その任せた人にお金を持ち逃げされて潰れたのですが、
その後、共犯者が先に捕まり、それを知って本人が逃亡していたことは知っていましたか?」
「××に戻ってきた時に事情は言わなかったのですが、大阪で何かやったかな、
それで××に帰ってきたのかなとは思いましたが、
まさか事件を起こしているとは知りませんでした」

「社会復帰後は被告との関係をどうされますか?
被告は確か娘さんの友人とありましたが、交際相手ではないのですか?」
「はい」
「前がある人のことを世間では嫌いますが、今後はどうなさりますか?」
「娘も結婚して婿も居ますが、婿も被告のことを知っていまして付き合いもありますし、
今日のことも話しています。
取りあえず帰って来てからみんなで考えます」
☆  ☆  ☆
そして、学級委員長からも質問がなされる。
「娘さんの友人のお世話をすることは大変だと思いますが?」
「18の時から家庭が恵まれず、自分を母のように慕ってくれていたので、
今後も見守っていきたいと思っています」
何という面倒見の良さなのだろう。

 
時には見た目で損をする(後編)へ続く

時には見た目で損をする(中編)

カーナビ12台を窃取したものと知りながら、
1台約6万円で譲り受け、これらを72万円で売却したことにより、
盗品等有償譲受といった小難しい罪名で起訴されているジャージめがね。
次に控えるスキンヘッド検事からの冒頭陳述で狡猾とも呼べる犯行の手口が明らかとなる。
*  *  *
先ずは被告の身上、経歴から。
被告は中学卒業後、職を転々としていた。離婚歴があり子どももいる。
現在はシノギ以外で稼いでおり、逮捕時にはマンガ喫茶などで寝泊まりしていたらしい。
これまでに同種の前歴があり、その時は懲役2年、執行猶予4年、罰金20万円に処されている。
今回の事件を起こしたのは、執行猶予中であったとのこと。

続いて今回の犯行の手口。
被告は、共犯者と共に盗品等を売りさばいて生計を立てていた。
このシノギで、被告は窃盗犯との交渉、売り払いなどを担い、
常習的、職業的に行っていたらしい。
そしてシノギで得た利益は、共犯者と折半していたとのこと。

今回の事件は大手メーカーのカーナビにより足が付いたらしい。
上記メーカー製のカーナビ数台のうち1台は業者を経由して一般人の手に渡っていた。
それを正規の業者が発見し、カーナビが被害者のものと一致したことにより今回の事件が発覚した。

また、被告らが盗品の買い取りの際に必要な
現金36万円が窃盗犯に送金されている事実も分かっている。
更に、送られてきた小包から被告の指紋も検出されている。
更にさらに、盗品の入った小包の宅配を担った郵便局員の証言でも、
共犯者と被告とが共犯関係であり、盗品を明らかにするような証言があり、
そのウラも取れているらしい。

起訴状にもあったが、被告らは盗品のカーナビをおよそ1台6万円で買い取り売りさばいていた。
なおこの買い取り価格でこじれた場合には共犯者が直接交渉を行い、
値付けを行うなど主犯的な働きを見せていたとのことだが、
被告もこの売買益を得ているため、共同正犯とみなされている。

そして実行の手口は、窃盗犯から被告へ
「仕事をしたものを買い取って欲しい」との連絡が入り、
被告が金額を提示する→交渉成立→被告は入金をし、
窃盗犯が盗品を送付するといった単純なモデルのようだ。

今回は共犯者が先に身柄を拘束され、それを受けて警察より被告へ連絡が入った。
それを聞いて被告は逃亡を決意し、執行猶予期間中は逃げ切ろうと考えていたとのこと。
そして、執行猶予期間が過ぎたところで、被告はノコノコと警察に出頭したということらしい。

被告は逮捕後の供述で、
「今回の犯行は、生活費、遊興費欲しさに行ったものであり、
共犯者から誘われたものである」と言っているらしい。

彼らの使用していた通帳の残高は2億円程度あったらしい。
その中から購入費などの諸経費を差し引くと実質の利益は3000万円くらいらしいが・・・。
なかなかシノギは簡単に稼げるようである。

 

 

時には見た目で損をする(中後編)へ続く

時には見た目で損をする(前編)

傍聴席へ行くと、スキンヘッドで目つきの鋭い男性が着席していた。
どうやらこのゴリモンが検察官であるらしい。
ついつい頭の方に目を向けてみると公務員である検察官には珍しく、
丁寧に剃りあげられたスキンヘッドである。
物珍しさも手伝って、スキンヘッドに目を向けてみると、
頭皮には小さな赤い斑点が至る所にあった。
ひげ剃り負けならぬカミソリ負けといったところであろうか。

一方の弁護士は、若く一見淡泊そうな印象を受ける人物であったが、
残念なことにこの淡泊弁護士は、ひげ剃り負けをしていた。

ひげ剃り負け VS カミソリ負け。
何が何やら訳の分からないことになってきた。

そんな下らない観察をしているうちに、傍聴席には怪しげな4人衆が入ってきた。
被告の関係者らしいが、その内訳は、水商売風の派手な女性が2人と
ホストらしき男性1名、そして、作業員風男性1名であった。
オーソドックスな風景である。

そして着席するや否や若い方の水商売女性が、スマホを片手に操作をはじめながら、
隣に座るホストの男性に話しかけている。
このありふれた夜の光景は、これから裁判がはじまるといった緊張感を忘れさせるひと時だ。
しかし、法廷内の風紀の乱れを許さない書記官が空かさず登場、
水商売が持つスマホの電源は即刻消されることとなった。

そこへ学級委員長といった裁判官が法廷に入ってきた。
それに遅れること1分程度、満を持してジャージめがねの被告が入廷、
いよいよ盗品等有償譲受の審議がはじまった。
+  +  +
まずは、被告が証言台へと呼ばれ本人確認がはじまる。
証言台へ向かう途中に、被告はホストに何やら目配せをしていた。
このホストが証人となるのだろうか。

本人確認の中で生年月日が告げられ、このジャージめがねの年齢は35歳とのことだった。
ということはこの緊張感のない傍聴人たちは、
揃って同世代なのだろうかと思うと複雑な気持ちになった。

本人に間違いないことが分かったので、
次にスキンヘッドからの起訴状の朗読がはじまる。

共犯者と共謀のうえ、カーナビ12台を窃取したものと知りながら、
1台約6万円で譲り受け、これらを72万円で売却したことによるもの。
盗品等有償譲受、刑法256条第2項。
要は、窃盗犯が盗んだものを安く買い取り、
それを盗品とは言わずに他者へ売り捌くという
自分の手を直接的に汚さない愚劣な犯行である。

その愚劣さを反映してだろうか、
この法廷刑も無償譲受罪が3年以下の懲役、
運搬罪・保管罪・有償譲受罪・有償処分あっせん罪が
10年以下の懲役及び50万円以下の罰金と単純窃盗罪のそれよりも重くなっている(WIKI)。
+  +  +
起訴状の内容をあっさりと認めたジャージめがねの被告。
傍聴席から見た感じはあまり反省しているといった様子は窺えなかったが、
これも作戦のひとつなのだろうか。

 

 

時には見た目で損をする(中編)へ続く