裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

3

警官 汚職

pride(結審編)

落ちていた覚せい剤を拾って抽斗に隠し、
証拠隠滅と覚せい剤取締法違反で起訴された元警察官。
イカツイ体格にいかにも警察官といった厳格なその表情とは裏腹な
あまりにもスケールの小さい事件である。
この事件を引き起こしてしまった至った被告の言い分の続き。
◆  ◆  ◇

 

ボソ検からの被告人質問。
「昨年12月に停職処分となりましたね?」
「その同日に依願退職しました」
「数日経つと検挙は難しいとありましたが、他にやり方はあったのでは。
指紋を調べるとか。そういったことを考えませんでしたか?」
「その時にはそういった考えを持っていませんでした」
「帰って来てから指紋を照合すれば、もしかして前科者リストなどから割り出せたのでは?」
「その時は思いませんでした」

「人定質問をしないと叱責をされるの?」
「過去にそういった話を聞いたことがありますので・・・」
「それが何!? それで自分の評価が下がるとでも思った?」
ボソボソ話すボソ検には珍しく強い語調だ。正義の味方・ボソ検といったところか。

「まぁ評価が下がるというよりは(厭味を)言われたくないと思いました」
「何者かが通報すると心配だったのですか?」
「それは本当です」
「わざわざそんなことがありますか?」
「一般的にはありません。××(地名)だったのでそういうところもあるかと思っていました」
いかにも公務員らしい発想である。

「同僚の方を心配しなかったの?」
「考えたこともありましたが、その時は何とか言おうかなと」
「嘘をつくとか?」
「その時に考えようと」
「口止めは?」
「していないです」
嘘と言い逃れとは違う。被告はそう主張しているのであろう。

「覚せい剤を発見するのは経験が必要なのでは?」
「はい」
「見つけたら終わりだけではなく経験でしょ?
同僚はあなたのことを素晴らしい行動力だと言っていました。
今回の事件の問題はあなただよね?」
テンションが上がったボソ検の質問はその意図が見えにくかった。
沈黙する被告に対して、マンネリ弁護士が助け舟を出す。

「覚せい剤は現認では見つけにくいのですか?」
「通常は車を被疑者の真横で止めるのですが、この時は歩道がありましたので、
それで被疑者の前方まで行って、被疑者を追い越してから職質をしましたので、
その時に捨てたのではないかと思いました」

「車の運転は被告、助手席に同僚だったの?」
「はい」
先ほどとは矛盾しているようだが。

「途中で捨てたのを見付けるのは同僚には未だ難しいと思った?
さらに当時は現認があるものはいいが、ないものはちょっと喜ばれないという感じだったのですか?」
「そうですね」
「もう1回引き返して身に行ったのはなぜ?」
「同僚が現認、自分が指導する立場でしたので、
投棄されたのを見つけて「目を離すからやで」と指導するつもりでした」
「そのあとに管轄警察署に持って行けばよかったのでは?」
「はい」
裁判を傍聴していた誰もがそう感じた瞬間であった。

ここで欺瞞裁判長が沈黙を破る。
「その職務に5年程度従事していましたがそれは長い方ですか?」
「一般の人よりは長いと思いますが、それまでは殆ど接していなかったので・・・」
「引き継ぎは、管内で見つけた際は管内にするものなのですか?」
「正式には決まっていないが周辺の署に引き継ぐこととなっています」

「人定確認をしておらず、不詳・不完全な引き継ぎでは躊躇いが出たということですか?」
「はい」
「それで個人的に傷つくと考えたのでは?」
「ひとまず自分の気持ちが弱かった。
ただ指紋は刑事課員がするので自分ではしません。
『お願いします』と引き継ぐことになります」

「それでも犯人逮捕の機会を奪ったと考えますか?」
「はい」
「隊長でしたよね?」
「はい、その誇りはありました。
そのことで人定確認すらしないのかと言われ、隊の名に傷がつくのが嫌でした」
何という目先を追っただけの誇り・・・。

「それでも結局逮捕されていますよね?」
「迷惑を掛けました。
みんなに謝っても謝り切れない・・・自分が情けないです」
「これまでに不祥事を起こしたことは?」
「ありませんでした」

