裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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クスリ 依存

新春詐欺シリーズⅡ ~男四十にして、残り少ない人生を全うする(後編)

(前回までのあらすじ)

アニマルプリントをされたスウェットに身を包んだだらしのない被告。
犯行は、偽造した免許証を使用し、レンタルビデオ店で会員カードを作成。
それを使用してCDをレンタルして転売するといった手口で小銭を稼ぐといった容疑だ。
また折角稼いだ金は、どうやらクスリの購入資金に回していたらしいが・・・。
どこまで退廃的な話に、多少うんざりするUNICO。
続く被告人質問で、更にうんざりすることになる・・・。

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弁護人からの被告人質問。
>前刑の刑期を終えたのが今年の4月。以後生保受給していたはずだが?
「覚せい剤を買っていたので、生保の金だけでは足りなかった」
「ただもう止めようとは思っている・・・クスリは身体にもいいことがないので、
今度こそ自分の強い意志でやめようと思っている」
入れ歯をカポカポしながら話す被告の言葉に重みや説得力は皆無である。
>弁償の意志はありますか?
「T店にも弁償をしたいと思っている」
>接見に内妻は来ましたか?
「来ていない・・・怒っているのかよく分からない。手紙を出してはいるが・・・」
そりゃ、普通の感覚ならばとっくに飽きれている筈だ。
>今後覚せい剤はどうするの?
「自分の気持ちを強く持つ以外に方法はない、残り少ない人生、しっかりやっていきたい」

残り少ない人生!?
確か被告は、40代はずだったが・・・。
そのあまりにも決意の感じられないカポカポ男の言葉には、同情する余地がもはやない。

一同が諦めモードの中、義務的に検察も被告人質問を行う。
>詐欺の方法は誰から聞いたの?「昔、聞いた」
>昔っていつ?「初犯(H11年)の時に刑務所内で」
>なぜ今やったの?「お金に困ったので」
>出所後2か月の犯行だが生保は下りていたの?「未だ生保はなかった」

もう終わりですか!?と疑いたくなるほどあっけなく終了である。

そして、検察の論告求刑である。
>被害金額は多額ではないが、レンタル店が少額ずつ
償却していることを考えれば決して少額とも言えない。
また覚せい剤も積極的に自分から求めているなど、常習性があり改善の余地が見られない。
これらを勘案して、求刑ですが懲役4年を相当と思料します。

弁護人の最終陳述。
>被害額が3万円であること、また弁償の意志があること、
罪を認めていること、更正したいという意志があること、
自分の弱さを認めていることなどを踏まえて情状酌量をお願いします。

ここまで来れば被告の最終陳述もトホホな内容が予想できる。
「特にありません、申し訳ないの一言です!」
そして、法廷内が溜息で包まれる中、閉廷となった。

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残り少ない人生とのたまう男四十の潔い最終陳述であった。
残念ながら、この被告はまた繰り返すだろう。
こうした被告のようなケースは、決して珍しくない。
社会から見放され、家族からも見放され、そして福祉からも生保の受給以外は見放され・・・。
そして何の支援も得られないまま、結局司法が最後の受け皿となってしまっているのである。

自己責任だと済ませてしまえば、それで終わりだと思う。
ただこうした社会の構造的な欠陥のヒビに挟まったままの者が居ることを
忘れないでおこうと思うUNICOであった。

(了)