裁判傍聴 ブログ 「ドラマよりもドキュメンタリー」

空いた時間にフラッとプチ傍聴

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覚せい剤など不法薬物

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(後編)

40歳の被告。
24歳から覚せい剤をはじめて、今回の事件で3回目の裁判を受けることとなった。
そんな被告の「もう2度と覚せい剤をやりません」という言葉を信じて、
モンチーパンチ弁護士が被告人質問に全精力を傾ける。
◇  ◇  ◇
「覚せい剤はどこから入手したの?」
「家の義父の遺品にあったものを使用しました」
いきなり複雑な家庭環境が想像できる言葉だ。
被告にとっては、かなり幸先の悪いスタートだ。

「どうしてそれを使ったの?」
「仕事でむしゃくしゃしてつい・・・」
「見付けて直ぐに使ったの?」
「違います」

「今回事件を起こしたことについてどう思っている?」
「本当に、母を裏切り、また仕事をなくしたことを本当に後悔しています」
「反省文の内容は今も変わらない?」
「はい」

「誰に迷惑を掛けましたか?」
「母です」
「他には?」
「職場の人・・・です」
被告は職場の人に迷惑を掛けたとは思っていないようだ。

「母があなたに言ってくれたことは覚えている?」
「自分のしたことを一日も早く償って、早く帰って来て欲しい」
「それを聞いてどう思った?」
「本当にかわいそうなことをしてしまった。本当に申し訳ないことをしました」
どこか他人事のような言葉である。

「過去の裁判にも証人として法廷へ来てくれていて、今回も来てくれた。
お母さんはどんな気持ちだと思う?」
「・・・辛い、・・・辛い、・・・辛い。
何とも言えない気持ちだったと思います」
「それを聞いてどう?」
「本当に申し訳ない・・・(涙)」
最後のカードである涙腺を刺激する戦法だ。

「逮捕後は供述に対して素直に答えていますね?」
「はい」
「逮捕される前に逃げていたが、いつまで逃げるつもりだったの?」
「執行猶予が切れるまで・・・」
「結局は?」
「自分で出頭しました」
「その間は?」
「何とも言えない、後悔、後悔で・・・」
「それで病気になったの?」
「神経ハゲ・・・野球ボールの半分くらいのハゲができてしまって・・・」
真正ハゲの者からすれば、何とも同情を致しかねる神経ハゲである。

「社会復帰後は?」
「母と一緒に暮らし、母の店を一緒にしていきたい」
「どこに住むの?」
「母の家です」
「これまでにお母さんの言うことは聞いていたの?」
「聞いている時と聞いていないことがあった」
「例えば?」
「ごはんを作っておいてと言われたときに作らないことなどがありました」

「お母さんに言っておきたいことは?」
「もう二度としません」

こうしてモンチーパンチの立証は終わった。
果たしてこのやりとりで、サンドイッチマンの心証は良くなったのだろうか?

 
決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(結び編)へ続く

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中後編)

過去にも2度覚せい剤を使用して、覚せい剤取締法違反で裁判を
受けてきた40歳の被告。
それでもこれまでの2回はどうにか執行猶予付の判決を勝ち得て、
実刑を免れてきたが、今回は被告にとっては不利な戦いが予想される状況である。

そこで、被告の弁護を務めるモンチーパンチ弁護人は、
過去2回の裁判にも情状証人として証言をした被告の母を今回も証人として迎え、
今後も被告を見捨てずに支えていくといった
『母の無償の愛』の証言を見事引きだすことに成功した。

それでも、覚せい剤を止めさせるには『母の愛』だけでは難しいことを立証するべく、
軽石検事が母親に質問をぶつけるのだった。
― ◇ ― ◇ ― ◇ ―
「今回で3回目の覚せい剤の使用となりますが、
今後の監督は具体的にどうされるおつもりですか?」
「私がカラオケ店をしているので、自分と一緒に娘を店に置いておきたいと考えています」
「今回覚せい剤を自宅でやっていますが、再犯はないですか?」
「今回は全然分からなかったので・・・娘と自分の部屋が2Fと3Fと別だったもので・・・。
今55年の執行猶予があったでしょ、だから病院で治療をしていて、
次は絶対にないと信じていたので残念です」
「裏切られたという感じですか?」
「はい」

