裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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詐欺

有名な「詐欺事件」を傍聴してみる~谷絹子元カリスマ女経営者③

(前回までのあらすじ)
検察官2名がかりの長~い起訴状の朗読中も表情ひとつ変えず、直視して聞いている元カリスマ女経営者の谷絹子。
そして、この長い起訴状の朗読が終わり、次は被告人陳述だ。
・・・やったのか?谷絹子。

「検察官の冒頭陳述で、何か異論はありますか」という裁判官からの問いに対して、
「民事再生法違反については異論がありませんが、詐欺については事実誤認のため無罪を主張します」

一片の曇りなし。
そう谷絹子の背中は語っていた。
ただまさか無罪の主張とは・・・法廷内も一時騒然とした。
続いて、金融の達人弁護士の陳述がはじまる。
「民事再生法違反につきましては、周りの人や関係者など多くの人に迷惑をかけてしまい、
被告も反省をしております」とあっさり肯定。
また「報告した数字は虚偽であり、在庫も2700万円ではなかった」とまで付け加えていた。
民事再生法違反については、全く争うつもりはないらしい。
次に問題の詐欺だが・・・。
開口一番「まず証拠がない」「そもそも銀行は、運転資金のための融資ではなかったと言っておられるようだが、
それはないですね・・・むしろ(経営状態が悪いことを)銀行が一番知っていたはずですから」と言い切った。
「その証拠に生地や仕入れ、販売などを行う際に、その取引先、子会社の国際貿易への荷為替をUFOより
発行するのだが、銀行はきちんとその事実を確かめずに荷為替を買い取り続けていた」
「また長期にわたる貸付はすべて無担保の信用取引のみであったこと」
「またUFOの当座預金ですが、その支出内容が自行や他行への返済に回っていることは、当の銀行が
一番知り得る状況であり、これらを踏まえても銀行がUFOの経営状態を把握していなかったという
銀行の主張は有り得ないと言わざるを得ない」と言い切った。
更に金融の達人は続ける。
「寧ろ銀行は、谷絹子被告が一時TV出演を果たし、『カリスマ女経営者』と言われていたことで、
その融資を積極的に行っていたところがあり、また被告に貸付を行うことが、
行内ではひとつのブランドになっており、りそなに至っては与信枠が30億から40億円に拡張されるなど、
不正貸付の疑いも考えられるため、むしろ被告が被害者である」
と言い切ったのであった。

ここまで来れば泥沼の様相をぬぐえない。
この複雑な公判は、証人喚問、証拠調べを含めて、次回以降15回を予定しているようである。
UNICOの所感だが、はじめは被告をとんでもないと思い、起訴状を聞いていたが、
最後は揺れはじめた。
というのも詐欺の直接的な被害者が「金融のプロである」銀行ならば、
それは「だまされた方も悪い」と思わず谷被告の肩を持ちたくなるのが人情である。
いずれにしても、小さな公判ばかりを見てきたUNICOにとっては、
決してほめられたことをしていない被告の堂々とした態度には、
ただただ驚くしかなかったのである。

 

有名な「詐欺事件」を傍聴してみる~谷絹子元カリスマ女経営者②

(前回までのあらすじ)
60歳をゆうに超えるも世間からは「元カリスマ女経営者」と囃し立てられ、
その効果で一時的にではあるが、「カリスマ女経営者」としてTV出演まで果たした谷被告。
その真っ直ぐに伸びた背筋、ふてぶてしいまでに堂々とした態度、
そしてまだまだ衰えを感じさせない鋭い眼光など谷被告の大物ぶりに
完全に翻弄されたUNICO。
このあと、これまた想像を絶する「長く」「眠い」起訴状の朗読が検察官から繰り出される。

