裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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裁判 膨張 窃盗

同じ「窃盗」でも、人が変わればこんなモノ②

前回までのあらすじ
デップリした長渕似の被告は、トラックから駐車禁止除外指定車標章を盗み、それを自分の車に置いて
捕まるまで使用した。保釈金150万円を支払っており、現在は保釈中である。

次に、若葉マークのトウジ弁護士は証人を喚問する。
証人として現れたのは雇用先の社長(塗装業/55歳程度)であった。
ただ何というか、イマイチ証言に信憑性の欠けるというか・・・。

というのも、少し話を被告が証人である社長の会社へ入社するまで遡ることになる。
この社長には、娘が20歳、17歳、1歳8ヶ月と3人居る。
この長女と被告が知り合いであり、娘の紹介がきっかけで、被告が入社したらしい。
社長も入社前に自らが面接して、採用としたらしいが。
ただこの被告、入社の2日前に今回の事件を起こしている強者である。
入社後は、妻も「被告を『息子』のように思い、被告を月4-5回程度自宅へ呼んで、
手料理を振る舞っていた」ことをアピールする。
また社長も被告のまじめな勤務態度を評価していたらしいが・・・。

何かスッキリしないのはUNICOだけか。
UNICOが引っ掛ったのは、「なぜ55歳の社長に1歳8ヶ月の娘が居るのか」である。
これは明らかに、社長は後妻を貰ったかアウトソーシング以外に考えられない。
そんなUNICOの疑念に気付いたか、社長は血迷った発言を繰り出しはじめる。
「前があることは知っていたが、過去のことだから気にしない」「僕が性根を入れ直す」「仕事に打ち込ませる」
「5年ほどしたら現場を任せる」「手の届く範囲で住まわせ、自分が行動を監視する」
など次々と自分ひとりが被告を背負い込むことを宣言しだす始末。

ちょっと冷静になりなよ、社長さん。
被告は、あなたの会社に入る2日前に事件を起こしておいて、
それを素知らぬ顔で堂々と面接に来てしまうような男ですよ。
だからこそ、UNICOはこの社長に「冷静な判断ができないような言うに言えない弱み」
があったと読んだのだ。
一番上の娘に頭が上がらない理由があるのではなかろうか。

ここまで聞き、白々とした表情で、日サロ検事は、
「接見は何回行きましたか」「衝動的な被告をずっと監視できますか」
「どのように監視しますか」と証人の主張を冷静に追い込む。
「いいぞ、日サロ!もっとやれ~!!」
と心の中でUNICOは叫んだ。

同じ「窃盗」でも、人が変わればこんなモノ③へ続く

切ない窃盗

裁判を傍聴するには、裁判所へ行き入口付近に置いてある
「開廷表」を見て、事件名と部屋番号、新件か審理中のものかを見極めて、
自分が傍聴してみたいと思う事件を選択する。
ただ開廷表には、窃盗や殺人、傷害、強制わいせつといった「事件名」しか書かれていないため、
世間を賑わす「有名な事件」以外は細かな経緯など、実際に傍聴しなければ分からない。

そのため「窃盗」と一口に言っても、現金や宝石などの「財」を盗っても、
女性の下着など「個人的な嗜好品」を盗っても、同じ「窃盗」に類されることとなる。
UNICOが今回遭遇した「窃盗」は「切ない窃盗」の類であった。

この「切ない」という判断は、開廷前である程度は予測することができる。
というのもUNICOは、パタンとして開廷の10分前位には、
傍聴したいと思う法廷の前で待機する時間を持つようにしている。
ここで被害者や被告の関係者、弁護士や検察官などの様子を
この時間に垣間見ることができるためである。
この判断から見れば、当事件は全く関係者が居なかったので、
「切ない」事件である可能性は高い。

それでも、思い切って法廷の中に入ってみると、
思わず「日サロで焼いたのか?」
と言いたくなるような角刈りの検察官が法廷内で既にスタンバっていた。
そうこうしているうちに、ほぼ時間ぎりぎりで、
かなり年配の弁護士が、足元が覚束ないといった感じで入廷する。
「そうか、弁護士は自由業なので定年がないのか・・・」
と複雑な心境になるUNICOの不安をよそに、
日サロ検事がやる気満々の様子でスタンバっている。

そこへ刑務官に連れられて、これまた年配の被告が現れた。
弁護士との打ち合わせもそこそこに、直ぐに着席して裁判官の入廷を待つ。
ほどなくして、裁判官が現れた。

「うん!?」
UNICOは、この裁判官を見て、
懐かしいというか、親近感というか、そういった類の感情を持った。
切ない「窃盗」事件②へ続く