この質問に対して、若干物足りなさを覚えたサンドイッチマン富澤似の
裁判長からも質問が飛んだ。

「娘さんは何でお母さんを裏切るのでしょうね?」
「薬のドラマを見ただけで詳しいことは分からないですが、
依存性が高いですからね・・・それ以外は優しい、いい子なのですが・・・」
「甘えているのですかね?」
「子どもの時は病弱だったので、多少甘やかしてしまったのかもしれません」
そう力なく答える母。
「厳しさも必要だと思いますよ、つくづく・・・」
「・・・はい」
こうして歯切れの悪いまま母の証言が終了となった。
判決を下す裁判長の心証は、
今度という今度は、被告の言葉を信じきれないといった態度だ。
それでもモンチーパンチ弁護士は、一縷の望みを繋いで、
被告人質問に全精力を傾けることなる。

 
決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(後編)へ続く

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中編)

40歳の被告が24歳の時からはじめ、
これまでに2度も覚せい剤取締法違反で裁判を受け、何れも有罪判決となっても
なお同じ罪を犯し、今回裁判を受けることになっている状況の中で、
被告が述べた「今後もう2度とやりません」という言葉。

被告の言葉が今度の今度こそ真実であることを立証するため、
モンチーパンチ弁護士が採った手段――。
それは被告が書いた反省文、被告の母親を情状証人として招へいすることだった。
◇  ◇  ◇
証言台に立つ被告の母親は、若干若作りをしているが、
もう70歳は過ぎているだろうか。
母親にしてみれば、この年になってもなお娘の情状証人として、
出廷することになるとはと思っているに違いない。

そこを踏まえてモンチーパンチは、先ず被告が書いた反省文を抜粋して朗読した。
「覚せい剤をしてすべてなくしてしまいました。
また母にも迷惑を掛けてしまいました。
婚姻相手と籍を入れたことだし、今後夫と一緒に親孝行をしたい。
これで最初の最後にしたい、今後二度としないと誓います」
と微妙な内容ではあったが、
迷惑を掛けられた母親への質問の前には、有効な方法なのだろうか。
モンチーパンチは質問をはじめた。

「同居をしていましたか?」
「はい」
「被告との仲は?」
「悪くない」

「娘さんが逮捕されたと聞いてどうでしたか?」
「えー、もう・・・私の力で真面目にしてやれないことは残念です」
「これまでに面会には行かれましたか?」
「6回程度警察署へ行き、4回拘置所にも行きました」
「被告を見てどうでしたか?」
「娘が拘置所の中に居るのが辛くて・・・」
と言いながら涙する母。

「被告から手紙は来ましたか?」
「7通くらい来ました」
「今後娘さんと同居は考えていますか?」
「同居させます」
「裏切られましたが娘さんのことを監督はしますか?」
「します」
「母として、しておけば良かったことは何かありますか?」
「よそに勤めに行かさず、自分の店に置いておけば良かったなぁと思っています」

「こうして証言として法廷で話すのは何回目ですか?」
「3回目です」
「3回目も裏切られていますが、それでも今後監督をするのですか?」
「・・・はい。これを最後にしてほしい・・・そして罪をきちんと償って真面目にやってほしいです」

シンプルな内容であったが、
随所に「母の存在感」を散りばめたことは有効であったかもしれない。

 

 

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中後編)へ続く

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(前編)

覚せい剤取締法違反の裁判を傍聴するのは久しぶりだったが、
この日は、30席程度の傍聴席が異例の満席だった。

法廷に現れた被告は、以前TVでよく見かけた高見恭子似の女性(43歳)。
どことなく幸が薄そうな顔をしていた。

「除外事由もないのに、H24年3月に被告人方で、
フェニルプロパンが含有する禁止薬物を注射器を用い、
直接体内に摂取したことによるもの。
罪名及び罰条、覚せい剤取締法違反(同法第41条の3、第1項、同法第19条)」
そう起訴状を淡々と読み上げる検事は、久々に軽石の登場であった。

