裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

3

窃盗団 手口

チームワークはいついかなるときにも必要!?

「BRITISH LONDON」
と書かれた黒のスウェット姿で法廷に姿を現した被告。
その顔にはどこか幼さが残っている。
UNICOの前に座る自分の親戚らしき人の姿を確認すると、
一瞬照れ臭そうな表情を見せたあと軽く会釈をし、そして長椅子に腰をかけた。
今年で24歳。高校卒業後は運輸業、アパレル販売と職を転々とし、現在は無職。
前歴は4犯あり、うち2件は同種の犯行を犯している。

被告の罪名は、窃盗罪。
生活保護施設で知り合った主犯格の男に誘われ、被告の実兄と組んで車上荒らしをしていたようだ。
今回は、マンション駐車場に停めてあった車両のガラスにマイナスドライバーでヒビを入れて、
その後ガラスを割って車内へ侵入。ゴルフバックをはじめとする計27点、
金額にして192,700円相当を窃取した容疑で逮捕、起訴されている。

逮捕場所は、犯行場所とは違う県であった。
被告たちはレンタカーを使用して犯行に興じていたらしく、
不審車両として警察がマークしていたところに、
ゴルフ用品店から意気揚々と出てきた3人は他のゴルフバックの置いてあるマンションへと向かう。
そして、ゴルフバックを手にしたところで、警察から任意同行を受けることとなった。
3人が使用していたレンタカーのトランクからは、
盗難届の出ていたゴルフバックとゴルフボール、
そして犯行時に使用されたと思しきマイナスドライバーが見付かったことが決め手となったようだ。

審議が進んでいく中で、こうした犯行にもきちんとした役割分担があることが分かった。
先発である「ガラスにヒビを入れる係」には施設で知り合った主犯格の男。
「ガラスを割る強行係」は実兄が、そして、被告は見張り役といった具合である。
そしてチームプレイで獲得した戦利品は、最寄りのゴルフ用品店で処分される。

被告の利得の配分は、1件につき僅か3,000円程度であったらしい。
他にも、食事代と時々たばこを貰ってはいたとのことだったが・・・。
この分配比率を見ても、若い被告が従犯であり、また決して金を稼ぎたいためだけに
犯行に加わっていたのとは違うことを裏付けるには十分である。

ただ残念なことに、彼らの間違ったチームワークの発揮はこれ1件だけではなく、
余罪が相当あるらしい。次週にはもう1件の公判が行われる予定だ。

閉廷後、被告の母らしき人が、連行される息子の姿を見て、
「情けない・・・情けない」と涙ながらに横に座る姉に言っていた。
その姿を見た不肖の息子は、照れ隠しだろうが、へらへらした態度で軽くお辞儀をした。

一般的には、到底反省している様子には受け取られないだろうが、
被告なりに謝罪をしているつもりだったのかもしれない。

被告の母は、恐らく息子2人が刑務所に入ることとなる。
情けないと嘆く母の心は、息子には届かないのだろうか。
(了)

企業内窃盗団を結成する

人が集団になろうとする行為には、多少なりとも目的がある。
利害の一致、主従関係、帰属欲求など・・・。
これら目的がなければ、煩わしい集団に属することをしないとUNICOは考える。

今回の被告の場合は、会社のパソコンを盗むという使命を果たすために窃盗団を組むこととなった。
それも社内でである。
この企業内窃盗団は、よなよな深夜に自分たちの勤める会社に忍び込み、
パソコン数十台を盗み、それを売却しようとしたとこを御用となった。

・・・大胆な犯行である。同時に先行きの不安な会社である。
こうした不安を目に見える形に表すのがこの男。
どこにでも居そうな「目立たないタイプ」。良く言えば堅実そうだが、悪く言えば活気がない。
そのスッキリ刈り上げられた頭に、たっぷりの脂分を含み出っ張っているよくある中年腹しか見どころがない。

ちなみにこの公判時には、既に共犯者の判決が下っており、実刑となっている。
これは被告にとって不利な状況である。
というのも集団で犯した罪は、その仲間内で主従関係が認められず、
共同正犯に相当すると判断された場合には、
判例主義の観点から、先の判決を踏襲することとなる。
どうやら弁護側は、被告の前科がないことや直接の実行犯でなく幇助犯である旨を訴えて、
一審で結審した実刑を免れようと高裁に持ち込んだのがこの日の公判であったためだ。

この状況に追い打ちをかけるように甲高い声の裁判官から、
「このまま何か立証できる材料がなければ、このまま控訴は棄却されますが・・・」
と追い込まれている。どうする国選。
その動向を冷ややかな表情で見守るクリボー頭の検事。
「・・・・・・次回公判時までには証拠を準備します」
そう苦し紛れにのたまう国選弁護士。
その言葉を聞いて、一層余裕の表情を浮かべるクリボー検事。

「準備が整うまで、少し時間を空けた方がいいですね」
と甲高い声で場の緊張を和ませる裁判官・・・。

やはり棄却か・・・そう感じずには入られないUNICOであった。