「今後仕事はどうなさるおつもりですか?」
「未だ全然頑張るつもりではありますが・・・最近アルバイトをはじめましたが」

「報道で警察官の不祥事が多いですよね?」
「はい」
「今となっては自分もそうなったがどう思っていますか?」
「迷惑を掛けるばっかりで本当に申し訳ないです」
◇  ◆  ◇
論告求刑では、テンションが上がっているボソ検が勢いそのままに、
朗々と被告の悪口を並び立て、懲役1年6か月を求刑した。
一方マンネリ弁護士は、執行猶予を訴えかけて・・・。
最後に、被告人の最終陳述。
「出世のためではありません」
そうボソ検を見ながらそう力強く語る被告に、
被告の中での美学を見た。

 

(了)

pride(後編)

落ちていた覚せい剤を拾って抽斗に隠し、
証拠隠滅と覚せい剤取締法違反で起訴された元警察官。
イカツイ体格にいかにも警察官といった厳格なその表情とは裏腹な
あまりにもスケールの小さい事件の概要が前回明らかとなった。
事件を引き起こした被告の誇り高き言い分を聞いてみよう。
◆  ◇  ◆
マンネリ弁護士からの被告質問。
「あなたは助手席に乗車していたのですか?」
「はい」
「警ら中に見た不審な男性に職務質問はしたのですか?」
「しました。しかし覚せい剤は持っていませんでした・・・当時取締強化対策を
しておりまして、持ってない人にいろいろと聞くよりも次の人に聞くことを優先していましたので」
「その時に名前や職業についての質問をしなかったのですか?」
「はい」
効率を優先したと言いたいのだろうか?

「なぜ途中で捨てたと思い、男が歩いてきた道を引き返したのですか?」
「××は、この日はじめての取締りでした。
結構、被疑者は職質の前に道に捨てることが多いので、
被疑者が捨てた瞬間を見落としたのかと思い、確認に戻りました」
結果、予想通り覚せい剤が見つかった。素晴らしい読みである。

「管轄警察署に引継ぎをするのは?」
「原則・・・・」
「はじめは持って行こうと思っていた?」
「はい」
「その日に届け出ず、3日経って・・・なぜ持って行かなかったのですか」
「当日直ぐに別の被疑者が見つかり、その対応をしていて宿舎に戻ったのが、
21時過ぎになった。また次の勤務にしようと思っていたのですが・・・」
3日経つと検挙が難しい?」
「3日経過後には検挙が難しいと思いました」
「届けようとは考えなかったのですか?」
「基本ですが、当初は届けるつもりでした」

「担当に嫌味を言われると?」
「そういう気持ちはありました。良くは言われませんので・・・」
「××警ら隊では基本をやっていないと言われるのがイヤ?」
「はい」
嫌味を言われたくないの一心から出た選択肢であったようだ。

「出張に行っていた時、このことを思い出したことはない?」
「思い出したこともありました」
「出張から帰ってからは?」
「近々に何らかの方法で捨てないかんなと思っていました」
出張から帰って来て、もう届けようとは考えなくなった。
もう引き返せないと思ったのだろう。

「理由は?」
「できたら形のないように捨てるのがベストだろうと・・・」
ベストではない。

「検査と称して処分した日、他の課の人から検査キットのやり方を教えてほしいと言われたのですか?」
「以前から要望がありまして、この日出先でその検査をやることを聞いたので・・・」
「それで本物の覚せい剤を使って検査をしたのですか?」
「資料だけでやるよりも実際にやってみる方がいいと思いました。
それで一旦中座して。最初は迷いましたが・・・」
魔が差したのか。

「他の課の人の前で検査をしたのですか? これは本物の覚せい剤だとは言っていない?」
「言っていません」
「この時に処分するつもりだった?」
「はい。残りは灰皿代わりに使っていた空缶の中に捨てました」

「元々そうするつもりだった、それとも?」
「思い付きです」
「人の前ですると周りの人が見ているとは考えなかった?」
「一応食堂には他の課の人以外は誰も居なかったが、居てたら止めていました」

「時間が経過して段々と届出をしにくくなった?
それは1週間くらいですか。どの辺で諦めた?」
「10日位経って、いよいよ持って行くのは止めておこうと思った」
いやその日だろう。

「今は重大なことをしたと思っていますか?」
「はい」
「反省している?」
「はい」
普通ゴミに混ぜて捨てることもできただろう。
わざわざ人前で使用して、残ったものは灰皿に捨てる。
被告の取った行動は雑である。
一般ゴミだとリスクが高いと考えたのだろうか。

 
pride(結審編)へ続く