これについて、高見恭子似とモンチーパンチ弁護人はあっさりと起訴状の内容を認めたことにより、
早々に冒頭陳述へ続いていく。

被告は、中学卒業後に飲食業など職を転々とし、
その後清掃員として勤務していたが、現在は無職で母親と同居をしている。

尿検査を提出した後に、○市在住の男の家に行き、そのまま婚姻するも、
婚姻した男性が先に覚せい剤取締法違反で逮捕された。
それを受けて再び母の住む自宅へと戻るも、先日提出した尿検査から陽性反応が
検出されたこと、また両腕に注射痕も見つかったことにより、
被告も同法違反で逮捕される。

被告と覚せい剤との付き合いは長く、24歳の時から使用しているらしい。
これまでに同種の前科2犯がある。
うち1件目の事件は、平成19年に同法違反と詐欺とを犯しており、
懲役3年、執行猶予5年の判決を受けている。
もう1件は、やはり覚せい剤取締法違反で懲役6か月、執行猶予3年に処されている。

今回の入手経路は、平成22年に義父がなくなり、
その遺品のポーチの中から新品の注射器と覚せい剤が見つかり、
それを2回に分けて使用したとのこと。
最後に使用したのは平成24年3月らしく、その後の尿検査で陽性反応が検出されることとなった。

本人は逮捕後の供述で、
「仕事でいらいらが募り、つい使いたくなってしまった」
「実刑を覚悟しています。今後2度と覚せい剤は使用しない」
「今後覚せい剤に関係する人とは付き合わないし、相手にもしない」
と話していたらしいが・・・。

禁止薬物を使用した裁判は、確かにやってしまったことを咎めることも大事だが、
決してそれだけの目的ではない。

「今後もう2度とやりません」
そう述べる被告の覚悟が真実か否か。
それを見極めるための裁判でもある。

 

決意は本物か否か(覚せい剤取締法違反)(中編)へ続く

クスリ+窃盗=服役期間は倍増だ!

坊主頭の被告が入廷してきた。年のころ30歳前といったところだ。
被告は、やや頼りない若手弁護士と目が合うと、少し照れ臭そうな表情で軽く会釈をしてみせた。
この光景を見ると、被告と弁護士との信頼関係が築かれている証であるように思われる。
よくよく見ると傍聴席には、被告の母親らしき人物の姿も見受けられた。

この坊主頭の被告の罪名は、窃盗と覚せい剤取締法違反。
これまでに1度、同じ覚せい剤取締法違反で検挙されて、懲役1年の刑に処されている。
今回の犯行は、出所後およそ2年余りは経過していたが、
新たに窃盗という罪名を増やして、法廷に舞い戻ったわけだ。残念なことである。

被告は、某市内の公衆便所内において、メチルフェニデート等禁止薬物入りの水溶液を注射器で体内に摂取。
そこで気持ち良くなった被告は、そのまま近くにあるタイムズの駐車場へ行き、
駐車中であった被害者所有の車の窓が開いていることに気付く。
すると被告は、迷うことなく車内に侵入し、そこに置いてあった巾着を窃取した。
巾着の中には、6,390円入りのコインケースと電卓他10点の小物、およそ1,000円相当が入っていた。
ほどなく近くに居た警官の職質を受けて、あえなく逮捕されたということだ。

主文、被告を懲役2年2か月に処する。うち未決拘留分30日を刑期に算入する。

前回比200%UPの刑期である。
この量刑判断として、覚せい剤の累犯が認められたということである。
また犯行の悪質さとして、窓が開いている車両を見つけるや迷うことなく犯行に及んでいること、
そして、会社を無断欠勤していることも挙げられていた。
減刑酌量の材料としては、被告が反省文を提出し、今回の犯行について深く反省していること、
窃盗の手口が単純であること、雇用主が出所後「また雇う」と言ってくれていること、
実母が被告の帰りを待っていることなどを勘案して、懲役2年2か月としたとのことだった。

これまで判決の傍聴をして感じることがある。
犯罪の種類は何にせよ、裁判所は再犯可能性の有無を量刑判断の際に重んじる傾向がある。
その要素のひとつとして、出所後すぐに就業できるかどうかが大きなポイントのようだ。
確かに、折角出所しても働くところがなければ、貧困とヒマを持て余すことから、
良からぬ方向に進んでしまうことを危惧する裁判所の考えも頷ける。
加えて、肉親や友人など人の鎖と呼ばれる存在がなければ、
尚のこと再犯可能性が高まると判断するのは致し方のないことである。

「人間は社会的動物である」という言葉を改めて思い出すUNICOであった。