谷被告は、2件の罪に問われている。
起訴状の内容は、余りにも複雑であったため、UNICOの理解も到底おぼつかないので、
以下要点だけを絞って記述することとする。

1件目は「詐欺」に関するものであった。
被告(谷絹子)が経営する衣料品輸入会社(UFO)が、谷被告の夫や身内が経営する関連会社GSF、
アイデア社、中国法人ホースボーキ有限公司、上海服装、上海本子国際貿易他を巧みに利用し、
派手な粉飾決算をしまくって、銀行他外部取引業者に、谷被告の会社とその傘下企業の業績がいいように見せかけ、
また架空取引も繰り返し行って、大手都市銀行数社に多額の融資をさせたことが「詐欺にあたる」
との検察の主張であった。
ただ検察によるとその額がUNICOの予想を遥かにこえるものであった。
というのもUFOに限っては、架空取引額は4億7000万円程度に上り、
また売上額も盛りに盛っており、当時2億2千万~5千万円程度だったものを452億~892億円に粉飾。
更に負債金額は、95億円と申告していたが、実際は333億円程度も抱えていたとのことであった。
また関連会社も同様に「粉飾もここまでやればアッパレ」と思うほどの計上を上げていたとのことだった。
ゆえに検察は、この架空取引や売上を信用した大手銀行が「信用与信」という名目で増額に増額を重ね、
M銀行とR銀行と併せて31億円程度までに膨れ上がったことを争点にしたいようである。
ただ大手銀行の調査員に突っ込みを入れたくなるのは、
UFOの収支バランスが、谷被告逮捕時には収入の94%にあたる額を「借入金返済」に充てていたのであるが。

2件目は「民事再生法違反」に関するものであった。
これは民事再生法の適用を受けるには、会社の資産が2700万円程度なければその適用を受けられない
とであるのだが、谷被告は289億円程度あると盛って、部下に知人の弁護士にメールを送信するよう事前に
指示をだし、それが「財産の証拠」となって、一時は民事再生法の適用を受けたとのことだった。

やるな、谷絹子。
UNICOはそう感じた。
ただ、この起訴状の朗読を終えるまでにおよそ1時間程度の時間を要した。
また検察が2名体制で臨んだ理由も理解できた。
1人が詐欺を、もう1人が民事再生法違反を受け持っていたのであった。

おかげで野次馬根性丸出しの傍聴人たちは、長い起訴状の朗読のおかげで、
至る所から貧乏ゆすりが頻発し、法廷内を揺らせることとなったのである。
ただここからが傍聴人にとってのメインイベント、谷被告人の生声が聞ける「意見陳述」の時間である。
有名な「詐欺事件」を傍聴してみる~谷絹子元カリスマ女経営者③へ続く

有名な「詐欺事件」を傍聴してみる~谷絹子元カリスマ女経営者

いつもは、狭い傍聴席でもガラガラであるマニアックな小事件ばかりを

相手にしているUNICOだが、
たまには有名事件と呼ばれる類のものを傍聴してみるのも
勉強になるかと考え、事前に下調べをすることなく
民事再生法違反、詐欺罪で起訴された知る人ぞ知る
「元カリスマ女経営者」である谷絹子元会社役員の公判を覗いてみた。
この「谷絹子」という女性、検索エンジンで「谷絹子」と入力すると
Wikiでヒットするほどの有名人のようだ。確かに、裁判員制度に該当しない&被害者の少ない案件は、

大抵が小法廷で裁判が行われるのが常であるようだが、
この公判については、異例の大法廷であった。また人気の高い公判では、傍聴するために抽選も行われることもあるが、
「谷絹子」の実力でも、抽選に至ることはなかった。
それでも、法廷内は開廷前から異様な雰囲気であった。
というのも通常ならば法廷内での撮影は一切禁止であるが、
かなりの有名人である谷絹子被告の公判ということだけあって、
TVカメラと「記者取材席」と書かれた席までが用意されているといった盛況ぶり。

はじまる前から早くもビビり気味のUNICOであった。
そして、検察が入廷する。
検察も通常は一人だが、相手は「谷絹子」とあって、
若手の男性とベテラン女性との二名体制を敷いている。
次に被告・・・と言いたかったが、さすがは大物。
先に裁判官がぞろぞろと3名入廷することとなった。
通常は裁判官よりも先に被告が入廷しているものである。
これもまた異例である。
そして入廷した裁判官から「今回は特例として開始前に撮影がある」ことの案内があり、
待つこと開廷予定時間より遅れること5分。
2名の弁護士を引き連れて「谷絹子」が満を持して登場する。
「谷絹子」は、ブラックスーツに身を包み、
インテリメガネ越しに傍聴の方を鋭い眼光で一瞥し、そして着席をする。
さすが・・・大物、物怖じなどは全くしていない。
そしてUNICOを驚かせたのはその容姿である。
谷被告は年齢がゆうに60歳を超えているが、そのきびきびとした動き、
真っ直ぐに伸びた姿勢、そして時折傍聴席の方を一瞥する鋭い眼光。
どれを取っても60歳を超えているようには見えず、
まだまだ娑婆に対する貪欲な姿勢を感じとることができる。
そして、谷被告を支える弁護士2名も、
これまたいかにも「金融関係の弁護ばかりを専門」としているといった
堂々とした悪人面であり、それもあって一層谷絹子被告の大物ぶりを引き立たせている。

有名な「詐欺事件」を傍聴してみる~谷絹子元カリスマ女経営者②へ続く